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「阿波踊り」の主催者対応がブラック企業的なこと

2018-08-15 17:30:00

 阿波踊りをめぐって、徳島市を含めた主催者側と踊り手グループが対立している問題で、中止とされていた名物の「総踊り」が、有力踊り手団体によって決行されました。

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 そもそもは、昨年まで主催していた市観光協会が多額の累積赤字を抱えていたことから、今年は市などでつくる実行委が運営することとなり、観客の人気が総踊りの行なわれる会場に集中することから、これを中止して四つの会場に踊り手や観客を分散させて、入場料収入を増やすことが目的でした。

 ただ、この決定が踊り手との話し合いを経ずに一方的に決められたことから反発を生んで、演舞場外で独自に総踊りをすることを計画し、これに対して市長が「実施した場合にはペナルティーも検討する」と述べるなど、まったく歩み寄りはありませんでした。
 結果として総踊りは独自で実施され、始めは「阻止する」といっていた実行委側も静観したことで、心配された混乱はなく終わりました。

 ここまでの流れを見ていて、特に主催者側が、最も集客が見込める総踊りをなぜ中止、分散という判断をしたのか、なぜ結果の通告だけで話し合おうとせず、ここまでかたくなな態度をとったのか、私はほとんど理解できません。
 そして、どこかでこれと同じように理解できない感覚だったと思い出したのが、ブラック企業に対して感じたことでした。「誰も得をしない」「絶対に長続きしない」、にもかかわらず「なぜそうするのか」ということです。

 ブラック企業の場合、安い給料と過酷な労働条件、さらに法令すら守らないとなれば、普通に考えて「人が定着しない」「採用できなくなる」などデメリットしかないと思いますが、これを「とにかく社員を安く使い倒すこと」を最優先に考えると、実はつじつまがあってきます。
 教育など余計な手をかけず、昇給などはせず、残業代は払わず、威圧してでも簡単には辞めさせないことが優先しておこなわれるようになりまず。法令違反をしても、勧告は適当に受け流し、最後はお金で解決すればよいと開き直れば、実際それで済んでしまいます。
 悪い評判が立てば、確かに応募は減りますが、それでもまったくゼロにはならないそうです。

 今回の阿波踊りの件について、こんな話を当てはめて考えると、まず最優先に考えていることが、その他大勢の周りの目とは違うということになります。
 それが一部の人に対する利権なのか、誰かを排除したいのか、その他表沙汰にできない理由が何かあるのかはわかりません。
 関係者と話し合いをしないのも、それをすれば反対されるのがわかっていたから、あえて意図的にしなかったとも考えられます。執拗に権力で抑え込もうしているもの、何かそうしなければならない理由があるのでしょう。
 これらの動きは、少なくとも「入場料収入を増やすこと」が最優先の目的でないことは、明らかではないでしょうか。ブラック企業が成り立つ構図と、何か似ている感じがします。

 このように、正論や大勢の支持といったものとは、異なる基準で判断が下されることがあります。なぜそういう違いが出るのか、多くの場合は優先しているものや背景の違いにあります。

 人間関係でも組織運営でもそうですが、それが何かを理解しなければ、本当の意味での問題解決はできません。阿波踊りの件でもそのあたりが明らかになって、来年に向けてよりよい方向に話が進めばと思います。

※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら

執筆:小笠原 隆夫(おがさわら・たかお) ユニティ・サポート代表

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