JAXAとリコー、宇宙空間の360度全天球映像公開 民生品カメラでは国内初

2019年10月20日 10:01

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撮影された全天球画像を平面図に置き換えたもの。(c) JAXA

撮影された全天球画像を平面図に置き換えたもの。(c) JAXA[写真拡大]

 JAXAとリコーは17日、共同開発の小型全天球カメラにより撮影した、宇宙船外での360度の全天球映像を公開した。民生品のカメラでこのような全天球映像を撮影したのは、国内初となる。この小型全天球カメラは、小型衛星光通信実験装置「SOLISS」の回転台の動作を確認するために、モニタカメラとして採用されている。

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■360度全天球動画

 撮影された静止画・動画は、JAXAが運営する「JAXAデジタルアーカイブス」(JDA)および、リコーが運営する「THETA LAB」で公開されている。

 THETA LABでは、Webブラウザから全天球のどの方向からでも自由に見ることができる。またVRゴーグルを装着して見れば、まるで宇宙遊泳しているような感覚を楽しめる。

■宇宙探査イノベーションハブ

 JAXAは、宇宙開発の現状打破と根本的な革新を目指して、2015年4月1日に「宇宙探査イノベーションハブ」を立ち上げた。

 従来、宇宙で使う機器には専用に開発した部品を使うのが常識だった。それは信頼性がコストよりも優先されたからである。宇宙開発用として生まれた最新技術が、民生品に転用されるというのが、従来の流れだった。

 宇宙探査イノベーションハブは、それとは逆方向の流れを創り出している。民間企業が実用化し市場で実績のある技術を宇宙開発に転用し、コストダウンやさらなる技術革新を狙う動きである。

 リコーは宇宙探査イノベーションハブに参加しており、人工衛星用の次世代太陽電池の開発も行っている。今回の撮影に使われたカメラも、市販の小型全天球カメラを元に開発されたものである。

 なお、SOLISSを開発したソニーコンピュータサイエンス研究所もイノベーションハブに参加している。

 今後、さらに地上の民生技術が宇宙開発に利用される流れが加速されるだろう。いままで宇宙業界と関連の無かった民間企業も、宇宙開発に参加する機会が増えると思われる。また、宇宙開発で得られた新技術が民間に反映されることで、産業の活性化が期待される。(記事:創造情報研究所・記事一覧を見る

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