記事を印刷する | ウィンドウを閉じる

多様化している「定年」のとらえ方

2019-02-07 19:13:44

 先日、大企業に勤める40代後半くらいの人たちとの会話の中で、たまたま「定年」のことが話題になりました。何人かは、雇用延長や年金支給開始年齢繰り上げの議論など、最近の動きから「会社はいったいいくつまで働かせようとするんですかね」などと言っています。「定年すぎても仕事なんて・・・」という後ろ向きのニュアンスです。
 今までの経歴を聞くと、やはり会社事情が優先で、それに従ってきた部分が多かったりするようで、定年以降は仕事の束縛から離れて、自分の意志で自由に行動したいという気持ちが見て取れます。

【こちらも】定年後の再雇用、企業側の思惑と待遇に違い

 私はあえて、「定年間近で、まだもう少し働きたいとしたら同じように思うか」と尋ねてみると、全員が「そうだとすれば、雇用延長などの仕組みがあった方が、選択肢は増えるかもしれない」といっていました。

 定年になったとき、問答無用で一律に辞めるしかないとなると、辞めることに納得していても、あくまで会社に制度に則ったことであり、100%自分の意志で決めたこととは言えません。もし仕事を続けたければ、どこか他の会社に行くか、何か自力でやるかのどちらかになります。
 一方、「その会社で働き続ける」という選択肢が用意されていれば、そこで辞める選択は自分の意志によるものです。転職や独立という選択肢も合わせて持てますから、その時の状況によって仕事のしかたを自分で考えられます。決して「いつまでも働かせられる」などという話ではありません。

 私個人の「定年」に関する思いは、かつての企業勤務の時代は、まだずいぶん先の話だったこともありますが、仕事を続けているイメージはまったくなく、悠々自適で遊んでいる姿しか思い浮かべていませんでした。
 そこまで仕事の面白さを感じておらず、仕事とプライベートの境目ははっきりしたいと思っていましたから、「いつまでも働きたくない」という気持ちに近かったと思います。

 今は独立していて、やはり生活の中での仕事の優先度は高くなりますが、仕事上の裁量はすべて自分次第で、自分が主体的に決めなければならないことが多くなりますが、それは仕事の面白さにもつながっています。「定年」がない働き方ということもあり、現状では健康上や体力的な問題がない限り、仕事を続けているイメージしかありません。
 環境が変わると、考え方もこんなに変わるものかという感じです。

 「定年」に関しては、健康寿命が延びていることや、いつまで仕事をするかというような人生設計は、個人個人でまちまちということで言えば、一律の「定年」で社員の退職年齢を決めるのは、会社の一方的な都合でしかありません。それが時代にそぐわなくなっているのは間違いなく、今後は延長、廃止の方向に進むのでしょう。だからなおさら、自分のことは自分で主体的に考えていかなければなりません。

 最近感じるのは、そういう人が増えてきていることで、例えば副業のような取り組みを少しずつ始めていたり、将来的に個人で仕事をする可能性を探っていたり、また単に仕事だけでなく、趣味やボランティアのような分野で、ノウハウを身につけたり人脈形成を図ったりという動きが見られます。

 「定年」というのは、ある人にとっては「終着点」、ある人には「通過点」、またある人には「転換点」と、それぞれとらえ方が多様化しています。もっと先には「定年」という考え方自体があいまいになり、やがて消滅していくかもしれません。

 「定年で仕事は終わり」も一つの選択ですが、実際その時にならないと、どんな気持ちでいるかはわかりません。気持ちの変化に対応できる選択肢は、主体的に準備しておいた方が良いと思います。

※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら

執筆:小笠原 隆夫(おがさわら・たかお) ユニティ・サポート代表

© Copyright Zaikei Shimubun 2019 All rights reserved.