老人福祉・介護事業の倒産、4年連続で100件超え 過去最多に 東京商工リサーチ調査

2020年1月9日 06:28

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 東京商工リサーチ発表した2019年の老人福祉・介護事業と理容業・美容業の倒産状況によれば、どちらも小規模な零細企業を中心に倒産件数が多くなっており、今後も厳しい状況が続く可能性が高い見通しであることが分かった。

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■老人福祉・介護事業の倒産件数が4年連続で100件超え

 7日、東京商工リサーチが2019年の老人福祉・介護事業の倒産状況(負債1,000万円以上)を発表した。2019年1月から12月の老人福祉・介護事業の倒産件数は111件で、前年比5件増となった。倒産件数の100件超えは2016年から4年連続で、過去に最も倒産件数が多かった17年の111件と並んでいる。

■人材確保が課題

 内訳をみると、訪問介護事業が前年比13件増の58件、通所・短期入所介護事業が同9件減の32件、有料老人ホームが同3件減の11件、その他が同4件増の10件。倒産件数が高止まりしている原因はヘルパーなどの人出不足と人件費の上昇によるもので、業歴の浅い小規模が事業者の倒産が多いという。

 また19年10月に、勤続年数10年以上となる介護福祉士の処遇改善など介護報酬改定が行われたこともあり、引き続きの人材確保が重要な課題となっている。

■理容業・美容業の倒産件数がここ30年で最高に

 同日、2019年の理容業・美容業倒産動向調査も発表された。19年1月から12月の理容業・美容業の倒産件数(速報ベース)は119件で、前年比9件増となった。15年の81件から4年連続で倒産件数が増加しただけでなく、1989年以降ではこれまで最も倒産件数の多かった2011年の118件を超えて最多となっている。この内、理容業の倒産件数は14件で前年比1件減だったが、美容業は105件で同10件増となった。

■今後も倒産件数が増加する可能性

 また、18年の休廃業・解散件数は317件で、17年比53件増と大きく増えている。1社で数店舗を経営する企業もあることから、「一般的な閉店も含めると数千店舗に達する可能性もある」という。

 人口減少が続く一方、低価格チェーンの伸長や新規参入企業との競合が厳しくなることで、小規模な零細企業を中心に理容業や美容業の倒産件数が今後も増加する可能性を指摘している。(記事:県田勢・記事一覧を見る

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