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相場展望2月10日号 金融相場が、脆弱な実体市場を支える株式市況続く

2020-02-10 09:48:07

■I.米国株式市場
●1.良い経済情報で株価は驚異の回復
 (1)1月の米供給管理協会(ISM)の製造業景況指数は半年ぶりに50超え  
   ・1月ISM製造業景況指数 50.9(前月47.8)と昨年7月以来の高水準
 (2)1月ADP雇用統計は前月比+29.1万人増と、2015年来で最大の伸び
 (注)国防関係を除いた設備投資は弱く製造業の景況感が1月の様に大幅改善する可能性は低いため、ISM製造業指数の改善は一過性とみる。

【前週は】相場展望2月3日号 FRB議長、金融相場の終焉を示唆 新型肺炎ピーク後の株価はV型回復も

●2.石油と銅の市況が悪化し、金は上昇
 1)中国景気下振れ警戒で、世界景気の先行指標である銅・原油価格は下落

 2)逆に、リスクヘッジで金価格と仮想通貨(ビットコイン等)は上昇。

●3.米中央銀行のFRBは予防的金融緩和策を講じて米景気と米株をサポートの見通し
 1)金融相場が続くと予想。

・続いて、「中国市場」の分析へ

■II.中国株式市場
●1.中国株式市場
 1)中国証券監督管理委員会は春節明けの2月3日、新型肺炎で売り殺到から株式市場を守るため、証券会社・投資信託に対し週内の株売りを禁じた。

 2)それでも、3日の株価は急落し上海総合指数は▲229安(▲7.7%安)の2,746と急落し、2015年以来最大の下落を演じた。

 3)春節明けの2月3日の上海総合指数は下落したが、当局の施策が効果を発揮。

  i.当局の措置
  (1)売りの禁止措置
  (2)中国人民銀行(中央銀行)による18.7兆円の緊急資金供給により安心感が出て、▲7.7%の下落幅で踏み止まった。

  ii.ただ、新型肺炎による実害リスクを考えると、この程度の下げとその後(4日以降)の反発は意味不明(官製相場?)。

●2.新型肺炎拡大は「世界の工場」中国経済だけでなく、世界経済に大きな影響を与える
 1)2002~2003年のSARS(中国・広東省)との違い
  (1)SARSは発熱などの症状が出ているヒトからしかヒトへの伝染はしなかった。    早期に治療用ワクチンが出来た。

  (2)新型肺炎は、死亡率がSARSよりも低いが、罹患者で発熱等しない無症状者からも伝染している。
    治療に有効なワクチンや治療方法が現段階で見つかっていない。なお、新型肺炎による感染者数ならびに死亡者数は、SARSを上回って、さらに拡大中。

    よって、今回の中国・湖北省武漢市発の新型肺炎コロナウイルスの方が手強い。

 2)終息時期によって影響が異なる

  (1)3月末までに目途が立てば、世界の株価は急回復するとの楽観論。

  (2)4月以降なら、世界経済の成長率が3%台前半から1%まで失速して、世界経済に大打撃も想定。

 3)終息の目安としては、米国による「中国からの入国拒否」の解除時期となろう

  (1)米国による「入国拒否」している間は、中国と世界経済の「収縮現象」継続
    ・中国の経済成長率は年率で▲4%減、米国は▲0.4%減と軽微で、中国の方が打撃大きい。

  (2)対中依存度の高い日本、ドイツ、韓国などは米国以上の打撃を受ける。

  (3)特に、6月になっても「終息宣言」が出ない場合は、7月下旬からの東京五輪開催に影響が出て、日本経済が受ける心理的衝撃は突出した規模になりかねない。

 4)経済的打撃を受ける内容

  (1)中国人観光客の急減による観光・運輸業などのインバウンド売上減少。
    ・中国企業の操業停止と消費の抑制により中国経済は縮小。
    ・北京・上海は、農村など市外から戻った人に原則14日間の自宅待機を求めている。大都市の経済を支える地方労働者の職場復帰遅れで企業の活動本格再開の時期が見通せない。
    ・武漢市と同様の人の移動制限などの封鎖措置を取る地方都市は40以上。
    ・北京市では5日時点、飲食店で営業しているのは13%にとどまり、多くの住民が外出を手控えており、個人消費が低迷。

  (2)中国企業の操業休止・稼働率低下により世界的なサプライチェーンへの打撃。

  (3)中国経済の停滞による世界各国の対中輸出の減少。

  (4)中国内では感染忌避による外出者数の減少による消費支出減少。日本も同様の現象が現れている。

●3.新型肺炎を受けて景気支援策を講じる
 1)中国人民銀行は、(1)18.7兆円の緊急資金供給 (2)低利融資枠5兆円を設けた。

 2)中国財務省は、中小零細企業への支援のため付加価値税や法人税・個人所所得税
などの軽減措置を打ち出した。

●4.新型肺炎で世界景気を下押し「成長3%割れの2%台」予想も
 1)米企業の対応事例
   ・スターバックスは中国国内約4,300店舗の半数以上で一時休業。
   ・アパレル大手リーバイ・ストラウスも店舗の約半数を閉めた。
   ・アップルは武漢周辺に部品調達先があるため、生産・販売の一時閉鎖で打撃。

 2)2003年に大流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)による世界経済の影響は年▲0.1%下押し。国際通貨基金(IMF)によると、その後の中国の経済成長で、中国経済が世界に占める比率は2003年の約4.4%から2019年には約16.3%に上昇した。そのため、世界経済の生産・消費の両面で中国の存在感が増大したため、中国の動向に目が離せない。

 3)英金融大手バークレイズは、長期化すれば2020年の中国の成長率を最大▲1.3%
押し下げると試算。世界経済の成長率は現在予想3.3%から2%台に低下する可能性があると警告した。

●5.中国を見限り生産移転する動きが加速 『中国経済の終わりの始まり?』
 1)転機

  (1)米国・中国との追加関税措置による高コスト化

  (2)新型コロナウイルス拡大が生産・消費の低迷という追い打ち

 2)事例

  (1)新型肺炎の前からも米企業は、中国の生産ラインを移転もしくは計画
   ・アップル、ホームデポット、アマゾン、ヒューレットパッカード、デル、グーグル、ハズブロなど。移転先は、台湾、マレーシア、インドネシア、タイ、ベトナムなど。

   ・米国企業で中国に進出した239社では、22.7%が中国への製品輸出中止、19.7%が将来的に中国から転出を決定。

  (2)中国に進出した台湾企業
   ・進出した企業の39%が投資を、29%が生産拠点を中国からベトナムやインドなどに移転計画立案

  (3)中国に進出した欧州企業
   ・中国進出した174社のうち、10%が既に中国への輸出を中止、8%が業務の中国外移転、15%が対中国投資を延期。

  3)感染が拡大し続ければ、中国企業ばかりではなく、中国に進出している海外企業の生産活動にも大きな影響が出るのは不可避。

・続いて、「日本市場」の分析へ

■III.日本株式市場
●1.日本経済成長鈍化の恐れ
 1)新型肺炎がもたらす影響

  (1)新型肺炎の影響で、輸出と免税売上減
   ・中国経済の減速 ⇒ 日本からの輸出も減少
   ・訪日中国人旅行者の減少 ⇒ インバウンド効果の減退 
    中国人40万人が訪日中止?春節期間中の百貨店の中には免税売上高は1月29日以降で前年比▲3~4割減ったという。

  (2)感染予防で外出が減ることによる消費減退

 2)企業活動の低迷

  (1)日本製鉄   国内需要の低下と国際競争激化により高炉の休止を決定(和歌山1基、子会社の日鉄日新製鋼2基)2020年3月期は連結純損失▲4,400億円と過去最大赤字額予想

  (2)中国進出企業 ユニクロ、無印などが中国店舗の半数閉鎖による売上・利益減。

●2.米国株と日本株との違い
 1)現状
  ・楽観による底堅さと、上値追いの難しさが混在している。
  ・その中で、外資系は2月3日まで売り越しスタンスだったが、4日から予想外に(1)上海株反発 (2)米国株高 (3)円安ドル高 (4)原油と銅の反発 を受けて、外資系がCスイスを筆頭に買い越しに転じ、日本株も上昇に転換。

          2月3日  4日   5日   6日   7日
  米ダウ  : +143㌦高  +407㌦高 +483㌦高 +88㌦高 ▲277㌦安
  日経平均 : ▲233円安 +112円高、+234円高 +554円高 ▲ 45円安

 2)米国株と日本株の違い
  ・米国株 : (1)企業決算が好調 (2)経済指標の改善もあって楽観主義に回帰した。
  ・日本株 : (1)企業決算が芳しくない(1株利益の低下)
         (2)中国リスクをダイレクトに影響を受ける
         (3)日経平均24,000円以上狙うには、下記の追い風が継続的に必要
           i.米国株の上昇の勢い継続
           ii.上海総合指数の大幅高
           iii.外資勢の買い仕掛け継続

執筆:中島義之(なかしま よしゆき) 

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