「退職時の引き継ぎは義務なの?」
「引き継ぎが間に合わない場合はどうしたらいい?」
退職をする際には、会社に迷惑がかからないように引き継ぎをする義務があります。しかし、何かしらの事情で引き継ぎが間に合わない場合もあるのではないでしょうか?
この記事では、退職時の引き継ぎ義務がどこからどこまでなのか、また間に合わない場合の対処法を解説していきます。
これから退職をしようと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
- 案内人
『退職希望者』と『退職代行業者』の懸け橋になることを目標に本プロジェクトを立ち上げる。自分たちの退職時の経験から悩みに寄り添い、安心して利用できる退職代行業者のみを紹介する。
どこまでが義務?退職時の引き継ぎ業務
退職をする際に行う引き継ぎ業務は「信義則上の義務にあたる」とされています。「信義則」とは、「信義誠実の原則」を略した言い方のことです。
信義誠実の原則(しんぎせいじつのげんそく)とは、当該具体的事情のもとで、 相互に相手方の信頼を裏切らないよう行動すべきであるという法原則をいう。
引用元:Wikipedia
つまり法律で「引き継ぎの義務」が定められているわけではありませんが、信義則に則って、退職時にはしっかりと引き継ぎをする必要があるのです。しかし「完璧な引き継ぎ」というものは、現実的に難しいでしょう。
そこで大切になってくるのが「誠実な引き継ぎが行われているかどうか」ということです。会社のために誠実に、できる限りの引き継ぎを行ったのであれば、信義則違反として責任を問われることはないでしょう。
引き継ぎなしで退職した場合のリスク
「面倒だから引き継ぎをせずに退職したい……」
「退職届を出して、行かなければ引き継ぎをせずに済むのでは?」
確かに引き継ぎ業務は時間も手間もかかるので面倒です。しかし引き継ぎなしで退職した場合、いくつかのリスクが考えられます。
それぞれのリスクについて、具体的に解説していきます。
- 会社に迷惑がかかる
- 退職日が延びる可能性も
- 場合によっては損害賠償請求される
会社に迷惑がかかる
最初に挙げられるのは、やはり「会社に迷惑がかかる」ということでしょう。引き継ぎをせずに辞めれば、あなたがこれまで担当していた業務に穴が空き、これまで同僚として働いていた人たちに迷惑をかけることになります。
「あの人は引き継ぎもせずに辞めた」
「みんなに迷惑をかけて退職した」
といった噂はあっという間に広がります。
転職先が同じ業界や近くの職場だった場合には、転職先にまで噂が伝わり、あなたにとっても不利になるかもしれません。新しい職場で、気持ちよく仕事を開始するためには、やはり誠実に引き継ぎをしておくことが大切なのです。
退社日が延びる可能性も
引き継ぎが十分に行われなかった場合、退社日が延びる可能性も考えられます。先ほども書いたように、退職時に引き継ぎを行うというのは「信義則上の義務」に当たるからです。
退社日が延びれば、当初の予定を変更せざるを得なくなります。次の就職までに旅行に行こうと思っていたのに行けなくなったり、ギリギリのスケジュールだった場合には入社日を送らせる必要が出てくるかもしれません。
そうすれば入社前に、転職先と揉める可能性も。スムーズに転職をするためにも、できる限りの引き継ぎを行うことをおすすめします。
場合によっては損害賠償請求される
最悪のケースでは「損害賠償請求される」可能性があることも覚えておきましょう。引き継ぎを一切行わずに退職し、それによって不利益を被った場合、会社は社員に対して損害賠償責任を行うことができるのです。
たとえば引き継ぎをしないで退社した結果、取引先を失うなどの実害が生じるケースが挙げられます。ただし「損害賠償請求」が認められるのは、きわめて悪質な退社をした場合がほとんどです。
「後任のスキルが足りず、引き継ぎが思ったように進まない」
など、誠実に引き継ぎを進めていたのにも関わらず、どうしても引き継ぎが間に合わない場合は、まず損害賠償請求されることはないでしょう。
退職時の引き継ぎを計画的に進める手順5つ
「時間がないからできるだけ引き継ぎをスムーズに行いたい」
「引き継ぎをスムーズに行うためのコツはある?」
退職までの限られた時間の中で、できるだけスムーズに引き継ぎを行うためには以下のような方法がおすすめです。
- 引き継ぎが必要な仕事を書き出す
- 引き継ぎに必要な人数の割り出し
- 引き継ぎ資料の作成
- 引き継ぎスケジュールの作成
- 優先度が高いものから引き継ぎ
ここからは、後任者への業務引き継ぎをスムーズに行うための5つのポイントを解説していきます。
1.引き継ぎが必要な仕事を書き出す
まずは自分が受け持っている業務をすべて書き出してみましょう。どんな小さな業務でも書き出すことが重要です。
うっかり見落としてしまうと、引き継ぎができなくなってしまうからです。すべての業務を書き出した上で、引き継ぎが必要なものと不要なものを仕分けていきます。
もし自己判断が難しいのであれば、上司にリストを持っていき、どの仕事を引き継いでおくべきか、相談するといいかもしれません。
2.引き継ぎに必要な人数の割り出し
次にリストを見ながら、引き継ぎに必要な人数の割り出しを行います。今まではあなた一人で行っていた業務も、複数人にすることで効率よく引き継ぎができるかもしれません。反対に一人で最初から最後まで行った方が、煩雑化しない業務もあるでしょう。
引き継ぎをする際は、どうしても他の仕事の手を止めてもらわなければなりません。そのため、必要最低限の人数で、どうやったら効率の良い引き継ぎができるかを考えましょう。
可能であれば、業務の全体像を描き、つながりのある後任者に引き継ぎを依頼すると理解も早いでしょう。
3.引き継ぎ資料の作成
3つ目に「引き継ぎ資料の作成」を行っていきます。その仕事に慣れているあなたは、資料がなくても業務を行えているかもしれませんが、慣れていない人にとって資料は必要不可欠です。
初めての人が見ても分かりやすい資料の作成を心がけましょう。具体的に記載したい内容には以下のものが挙げられます。
- それぞれの業務のフローチャート
- 関わってくる担当者や取引先の名前や連絡先
- 関係する資料の保管場所
- 過去のトラブル事例
これらをまとめた資料があれば、引き継ぎがスムーズになりますし、あなたが退職した後に後任者が引き継ぎ内容をうっかり忘れても見返すことが可能になります。
4.引き継ぎスケジュールの作成
資料を作成したら、次に引き継ぎスケジュールを組んでいきましょう。「どの仕事を」「いつまでに」「誰に」引き継いでいくのか、具体的に書き出していきます。
日常のルーティン業務の場合は、そのルーティンの際に引き継ぐと、実際に一緒にやってみることができるので効率的です。どんな仕事もできるだけ早めに引き継いでおきましょう。
余裕を持って引き継ぎを行うことで、分からない時に聞く時間を設けることができます。引き継ぎ資料だけ渡して、次の日には退社してしまう、なんてことになると後任者にも迷惑が掛かります。
5.優先度が高いものから引き継ぎ
最後のポイントは「優先度が高いものから引き継ぎを行う」ことです。引き継ぎスケジュールを作成していても、思ったように引き継ぎが進まないことも考えられるからです。
予定外の仕事が入るかもしれませんし、引き継ぎをしようと考えていた人との予定が合わないかもしれません。そのため口頭やマニュアルのみで引き継げるものは後回しにし、優先度の高い物から引き継いでいくことをおすすめします。
ついつい面倒なものや時間がかかるのものを後回しにしてしまいがちですが、順序を抑えておくことで、スムーズに引き継ぎを終わらせることできるでしょう。
退職時の引き継ぎ対応ができない場合の対処法
「どうしても退職前に引き継ぎが間に合わない!」
「体調不良等で引き継ぎ対応ができない」
やむを得ない事情で引き継ぎ業務ができないこともあるでしょう。そういった時には以下のような対応を取りましょう。
- 上司に相談する
- マニュアルの有無を確認する
- 退社日を延長する
ここからは、引き継ぎが間に合わない場合の対処法を解説していきます。
上司に相談する
一番最初にするべきなのは「上司に相談する」ことです。自己判断で「引き継ぎをしない」と決めてしまえば、後々トラブルに繋がる可能性があるからです。
上司に相談する際には、「現在はここまで引き継ぎが終わっており、残りどれくらいの分が終わっていないか」を具体的に説明し、指示を仰ぎましょう。
注意したいのは相談する時期です。退社日前日に相談しても、上司はどうすることもできません。少なくとも退社予定日の一週間前には、相談をしておくと上司も何かしらの対応策を考えられるのではないでしょうか?
マニュアルの有無を確認する
次にするべきことは「マニュアルの有無の確認」です。マニュアルがあれば、簡単な引き継ぎでも対応できるからです。
後任者とのスケジュールがなかなか合わず、引き継ぎができないのであれば、せめてアニュアルだけは残しておきましょう。口頭での説明ができない分、より具体的な資料が必要です。
図や実際の画像を用いながら、視覚的にも分かりやすいマニュアルを作りましょう。手書きでもいいですが、なくすリスクや修正が加わる可能性を考えると、データで残しておく方がおすすめです。
退社日を延長する
場合によっては「退社日を延長する」という方法もあります。もちろん独断では決められないので、上司や次の転職先に相談しながら決めていきましょう。
転職先には「前職の引き継ぎが間に合わず、責任を持って最後までやりたいので入社日を延長してください」と説明するといいかもしれません。あなたの責任感や会社への誠意も伝わるでしょう。
しかし入社日が延びれば、迷惑がかかるのも事実です。具体的に何日延ばしたいのか、はっきりさせてから相談するようにしてください。
退職時の引き継ぎ業務は代行依頼できる?
「退職時の引き継ぎが面倒だから、代わりにやってほしい」
「急な退社で気まずいので、会社に行きたくない」
退職代行サービス等で退職時の引き継ぎ業務を代わりにやってほしいと思う方も多いようです。しかしながら、退職代行サービスが本人に代わって仕事をしてくれるというのは現実的に不可能です。
代行業者によっては、引き継ぎのマニュアルや伝えるべきことをまとめて、それを会社に持っていくという方法で引き継ぎをしてくれるところも。そして損害賠償が発生しないように備えてくれるでしょう。
しかし代行を通すと、引き継ぎがスムーズに行えない場合もあります。また同僚とも今後連絡が取りづらくなるでしょう。そのため、できる範囲で引き継ぎを行い、それでも間に合わず会社が辞めさせてくれない場合などに退社代行サービスを利用すると良いかもしれません。
退職時は引き継ぎしておくのがベスト!
退職時の引き継ぎは法的な義務ではありませんが、信義則上の義務ですし、円満に退社するためには必要不可欠であると言えます。そのため、できる限りの範囲で引き継ぎをしておくのがベストです。
しかし退社日までに引き継ぎが間に合わなかったり、後任者のスキルが足りず引き継ぎが不十分になってしまうこともあるでしょう。そういった場合には、まず上司に相談し、どのような対応をしたら良いのか指示を仰ぎましょう。
やむを得ない事情があるにも関わらず、退社させてもらえなかったり、しつこく引き留められるようなら退社代行サービスに依頼するというのもひとつの方法です。退職時の引き継ぎで悩んでいる方は無料相談窓口に相談してみるといいかもしれません。