新型コロナ感染対策も品質管理も「気持ち」 国民に語りかけるリーダーの姿勢が切り札

2020年4月4日 11:39

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 新型コロナウイルス感染対策に懸命なはずの安倍首相の夫人が、芸能人たちと「桜をめでる会食」をしていた。国民が「花見」を自粛するように要請を受けている時、リーダーたる首相夫人の「ノー天気」とも感じる行為だった。

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 自動車業界をはじめ日本の製造業で品質管理に問題が生じた時、「作業者の気持ちが基礎」と意見を書いたら、日産自動車で品質管理の仕事をしていた人物から「これは作文だ」、「品質管理は設備・マニュアル整備・教育などの徹底が基本だ」と叱られた。では、日産自動車はなぜ品質問題を起こしてしまったのであろうか?

 「品質管理」を徹底しようと本気で努力すると、設備の更新・マニュアルの整備・教育などを押し進めていくことになる。すると、厳しく教育していくほど作業者の気持ちが離れていくことを感じることになる。それは緊張が続かないからだ。

 現在、新型コロナウイルス感染予防のために外出を自制していると、「自粛疲れ」となって息抜きをしたくなるのと同様だ。そうすると、感染予防対策も緩んでしまう。これをとり戻すのは大変だ。

 人間は「間違いを犯すまい」と思えば思うほど、緊張が続かず息抜きをしたくなる。これが自然な人間の気持ちの動きであり、したがって厳しい指導は成果が長続きしない。だが人間は自発的に行動を決めると、成果は上がるし持続することが出来る。

 では、「自発的」に行動するにはどうすればよいのであろうか。「強く命令」されていては「自発的行動」は出て来ない。競争がすべてでもない。組織の中で「自分の価値」を見つけられると、自ら考えて動き出すのが理想だ。

 昔、プロ野球の世界で9連覇を成し遂げた読売巨人軍(ジャイアンツ)があった。その当時の正捕手に森 祇晶(もり まさあき)氏がいた。そう、後の西武ライオンズの名監督だ。

 ジャイアンツの正捕手であったことは知られているが、当時、彼はバッティング成績が悪く、正捕手の座を維持できないことを恐れていた。しかし、当時の川上監督や牧野ヘッドコーチが、森に対して「打てなくとも使ってやるからバッティングは心配せず投手のリードに集中しろ」と指示を出していた。

 確かにバッティングは褒められたものではなかったが、チームの頭脳としてジャイアンツの9連覇に大きく貢献していた。人間は組織の中で認められ「居場所」を見つけると、能力を発揮することもあるのだ。強制されていると「言われたこと」の範囲でしか仕事しないが、自発的な姿勢であると、「問題意識を持ち工夫が始まる」のだ。

 「品質管理」のリーダーであるのであれば、作業者の「居場所」を与えることから始めなければならない。すると、作業者はマニュアルを自発的に作ることも出来、さらには自発的に改善を試みていくこととなる。

 また、新型コロナウイルス感染防止を行おうとするなら、まずリーダーが汗をかいている姿を見せなければならない。首相夫人が「花見をしていて」は「花見を規制する」ことは出来ないのだ。企業経営者としては「基礎の基礎」である。同時に、「国民の働きで国が成り立っている」ことを知らしめることが必要なのだ。現在は、国民1人1人が「大切にされている」感覚がない。

 「下手するとパニックを起こす」というリーダーたちの上から目線では、国民は真剣にならないのだ。心理学的に操作するのではなく、「真実を切々と語り、なすべきことを問いかける」姿勢が必要なのだ。皆さんは他人から頼られた時、そこに自分の価値を見出してはいないだろうか?(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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