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宇宙に存在する重元素の起源を解明する計画 国立天文台と核融合研らが開始

2019-02-27 09:26:24

中性子星合体により生じるキロノバの想像図 (c) 国立天文台

中性子星合体により生じるキロノバの想像図 (c) 国立天文台

 宇宙において鉄より重い元素がどこでどのようなプロセスを経て作られたかについて、不明な点が多い。この重元素の起源として注目されるのが、中性子星の合体である。中性子星合体に伴い観測された「キロノバ」と呼ばれる爆発が放つ光を解析し、中性子星合体により生成された重元素の種類と量を推定する研究に、国立天文台と核融合科学研究所などから構成されるグループが着手している。

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■中性子星の合体による重力波の観測
 中性子星は、太陽より重い大質量星が超新星爆発することで形成される。中性子星の直径は20キロメートル程にもかかわらず太陽と同等の質量をもつため、その密度は1立方センチメートル当たり10億トンにも及ぶ。

 2つの中性子星が1億3,000万年前に合体したことにより発生した重力波が、アメリカの重力波検出器「Advanced LIGO」によって2017年8月に捉えられた。中性子星の合体による重力波の検出は、この事例が史上初だ。

 2017年8月に重力波が検出された際、ハワイのすばる望遠鏡を使った光赤外線観測で、キロノバが観測された。中性子星から高速で宇宙に放り出された物質は、鉄よりも重い金やプラチナなどの貴金属や、ネオジムなどのレアアースといった重元素を含むという。

 このような中性子星同士の合体で生成された重元素の種類や量を詳しく知るためには、キロノバによる光を解析し、どの元素がキロノバの光を吸収し再び放射するのかを調べる必要があるという。ところが「原子過程データ」と呼ばれる元素の固有情報が、中性子星合体で生成される重元素に関しては非常に少ないという問題を抱える。

■核融合分野と天文分野とがタッグを組む
 そこで、キロノバの光を解析するため、天文分野と核融合分野の共同研究が、国立天文台や核融合科学研究所らによって開始された。核融合科学研究所はリトアニアとの国際共同研究で、高精度な原子過程データを計算で構築する研究を進めている。これまで核融合研究が対象とした原子の種類は、キロノバの解析研究が対象としたものと異なるため、天文分野からの協力が必要になるという。

 研究グループは、キロノバの光吸収にもっとも影響を及ぼすネオジムに注目。今回得られた原子過程データを用い、ネオジムによる光の吸収や再放出のシミュレーションを国立天文台の大型計算機を使って行なった。その結果キロノバからの光の分析には、十分信頼性の高い計算手法であることが判明した。

 研究グループは今後、同様の計算手法を用い、ほかの重元素についても精度の高い原子過程データを構築する予定だ。これにより、中性子星の合体で生成される重元素についての詳しい分析が可能になるという。

 研究の詳細は、米天体物理学誌「Astrophysical Journal Supplement Series」にて2月1日に掲載されている。

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