令和のコメ騒動は人災だ──。日本のコメの「歪んだ現実」をあぶり出した『コメ壊滅』(山口亮子著・新潮新書刊)本日発売
配信日時: 2025-09-19 16:40:02
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2024年、「令和のコメ騒動」と言われる事態が発生しました。コメが品薄になり、米価が急上昇。それでも農水省は「コメは足りている」と強調するばかりで、事態を沈静化させることはできませんでした。
そして今後も同じ状況が続くと予想されています。
なぜこういうことになったのでしょうか?
その深層に迫った『コメ壊滅』が本日、新潮社から発売になりました。
著者は長年、農政の闇に切り込んできた著者、山口亮子さんです。
以下、本書で示した真実を見ていきます。
端的に言えば、農水省はウソをついていた、と山口さんは指摘します。証拠は、他ならぬ農水省が出している公的文書。『農村白書』に掲載されたグラフを見れば、コメの需要と供給が2021年にほぼ一致したのを境に、ずっと供給量が需要を下回っているのが確認できます。つまり、コメ不足はここ数年で構造化してしまっているのです。
そうなる理由は、温暖化や異常気象による生産量の減少、インバウンド需要によるコメ消費の増大、生産量予測体制の不備など細々したものもありますが、根本的かつ最大の理由は「減反政策が大失敗したこと」にあります。コメ需要の低下を予測しコメ価格の維持・高騰を狙った農政が、転作を奨励し、主食用米の生産量をずっと減らし続けたそのツケが、「コメ騒動」という形で噴出したというわけです。
通常の商品であれば、市場による調整機能によって需給は自然とマッチングしていきます。しかし、コメについては国家カルテルによって需給が調整されています。小売価格の指標になるのは、JAが生産農家に提示する不透明な「概算金」だけ。価格の指標となるコメの先物市場を本格的に導入しようとの機運も農業界にはあって、試験的な導入もされていましたが、価格決定権を手放したくないJAからの横やりが入り、本格導入前に潰されてしまいました。
山口さんはさらに過去の失政にもメスを入れていきます。
実は、こうした農政の構造の形成には、現在の与野党トップにも大きな責任があるというのです。2009年に麻生内閣の農相を務めた石破茂総理は当時、省内に改革チームを立ち上げて減反の是非について検討し、「減反は将来性がないから早くやめた方がいい」という結論を得ていました。しかし、そのシミュレーション結果が農水書の公式見解となることはなく、農政の軌道修正はされませんでした。石破総理は少なくとも、「無策だったことの罪」からは免れられません。
また、立憲民主党代表の野田佳彦氏には、2010年、民主党が政権を担っていた当時の財務大臣として、「農業者個別所得補償制度」を導入し8000億円もの巨額予算をつけた過去があります。これは、主食用米から米粉用米や飼料米へ転作すると大きな補償金が交付される制度ですが、コメの「用途」を決めてしまうことで、特定の用途のコメが足りなくなるという構造問題を生んでしまいました。
実際、米粉用や飼料用のコメが激増し、2012年には今回と同じような主食用米の不足が起きて、備蓄米の放出を余儀なくされています。民主党政権が生み出した「コメをコメで転作する」方法が、現在の主食用米の不足、米価の高騰を招いていることもまた確かです。
著者の山口亮子さんは、政策担当者から生産現場、流通関係の当事者まで幅広く取材し、コメ行政の「歪んだ現実」を暴きだしています。これは「過去の話」ではありません。問題の発生には農政の構造問題があり、その構造が変わらない限り、同じ問題は何度でも繰り返す。つまり、これは将来の話でもあるのです。
令和のコメ騒動を受けて、農水省は減反から増産に舵を切りましたが、需給をマッチングさせるという生産調整機能は手放していません。つまり、社会主義的なシステムは残っている。その構造が続く限り、「騒動」は何度でも起こる――山口さんは警鐘を鳴らします。
コメと農政の問題を理解するという点において、最適な著書による最適な本です。自信をもっておすすめします。ぜひご一読ください。
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■書籍内容
コメ不足は予測できた。農業白書には「需要が供給を上回る」ことを明示したグラフさえ載っていた。それでもコメが消えたのは、需給をマッチングさせ価格を下げすぎないという、市場原理を無視した減反政策が続いているからだ。農相がパフォーマンスで価格介入したところで構造は変わらない。つまり、この人災はこれからも繰り返されるのだ。農業ジャーナリストが抉り出す「日本のコメ」の歪んだ現実。■著者紹介:山口亮子(やまぐち・りょうこ)
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■書籍データ
【タイトル】コメ壊滅【著者名】山口亮子
【発売日】2025年9月18日
【造本】新書
【本体定価】968円(税込)
【ISBN】978-4-10-611100-6
【URL】https://www.shinchosha.co.jp/book/611100/
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