丸亀製麺の「世界奪取」宣言

2020年7月14日 13:29

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 「讃岐釜揚げうどん 丸亀製麺」を展開するトリドールHDが6月26日、『トリドールホールディングス、Capdesiaと合弁会社を設立』と題するニュースリリースを配信した。報に接した折り、「かねて掲げていた2025年度、世界6000店舗体制の実現に向けかっこうな橋頭保を手にしたな」と実感した。

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 丸亀製麺は18年3月時点で既に内外1000店に達しており、「国内は飽和状態。伸長は海外展開以外にない」と評されていた。1000店達成と相前後しロシアへの出店など、個単位の海外進出は進めてきた。

 だが従来のやり方では「世界6000店舗」へは、あまりに道筋が遠い。それだけに今回の「合弁会社設立」の意味するところは大きい。

 合弁企業の相手先は、イギリスを拠点に(ロシアを除く)欧州の外食産業に投資を行うプライベート・エクイティ・ファンド。リリースでは「今年度内にロンドン都心部に直営店を出店。2-3年を目途に欧州各地でフランチャイズ展開を加速。25年度内には欧州全体で100店舗の出店を・・・」と、具体的なスケジュール(目標)まで記載されている。

 我が住処から徒歩5分に丸亀製麺/安松店がある。麺好きな小生には有難い存在。また自分と同じように欧州人が釜揚げうどんに舌鼓を打つかと思うと、喜ばしい限りでもある。

 ところで昨秋だったと思う。SNS上で丸亀製麺が炎上したことがあった。きっかけは、「丸亀は讃岐うどんの聖地。丸亀とは縁もゆかりもないくせに丸亀うどんを名乗るとは何事か」という、丸亀に縁もゆかりもある地元民(出身者)からの一口で言えば“いちゃもん”だった。

 炎上を克明に見守ったわけではないが、「どう思われます」と問われた。「大阪名物と思われている串カツも、元をただせば東京発祥。“名古屋めし”とまで称される味噌カツだって、発祥地は三重じゃないか」と、いなした。

 トリドールHDでは「創業者の粟田(貴也、現社長)が香川県丸亀市で、その場で讃岐うどんを食べさせる製麺所に人々が列をなしていたのを見たのがキッカケ。粟田の実父は丸亀市に隣接する(香川県)坂手市の出身で、粟田も小さいころから讃岐うどんに馴染んでいた」と説明するが、最後まで解せなかったのは「それなら丸亀製麺の店を丸亀市に何故出さないのか」という思いだった。

 が、こんな話を聞いて、「それがトリドールHD一流の礼儀」と感じた。丸亀市の広報担当者が、こう公に語っていた。

 「協力関係にある。丸亀製麺の店舗には丸亀市のイベントのポスターを貼ってもらっている。市の公用車には丸亀製麺の広告を出してもらっている。昨年の西日本豪雨で丸亀城の石垣が崩落した際には粟田社長から寄付金が提供され、各店舗には石垣復帰のポスターや募金箱を設置してもらった」。

 欧州はある意味で「高プライド」エリア。語弊があるかもしれないが、今回の新型コロナウイルス禍では欧州にも「マスク文化」が根差したという。是非「うどん文化」も根を張ってほしい。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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