シリア:市場が爆撃され少なくとも70人が犠牲に――負傷者は550人以上

プレスリリース発表元企業:国境なき医師団(MSF)日本

配信日時: 2015-11-02 15:17:49

10月30日、シリア・ダマスカス付近の地域ドゥーマで市場を標的にした空爆があり、少なくとも70人が犠牲となり550人以上が負傷した。現場に最も近い仮設病院はその前日に爆撃されていたため、医療従事者は大勢の負傷者に苦闘しながら対応した。10月を通してシリア北部と中央部では爆撃が激化しており、国境なき医師団(MSF)はそれがダマスカス周辺の包囲地域に広がりさらに事態が悪化するのではないかと恐れている。この包囲地域には、約100万人近くが逃げる場所もなく閉じ込められている状態で、医療施設はほとんどなく、重傷者が医療搬送をうけることもできない。MSFは国連安全保障理事会の常任理事国に対し、シリアでの虐殺を停止させるよう要請している。

負傷者の外傷は過去最悪

近隣地区にあるMSFが支援している病院で病院長を務め、第一波として運び込まれた多数の負傷者を担当したスタッフは「これは極度に暴力的な爆撃です。患者の傷はこれまでみたこともないくらいひどく、亡くなった人も大勢います。切断手術も数多く実施せざるを得ませんでした。負傷者の多くは多量に失血していたため、大量の輸液剤と血液バッグが必要でした。ベストを尽くして対応しましたが、命に関わる負傷をした人の数は、限られた人員や物資しかない私たちの範囲をはるかに超えていました」と話す。

市場への最初の空爆は大きな被害を出したが、現場で負傷者の手当をしていた救助チームもその後続いた爆撃にさらされたため、事態はさらに悪化した。250人の患者は手術が必要で、別の患者300人は手術を必要としない負傷で治療を受けた。

シリアでは紛争で破壊された病院があまりに多いため、多くの施設は非公式の診療に移るか診療を行う場所を小分けにして稼動し続けている。市場から最も近いドゥーマ仮設病院の正門は10月29日に爆撃を受け、犠牲者は15人、負傷者は100人に上った。最近になって診療を複数の建物に分けていたため、病院自体は稼動し続け、大勢の負傷者の一部に対応することができた。しかし、今回の被害者には命に関わる負傷を負った人の数が多かったため、単独で対応しきれる病院などなく、新たに6ヵ所の仮設病院が多数傷病者の受入策を開始して負傷者の治療を支援することになった。

激化する民間施設への爆撃

2015年を通して、ダマスカス周辺の包囲地域では病院や市場などの民間施設への爆撃が際立って激しくなった。今年に入り10月末現在までに、東グータ地域でMSFが支援している医療施設で治療を受けた犠牲者や紛争によって負傷した患者の約40%を、女性と15歳未満の子どもが占めている。民間人の犠牲者数と負傷者数が全体に占める割合がこれほど多いのは、人口密集地が繰り返し標的にされてきたため、また包囲地域の人びとは移動ができない“捕らわれた”標的で、爆撃から逃げる場がないためだと言える。

シリアのオペレーション・ディレクターを務めるブリス・デ・ル・ヴィンヌは「多くの人が詰めかけていた市場や、数少ない医療施設に対する大規模な爆撃は、国際人道法が示す全てに違反しています。包囲下にある東グータ地域にある2つの地区では、仮設病院が重点的かつ頻繁に爆撃を受けています。MSFはこれらの病院に対して、今年に入ってこれで4度目となりますが、財政やロジスティックの支援を行い修復しています。包囲地域の人びとは、狙撃手が狙っているため外の地域には逃げられません。人びとを包囲しゆっくり死に陥れるアプローチが、空爆による急速な虐殺に変わったら何が起こるのか、想像するのも恐ろしいことです」と話す。

虐殺を止めさせるよう国連安保理に要請

ドゥーマ病院は1000リットルの輸液剤と300袋の血液バッグを使い果たしたため、MSFは必需品の一部について緊急補給物資を提供したほか、救急搬送チームが空爆の対応に必要な燃料などロジスティック面の支援も行っている。MSFは今後さらに緊急医療物資の寄贈や技術的な助言も行う可能性を視野に入れている。

MSFは国連安全保障理事会の常任理事国に対し、安全保障理事会決議2165に明記された保護命令に従って、シリアで悪化し続ける空爆による虐殺を速やかにやめさせるように訴えている。

MSFはシリア国内6ヵ所で医療施設を運営し、150余りの診療所、小規模医療施設、野外病院を直接支援。周辺国のヨルダン、レバノン、イラクでもシリア人患者を援助している。

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