日やけ止めの塗布状態を“見える化” 成分単位での塗布膜分析技術を開発

プレスリリース発表元企業:株式会社コーセー

配信日時: 2021-07-20 15:00:00



 株式会社コーセー(本社:東京都中央区、代表取締役社長:小林 一俊)は、浜松ホトニクス株式会社(本社:静岡県浜松市、代表取締役社長: 晝馬(ひるま)明)との共同研究で、貫通孔ポーラスアルミナ薄膜DIUTHAME(R)(※1)を用いたイメージング質量分析法(※2)により、肌上の日やけ止め塗布膜に含まれる成分を一括でマッピングする技術を開発しました。この技術により、例えば塗布膜に存在する紫外線吸収剤の偏りや、成分同士の位置関係、成分ごとの落ち方の違いなどを視覚的に解析できるようになります。
 日やけ止めは、自然な仕上がりが求められる一方で、必要な成分がきちんと塗布されていないと期待される効果が得られないため、成分ごとの塗布状況が分かりやすい形で「見える化」できる本手法は、日やけ止めの効果検証や処方開発において有用な技術となります。
 なお、この研究成果は、第46回日本香粧品学会(2021年6月25・26日、東京)にて発表しました。

(※1) 浜松ホトニクス株式会社製の酸化アルミニウム薄膜「Desorption Ionization Using Through Hole Alumina MEmbrane」の略名。容易に肌上の成分などのサンプル採取が可能で、分析に必要な前処理を大幅に短縮することができるツールです。
(※2)成分ごとに、質量に基づいて対象試料に含まれる種類や量を測定する技術。一定の区切られた領域ごとに分析を行うことによって、各成分の存在場所を可視化することができます。
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研究の背景

 日やけ止めの機能性や使い心地を評価するためには、配合される各成分に注目し、肌上の日やけ止め塗布膜を微視的に「見る」ことが重要です。しかし日やけ止めには紫外線吸収剤やミネラルオイル、界面活性剤などの多様な成分が配合されており、それぞれ化学的性質も異なるため、従来技術ではこれらを一挙に可視化することができませんでした。そこで今回、日やけ止め中の各成分が、肌上でどのように塗布膜を形成しているのか、それぞれどんな分布をしているのかを視覚的に評価する手法の開発を試みました。


肌上の日やけ止め塗布膜の評価法開発

 日やけ止め塗布膜を評価するときには、肌上での状態を保ったまま塗布膜を採取することが求められますが、従来手法には「処理が煩雑で塗布膜の状態が崩れてしまう」「肌成分まで採取されてしまう」など多くの問題がありました。そこで我々は、これらを解決するために『貫通孔ポーラスアルミナ薄膜DIUTHAME(R)(※1)』に着目しました。この薄膜は肌上に乗せるだけで日やけ止め塗布膜のみを採取することが可能であり、複雑な処理を全く必要としないツールです。今回、この採取方法とイメージング質量分析技術(※2)を組み合わせることで、複数の成分の量や存在場所を一括評価することに成功しました(図1)。これにより、例えば図1 右下のように、紫外線吸収剤の中でも油性成分と水性成分が異なる場所に分布することで塗布膜全体として効果的な紫外線防御を実現していることなどが分かりました。


使用シーンごとの日やけ止め塗布膜の可視化

 本技術を用いて、使用シーンごとの塗布膜状態を観察しました。まず、試験用の日やけ止めを腕に塗布し、日差しの強い環境下にて活動後、塗布膜に含まれる紫外線吸収剤の状態変化を評価しました(図2)。その結果、時間が経つにつれて特に水性の紫外線吸収剤が落ちていく (図中の黒色部分が増えていく) 様子が観察されました。さらにランニングで汗をかいた後の塗布膜を同じように評価したところ、同様の傾向がより顕著に観察されました。このことから「汗をかいて日やけ止めが落ちた」と一口にいっても、配合成分ごとに落ちるスピードや量には違いがあり、本技術が汗で落ちづらい成分や製剤の設計に有効であることが示唆されました。

[画像2: https://prtimes.jp/i/41232/240/resize/d41232-240-c5044b4e5aec7fafd2f8-1.png ]



今後の展望

 本技術により、肌上の日やけ止め塗布膜における成分分布を視覚的に解析できるようになるため、塗布膜の紫外線吸収剤の分布に着目した処方設計や評価など、より高機能な日やけ止め開発を行うことが可能となります。また今後は、日やけ止め評価に留まらず、ファンデーションや化粧下地の塗布膜評価や、有効成分の皮膚浸透性のビジュアル評価などへの展開も期待できます。今後もコーセーでは、高度な製剤開発を可能にし、お客さまに価値を分かりやすく伝えられる評価技術の開発を推進していきます。

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