シーメンスのソフトウェア定義信号技術、ドイツの都市交通で初試験

(Mobility.siemens.com)[写真拡大]
シーメンス・モビリティとロストック市電は、ドイツ・ロストック中央駅の地下を通る路面電車区間で、クラウド対応の信号プラットフォーム「Signaling X」の試験運用を開始した。ドイツの都市公共交通における同システムの試験は初めてで、専用ハードウェアから、標準的なIT機器上で動くソフトウェア中心の信号システムへの移行を実際の運行環境で検証する。
■ロストック中央駅のトンネル区間で試験
シーメンス・モビリティとロストック市電(Rostocker Straßenbahn AG:RSAG)は9月10日、ロストック中央駅の地下を通る路面電車の2、3、5、6系統で「Signaling X」の試験運用を開始したと発表した。
同区間には、シーメンスの安全プラットフォーム「DS3」と標準IT機器を基盤とするソフトウェア定義連動装置が導入された。連動装置は、列車や路面電車の進路、信号、分岐器などを相互に制御し、競合する進路が同時に設定されるのを防ぐ安全上重要な設備である。
今回のプロジェクトでは、試験施設ではなく、実際の都市交通の運行環境でシステムを検証する。シンガポールの鉄道試験施設で行われた試験に続く段階となり、シーメンス・モビリティは、複雑な都市交通環境におけるソフトウェア定義信号技術の運用実績を積み上げる考えだ。
■信号ソフトウェアと専用機器を分離
Signaling Xの中核となる考え方は、安全上重要な連動装置のソフトウェアを、従来必要だった独自の専用機器から切り離すことにある。連動装置の処理を、市販されている標準的なIT機器であるCOTSサーバー上で実行できるようにする。
鉄道信号システムでは長期間にわたって設備を使用するため、専用ハードウェアの老朽化や部品供給の終了が、保守や更新を難しくする要因になる。ソフトウェアとハードウェアを分離すれば、特定の機器の製品寿命に左右されにくくなり、設備の更新や拡張、予備部品の管理を柔軟に行える可能性がある。
シーメンス・モビリティは、この構成によって既存の鉄道インフラを従来より容易かつ効率的に近代化できるとしている。こうした効果は同社が示す導入上の利点であり、ロストックでの試験では、実際の運行環境における運用性や保守性などを確認することになる。
■安全基盤「DS3」を採用
Signaling Xの技術基盤には、シーメンス・モビリティが2020年に導入した「DS3(Distributed Smart Safe System)」が使われる。DS3は、安全上重要な信号アプリケーションを標準サーバー上で稼働させるための、高可用性と冗長性を備えた実行基盤である。
DS3上の安全関連アプリケーションは、欧州の鉄道分野で用いられる安全度水準の最高段階であるCENELEC SIL 4の要件に対応する。認証対象となる安全機能を特定の専用サーバーに固定するのではなく、標準化されたIT基盤を利用できるようにすることで、信号設備のハードウェア依存を減らす狙いがある。
DS3を使ったクラウド対応連動装置は、2020年にオーストリアのアハウ駅で運用を開始した。シーメンスとオーストリア連邦鉄道は当時、COTSハードウェアを基盤とするデジタルSIL 4連動装置として初めて承認されたシステムだと発表している。
ロストックでの導入は、このアーキテクチャをドイツの都市公共交通で実装する初の取り組みとなる。幹線鉄道の駅での導入実績に加え、路面電車が走る都市交通の実運行環境で使用することで、適用範囲を広げる。
■運行の安全性とサイバーセキュリティも検証
シーメンス・モビリティの鉄道インフラ部門CEO、Marc Ludwigは、Signaling Xについて、信号技術を実際の都市運行環境に導入する初の事例であり、技術革新の迅速化、システム更新の簡素化、長期的な運用効率の向上につながる基盤になると説明した。
RSAGで鉄道電力設備チームを率いるDirk Glaunerは、都市交通の運営では鉄道運行に固有のリスクに加え、道路交通との近接が人と技術の双方に負担を与えると指摘した。そのうえで、運行の安全性向上につながる技術の試験と導入を支援する考えを示した。
信号処理を汎用的なIT基盤へ移す場合、安全機能だけでなく、重要インフラに求められるサイバーセキュリティの確保も重要になる。シーメンスは、DS3が冗長性の高い実行環境を提供し、ロストックの導入でも重要インフラ向けの高度なサイバーセキュリティ要件に対応するとしている。
■InnoTrans 2026でもデジタル鉄道技術を展示
シーメンス・モビリティは、9月22日から25日までベルリンで開催される鉄道技術見本市「InnoTrans 2026」で、Signaling Xを含むデジタル鉄道技術を展示する。
同社はホール27のブース230と屋外展示エリアに出展し、鉄道インフラ、車両、ソフトウェアを連携させるSiemens Xcelerator関連の製品・サービスを紹介する。展示の中心にはSignaling Xのほか、鉄道車両の状態監視や保守を支援するRailigent X、新型のソフトウェア定義機関車「Vectron X」などを据える。
ロストックで始まった試験運用は、標準IT機器とソフトウェアを中心とした信号システムを、ドイツの都市公共交通へ展開するための重要な実証となる。試験の結果や今後の導入計画については、現時点で具体的な公表時期は示されていない。
元記事: Siemens Runs Cloud Rail Signaling Under Live German Tram Passengers: InnoTrans Debut 11 Days Out
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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