岩石風化による年輪から形成時間の読み取りに成功 名大など

2020年8月4日 07:53

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岩石に形成された年輪(左)とそれに基づく元素マップ(右)(写真: 名古屋大学の発表資料より)

岩石に形成された年輪(左)とそれに基づく元素マップ(右)(写真: 名古屋大学の発表資料より)[写真拡大]

 岩石は風化により縞模様が形成される。デザインにも応用される模様だが、その形成メカニズムや時間については、これまで不明だった。名古屋大学は、岩石の模様が形成されるプロセスを明らかにし、形成時間の読み取りに成功したと発表した。

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■年輪が形成される岩石

 地表の岩石は風化により、劣化が生じる。岩石は耐久性が高いと想定されており、風化の速度について知見はあまりえられていないという。名古屋大学、岐阜大学、名古屋市科学館、英国地質調査所の研究者らから構成されるグループが岩石の風化速度を定量化するために着目したのが、風化によって生じる縞模様だ。

 木の断面は生育の違いによって色の濃淡が生じ、結果として年輪としてみえるようになる。岩石も同様に、縞模様が年輪として機能しているという。

 研究グループは、岐阜県長良川河川敷にある火山岩の一種である「流紋岩」に形成される縞模様に注目し、調査や分析を実施した。その結果、岩石中の鉄イオンと鉱物とが中和反応することによって、年輪が形成されていることが判明した。

 研究グループが流紋岩の縞模様の形成速度を調べたところ、1年から数年にかけて「鉄バンド」と呼ばれる年輪が1本形成されることが明らかになった。研究グループが見出した流紋岩の縞模様の形成速度は、火成岩で従来考えられてきた風化速度や劣化速度と比較し、100倍から1000倍速いことが確認された。

■ほかの岩石にも応用可能

 研究グループは、流紋岩に縞模様が形成される条件の定式化に成功。これに基づいて、ほかの岩石でも確認される縞模様に応用可能だという。これにより、さまざまな岩石の風化速度を定量的に見積もることが可能になり、鉄イオン沈殿に伴う重金属固定など環境修復にも応用できるだろうと、研究グループは期待を寄せている。

 研究の詳細は、欧州国際誌ElsevierのChemical Geologyに16日付で掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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