「派遣社員を1日でも早く退職したい」
「退職意向を伝えればいつでも退職できる?」
派遣社員は通常の雇用契約とは異なるケースが多く、退職に疑問を抱えることがあるでしょう。実際、派遣社員では即退職することが難しい場合もあります。
この記事では、派遣を1日でも早く退職するための条件や、退職時に起こり得るリスク、上手に退職するためのコツを詳しく解説していきます。退職を検討している派遣社員の方は、ぜひチェックしてみて下さい。
- 案内人
『退職希望者』と『退職代行業者』の懸け橋になることを目標に本プロジェクトを立ち上げる。自分たちの退職時の経験から悩みに寄り添い、安心して利用できる退職代行業者のみを紹介する。
派遣を1日でも早く退職するための条件
派遣には契約によって、登録型派遣と無期雇用派遣の2種類が存在します。各派遣によって退職の条件が異なるため注意が必要です。まずは、退職の条件を確認していきましょう。
1.登録型派遣の場合
登録型派遣とは、派遣先企業と派遣会社間で締結される派遣契約と同じ期間だけ派遣会社と雇用契約を結ぶ方法です。派遣会社を通して派遣先企業へ勤務します。
原則として登録型派遣の場合は契約途中での退職はできません。しかし、場合によっては契約途中での退職ができる場合があります。民法や労働基準法上には「期間の定めがある雇用契約」として退職の条件が規定されています。
ここからは、登録型派遣を退職する場合に確認しておきたい条件を見ていきましょう。
契約期間・勤務日数が1年以上
前述した通り、期間の定めのある雇用契約の解除は民法で以下のように規定されています。
(期間の定めのある雇用の解除)
民法第626条
雇用の期間が五年を超え、又はその終期が不確定であるときは、当事者の一方は、五年を経過した後、いつでも契約の解除をすることができる。
2 前項の規定により契約の解除をしようとする者は、それが使用者であるときは三箇月前、労働者であるときは二週間前に、その予告をしなければならない。
登録型派遣はあらかじめ期間を定めて雇用契約を締結しますが、期間の定めがある雇用契約の場合は一般的に5年以上の勤務があれば自由に退職することができます。
しかし、労働基準法では以下の規定がなされています。
期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が1年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第14条第1項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律附則第3条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第628条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から1年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。
労働基準法第137条
少し難しいように思いますが簡単に解説すると「1年以上の期間を定めた雇用契約の場合は1年間働くことで自由に退職が可能」ということです。例えば、3年間の派遣契約であった場合でも1年間勤務していれば自由に退職することが可能となります。
つまり、契約期間・勤務期間が1年を超えていれば、派遣契約の途中でも退職することが可能です。
登録元の合意が得られた
契約途中でも派遣会社との相談の末、合意が得られれば退職をすることが可能です。あくまでも、派遣会社が契約途中での退職を認めた場合のみですので、認められない場合は契約満了まで勤務しなければなりません。
交渉の方法を意識しながら、納得してもらえるような退職理由を伝えることが重要です。「ただ何となく辞めたい」では、派遣会社も納得してくれません。なぜ退職したいのかを明確にしておきましょう。
やむをえない事由がある
民法には以下のような規定があります。
(やむを得ない事由による雇用の解除)
民法第628条
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
雇用期間のある契約の場合でも、やむを得ない事由がある場合はいつでも退職をすることが可能です。やむを得ない事由とは以下のような項目が挙げられます。
- 契約時の労働条件と実際に勤務した労働条件の相違
- 派遣先のセクハラ行為などの違法行為があった
- 心身の疾病や障害により勤務が困難
- 家族の都合による転勤や引っ越し
- 家族の疾病や障害に伴う介護
このような退職理由がある場合は、直ちに雇用契約の解除をすることが可能と規定されており、契約期間や勤務期間に関係なく退職することが可能です。
2.無期雇用派遣の場合
無期雇用派遣とは常用型派遣とも呼ばれ、雇用期間の定めがない雇用契約が締結されている場合を指します。派遣会社を通しますが、正社員と同じように常勤社員に分類されることがほとんどです。無期雇用派遣の場合、「期間の定めがない雇用契約」として民法に退職条件が記載されています。
(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
民法第627条
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
一般的な正社員と同じように、退職の申し込みから2週間が経過すれば自動的に雇用契約を解除することができます。即日退職ではなく2週間の勤務を行う必要がありますが、派遣先会社との相談の上この時期を有給消化に充てることも可能です。
派遣社員の退職で起こり得るリスク
派遣社員の退職では、退職前・退職時・退職後に起こり得るリスクが存在します。リスクとして挙げられるのは以下の通りです。
- 【退職前】退職意向を言い出せない
- 【退職時】交渉が上手く進まない
- 【退職後】退職条件が不利となる
それぞれの項目を詳しく見ていきましょう。
【退職前リスク】退職意向を言い出せない
退職をしたい場合はまず派遣会社への相談が必要となりますが、派遣会社の担当者との折り合いが悪い、怖いなどの理由から退職を言い出せないことも多いでしょう。退職意向を伝えない限り、その先に進むことはできないため無理をして働き続けなければなりません。退職意向は勇気を出して伝えることが重要です。
特に、契約途中での退職の場合は言い出し辛い方が多いでしょう。稀に損害賠償請求が怖くて言い出せないという意見を見ることもあります。しかし、損害賠償を心配する必要はありません。労働基準法では以下のような規定があります。
(賠償予定の禁止)
労働基準法第16条
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
労働契約の不履行に関して違約金を定めることはできないため、損害賠償請求をされることはありません。勇気を出して退職意向を相談してみて下さい。
【退職時リスク】交渉が上手く進まない
退職時のリスクとして交渉が上手く進まないケースがあります。
特に、契約途中の退職で、やむを得ない事由がない場合は派遣会社との交渉次第で退職できる・できないが左右されます。日々の派遣会社との信頼関係も関わってくる項目です。
派遣会社が納得できるような退職相談をするために、自身の退職理由を明確にしておきましょう。また、今後のこともはっきりと決めておくと引き留めのリスクなども減ることがあります。「なんとなく退職したい」では納得してもらうことができないため、しっかりと自己分析しておいてください!
【退職後リスク】退職条件が不利となる
退職後のリスクとして、退職条件が不利となってしまうケースがあります。
派遣社員で見落としがちなのが有給休暇です。派遣社員でも一定期間の勤務があれば有給休暇は与えられます。
(年次有給休暇)
労働基準法第39条
使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
派遣社員は有給を貰えないと勘違いしている方も多く、退職時の有給消化や有給買取を忘れてしまうケースもあります。しかし、有給が発生しているのであれば、買取や消化などを行わないと不利な退職となってしまいます。派遣社員では頻発しやすいリスクであるため注意が必要です。
契約途中でも派遣を上手に退職するには?
前述したように、契約途中での退職は原則できません。条件に当てはまれば退職をすることはできますが、できるだけ穏便に、上手な退職を目指したい方は多いでしょう。ここからは、契約途中でも派遣を上手に退職するコツを解説します。
契約途中退職が可能かを判断する
まずは、契約途中での退職なのかを確認する必要があります。もちろん条件に当てはまらなくても、派遣会社から合意が得られれば退職は可能です。しかし、きちんとルールを理解するという意味でも条件に当てはまっているのかを確認しておきましょう。
契約途中での退職は派遣会社にも派遣先企業にも大きな迷惑が掛かります。自分勝手な退職となってしまわないよう、最低限のルールは理解しておくことがベターです。
派遣会社の信用を意識する
派遣会社は、様々な企業との信頼の元成り立っています。突然派遣先企業への出勤を辞めてしまえば、派遣会社への信用にも関わります。労働者と派遣会社・労働者と派遣先企業だけの関係ではなく、その下には派遣会社と派遣先企業の関りがあることを理解しておきましょう。
できるだけ迷惑を掛けない退職をするためにも、派遣会社の信用を意識しておくことが重要です。
可能であれば引継ぎ事項を書面化
派遣先企業での勤務が長期間の場合や、無期雇用派遣で長期間の勤務をしていた場合は、引継ぎ事項を書面化しておくと会社への負担が軽減されます。特に、自身に任されていた仕事がある場合、あなたが退職した後は必ず後任が就くことになります。可能であれば直接の引継ぎがベストですが、難しい場合は書面で引継ぎ事項を残しておくと良いでしょう。
今後の派遣会社の信用という面でも、引継ぎを意識しておくことがおすすめです。
ルールを理解して退職しよう
派遣社員を退職する場合は、法律に沿ったルールを理解しておくことが重要です。派遣社員は、派遣会社と派遣先企業の繋がりの元成り立つ雇用契約です。
できるだけ上手く退職をするためにも、この記事を参考にルールやコツを理解しておきましょう。もちろん、あなた自身が不利益を講じないためにも上手な退職ができるとベストです!