【視点】中国EV各社、EV市場の減速で人型ロボットに成長活路―小鵬などが技術転用

小鵬汽車(XPeng)が開発した汎用人型ロボット「IRON」。2026年内に量産を始め、27年に市場投入する計画。(同社発表資料より)[写真拡大]
中国の電気自動車(EV)メーカーが、人型ロボット事業への進出を加速している。EV市場の競争激化や収益性の低下を背景に、小鵬汽車(XPeng)や小米(シャオミ)、浙江吉利控股集団(ジーリー)などが、知能化車両向けに開発した技術の新たな用途を模索している。
米調査会社カウンターポイント・リサーチのデータによると、2026年8月時点で、独自開発や投資、社内での事業育成を通じて人型ロボット分野に参入した自動車メーカーは世界で20社近くに上り、中国勢がその半数超を占めた。
カウンターポイントのケビン・リー副ディレクターはCNBCに対し、自動車メーカーの参入には、資本市場における「企業価値評価の物語」を組み替え、テクノロジー企業としての位置付けを強める狙いがあると指摘した。新たな成長の柱を築く目的もあるという。
なかでも小鵬汽車は大規模な投資に踏み切っている。同社のロボット事業は8月、9億ドル(約1380億円)を超える資金を調達した。資金調達後の企業価値は63億ドルを超えた。
資金調達はIDGキャピタルが主導し、高榕創投が参加した。騰訊控股(テンセント)と阿里巴巴集団(アリババグループ)も戦略投資家として加わった。
小鵬汽車は9月8日、人型ロボット「IRON」の新たな生産ラインを稼働させ、組み立てを終えたIRONが自律走行でラインから歩いて出る様子を公開した。中核工程の80%超を自動化し、量産に向けた生産体制を整えたとしている。
IRONは工場内の特定作業だけに用途を限定せず、幅広い場面での利用を想定した汎用型の人型ロボットとして開発されている。小鵬汽車は当初、自社の店舗や事業拠点に投入し、その後、中国国内と海外での販売を目指す。
他の自動車メーカーは異なる方法でロボット分野に参入している。蔚来汽車(NIO)のベンチャーキャピタル部門は、LimX DynamicsやAcorn Robotなどの人型ロボット企業に投資した。小米は自社工場で人型ロボットの試験を進めており、比亜迪(BYD)や浙江吉利控股集団も関連技術を模索している。
こうした動きの背景には、中国EV市場の販売成長の鈍化と激しい価格競争がある。フィッチ・レーティングスでアジア太平洋地域の企業格付け部門ディレクターを務めるジン・ヤン氏はCNBCに対し、EV向けに開発した技術を他の製品にも応用できるため、ロボット事業への多角化は「自然な戦略的動き」であるとの見方を示した。
人型ロボットと知能化車両は、バッテリーやモーター、半導体、センサー、AIソフトウエアなど多くの部品・技術を共有できる。中国の自動車メーカーは、すでに構築したサプライチェーンに加え、複雑な製品を大規模に生産してきた経験も持つ。
ジェフリーズのシニア調査アナリスト、シャオイー・レイ氏はCNBCに対し、小鵬汽車はモーターや半導体、スマート運転ソフトウエアの約85%を人型ロボットに転用できると説明した。
自動車メーカーは、自社の店舗や工場をロボットの試験場所として活用できる。外部顧客を確保する前から実環境で稼働させ、データを収集できる点も強みとなる。
中国企業は、立ち上がりつつある人型ロボット市場ですでに有力な地位を占めている。カウンターポイントによると、2025年の世界の人型ロボット販売額は5億ドルを超えた。売上高上位3社は中国企業の智元機器人(AgiBot)、宇樹科技(Unitree)、優必選科技(UBTECH)で、3社合計で世界市場の約56%を占めた。
一方、商用需要の確立はなお課題である。レイ氏は、ジェフリーズが調査対象とする自動車メーカーについて、確定した外部受注や、2027年の外部顧客・ロボット事業収入に関する明確な見通しは、まだ確認できていないと述べた。
中国のロボット業界では、政府の支援を受けた訓練施設が主要な買い手となる一方、民間企業への本格的な普及は初期段階にとどまっていると、英紙フィナンシャル・タイムズが8月に報じた。
宇樹科技の創業者兼最高経営責任者(CEO)、王興興氏も急速な商用化への過度な期待を戒めている。王氏は8月、人型ロボットが未知の環境でも音声や文章による指示だけで大半の作業を遂行できる「ChatGPTのような転換点」について、技術開発が速く進めば2〜3年、遅ければ5〜10年かかる可能性があると述べた。
技術面の壁も残る。レイ氏によると、スマート運転システム向けのソフトウエアを、歩行や物体操作、さまざまな身体作業を担うロボットにそのまま移植することはできない。
レイ氏は「本当の課題は、スマート運転システムに使われるアルゴリズムとソフトウエア基盤を、人型ロボットでも機能するようにすることだ」と述べ、自動車向け技術の転用だけでは解決できない難しさがあると指摘した。
小鵬汽車の人型ロボット事業は、試作機や実演の段階から生産ラインでの製造へと進んだ。今後は、自動車事業で培った量産能力をロボットに生かすとともに、自社拠点以外の顧客を獲得できるかが焦点となる。
※この記事はInternational Business Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
スポンサードリンク
