トヨタ、水素大型トラックの実証を欧州で拡大 Scaniaの40台は2027年運行開始へ

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トヨタ自動車は、欧州の大型輸送分野で第3世代燃料電池システムの展開を広げる。Scaniaの大型車両40台を使った実運用は2027年第1四半期に始まる予定で、IVECOも同年前半に次世代燃料電池トラックの公道試験を計画している。
トヨタはこのほか、Daimler TruckとVolvo Groupの燃料電池合弁会社cellcentricに対等な株主として参画する契約を締結した。取引は規制当局の承認を条件としており、2026年末ごろから2027年初頭の完了が見込まれている。
■300kWの燃料電池をScaniaとIVECOに供給
Toyota Motor Europeは、ドイツ・ハノーバーで開催されたIAA Transportation 2026で、大型輸送を中心とする水素戦略を発表した。その柱となるのが、商用用途を想定して開発した第3世代燃料電池システムと、ScaniaおよびIVECOとの車両実証である。
Scaniaとの提携では、同社の「Pilot Partner」プログラムに参加する大型車両40台に、トヨタの第3世代燃料電池システムを供給する。搭載システムの出力は300kWで、最初の燃料電池電気トラックは2027年第1四半期に運行を開始する予定だ。
Pilot Partnerは、Scaniaが選定した顧客とともに、新しい輸送技術を実際の運行環境で評価する取り組みである。今回の実証では、技術性能、運用効率、総保有コストなどを確認し、燃料電池トラックが高負荷の輸送業務にどのように適用できるかを検証する。
Scaniaの最高技術責任者Sara Forsbergは、実際の輸送環境で燃料電池技術の性能を評価し、大型輸送における可能性と課題について知見を得る方針を示した。
トヨタの執行副社長、中嶋裕樹は、大型輸送が水素需要とインフラの形成に重要な役割を果たすとの見方を示している。特に、長い航続距離、高い稼働率、運用効率が求められる用途を、水素燃料電池が適する可能性のある分野と位置付けている。
■商用用途を想定した第3世代燃料電池
トヨタは第3世代燃料電池システムを2025年2月に発表し、同月19日に東京で開幕したH2 & FC EXPOで初公開した。日本、欧州、北米、中国を中心に、早ければ2026年以降の市場投入を計画している。
燃料電池は、水素と酸素の電気化学反応によって電気を生み出す。PEM型では、水素をプロトンと電子に分け、電子を外部回路に流してモーターを動かす。プロトンは電解質膜を通過し、反対側で酸素や電子と反応して水を生成する。
トヨタによると、第3世代システムは従来型ディーゼルエンジンに相当する耐久性を目標に設計され、前世代に比べて耐久性を最大2倍、燃料効率を1.2倍に高めた。燃料効率の向上により、同量の水素で走行できる距離は20%伸びるとしている。IAA Transportation 2026では、前世代比で出力も2倍になったと説明した。
セルの設計や製造工程も見直し、システムコストの大幅な削減を図ったという。小型化した設計により、大型商用車だけでなく、バス、鉄道、船舶、定置式発電など、異なる用途への展開を想定している。
もっとも、これらの耐久性、効率、コストに関する数値はトヨタが公表した開発目標および性能値である。ScaniaとIVECOの実証は、商用運行での性能や経済性を確かめる機会となる。
■IVECOは航続距離900km超を目標
トヨタは、IVECOが開発する次世代大型燃料電池電気トラック「S-eWay Fuel Cell」にも、合計出力300kWの燃料電池システムを供給する。
車両開発は、EUの研究開発支援制度Horizon EuropeによるEMPOWERプロジェクトの一環として進められる。欧州委員会のプロジェクト情報によると、EMPOWERの総事業費は約2701万ユーロで、このうちEUの拠出額は約1803万ユーロである。
役割分担では、トヨタが燃料電池システムを提供し、IVECOが車両全体の開発、システム統合、検証を主導する。S-eWay Fuel Cellは、航続距離900km超、耐用時間2万5000時間超を開発目標としている。
IVECOとトヨタによると、エネルギー管理の効率化によって、従来世代の燃料電池トラックに比べて必要なバッテリー容量を半分に減らす。これにより車両重量を抑えるとともに、システム構成を簡素化するという。
検証試験は2026年第4四半期に始まり、公道試験は2027年前半に実施される予定だ。航続距離や耐久時間は開発上の目標値であり、今後の試験と実運用を通じた確認が必要となる。
IVECO Groupの最高技術・デジタル責任者Marco Liccardoは、水素を将来のエネルギーとモビリティを構成する重要な要素と位置付け、トヨタとの協業を大型輸送に対する長期的な投資としている。
■cellcentricへの参画は規制当局の承認が条件
トヨタは車両への燃料電池供給とは別に、Daimler TruckとVolvo Groupが出資するcellcentricへ参画する。
cellcentricは2021年に設立され、大型商用車などに使う燃料電池システムの開発、製造、商用化を手掛けている。独立した企業として、出資会社以外の顧客にも製品を供給できる体制を取る。ドイツとカナダの拠点で560人を超える従業員を擁し、約700件の特許を保有している。
Daimler Truck、Volvo Group、cellcentric、トヨタは2026年3月、トヨタの参画に向けた拘束力のない覚書を締結した。その後、同年7月27日に拘束力のある契約を結んだ。
取引が完了すれば、トヨタ、Daimler Truck、Volvo Groupがそれぞれ3分の1を保有する対等な株主となる。完了時期は2026年末ごろから2027年初頭を見込むが、規制当局の承認が前提となる。
各社は、燃料電池技術、量産技術、大型商用車の開発経験を持ち寄り、cellcentricの技術力、生産規模、競争力を強化する方針だ。トヨタとcellcentricは、燃料電池の中核部品であるセルと、それに関連するシステム構成や制御技術の開発、生産でも協力する計画である。
一方、ScaniaとIVECOの車両に搭載されるトヨタの300kWシステムと、cellcentricが開発・製造する燃料電池システムは、現時点で同一の製品または共通の生産基盤として発表されたものではない。トヨタの欧州戦略では、車両実証とcellcentricへの資本参加が、大型輸送向け燃料電池の普及を目指す別個の取り組みとして並行して進む。
■水素とバッテリーを用途に応じて検証
欧州の大型輸送では、燃料電池電気トラックとバッテリー電気トラックの双方で開発と導入が進んでいる。どちらが適するかは、1日の走行距離、積載量、休止時間、充電・水素充填設備、エネルギー価格などの運用条件によって変わる。
水素燃料電池は、長距離走行、高い稼働率、短時間でのエネルギー補給、積載量の確保が重視される用途での活用が想定される。一方、車両の運用地域に水素の製造、輸送、貯蔵、充填設備を整える必要があり、車両だけでは普及を進められない。
トヨタも、インフラ、水素供給、顧客需要、政策の枠組みを一体的に整備する必要があるとの認識を示している。Scaniaの40台による運行とIVECOの公道試験は、技術性能だけでなく、運用効率や総保有コストを把握し、大型輸送のどのような条件で燃料電池が有効な選択肢になるかを見極める取り組みとなる。
■燃料電池Hiluxは2027年のダカール参戦を計画
トヨタは大型トラック以外でも、水素技術の開発を続ける。Toyota Gazoo Racingは2027年、ダカールラリーのFuture Mission 1000カテゴリーに燃料電池システムを搭載したHiluxで参戦する計画だ。
トヨタは2017年から、モータースポーツを通じて水素エンジンの性能、効率、信頼性を高める開発を進めてきた。ダカールラリーでは、燃料電池車を厳しい走行環境に投入し、技術開発に生かす考えである。
さらに同社は、航続距離400km超、最大2.5トンのけん引能力を目標とする「Hilux Fuel Cell」を2028年に投入する予定としている。販売地域、価格、具体的な仕様などは、今回の発表では示されていない。
当面の焦点は、2027年第1四半期に始まるScania車両の運行と、同年前半に予定されるIVECOの公道試験である。そこで得られる性能、運用効率、総保有コストのデータが、欧州の大型輸送における燃料電池の適用範囲を判断する材料になる。
元記事: Toyota Locks In Hydrogen Fuel Cell Truck Deals at IAA: Scania Pilots Start Early Next Year
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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