IFA 2026でAI家電が本格化、中国企業の存在感拡大でデータ管理も焦点に

(Ifa-berlin.com)[写真拡大]
ベルリンで開催されたIFA 2026は、9月8日に5日間の日程を終えた。会場では、AIを単独の目玉機能として加えるのではなく、利用者や周囲の状況を認識し、製品の動作を調整するための基盤として組み込む動きが鮮明になった。
一方、中国本土からの出展企業は過去最多の932社と報じられ、約1900社規模の出展者のほぼ半数を占めた。出展社数がそのまま市場シェアや製品数を表すわけではないが、中国メーカーが家電、スマートホーム、モバイル機器、電気自動車、ロボットで存在感を強めていることは、今回のIFAを特徴づける要素となった。
■AIは付加機能から製品設計の基盤へ
IFA 2026には2000を超えるブランドが51カ国から参加した。AMDのローカルAI向けプロセッサ、Dysonのカメラ搭載電動歯ブラシ、LG Electronicsのスマートホーム向けAIエージェント、Mieleの画像認識対応食器洗い機など、AIを製品の中核に据えた展示が相次いだ。
これらに共通するのは、利用者からの命令に応答するだけでなく、カメラやセンサー、利用履歴などから得た情報を処理し、次の動作を提案または自動選択する構造である。AIという言葉が幅広く使われているため個々の機能と有効性を見極める必要はあるものの、認識、判断、制御を一体化する方向は、家電やPCの主要な設計潮流になりつつある。
接続機能を備えた製品では、どの情報を端末内で処理し、何をクラウドへ送信するのかも重要になる。製品を選ぶ際には、AI機能の有無だけでなく、アカウント作成やクラウド接続が必須か、収集されるデータの種類、保存期間、共有先、削除方法、セキュリティ更新の方針を確認する必要がある。
■AMD、最大192GBのメモリで大規模モデルのローカル実行に対応
AMDは9月4日のオープニング基調講演で、個人や企業が使用する機器上でAIを実行する「パーソナルAI」の方向性を示した。Computing and Graphics Group担当シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーのJack Huynhが、「The Era of Personal AI: The Future of Imagination」と題して講演した。
Ryzen AI Max PRO 400シリーズは、最大16基のZen 5 CPUコア、最大40基のRDNA 3.5コンピュートユニット、最大55TOPSのXDNA 2 NPUを組み合わせる。最上位構成では最大192GBのユニファイドメモリを搭載でき、最大160GBを内蔵GPU用メモリとして割り当てられる。
AMDは、このメモリ容量によって3000億パラメータを超える大規模言語モデルを単一システム上で扱えるとしている。実際に必要となる容量や速度はモデルの量子化方式、コンテキスト長、使用するソフトウェアなどに左右されるため、パラメータ数だけで実用性能が決まるわけではない。それでも、従来より大きなモデルをクラウドへ送らずに処理できる選択肢が広がることは、機密文書や社内データを扱う用途で意味を持つ。
ローカル処理は、すべてのデータ送信を自動的に防ぐものではない。OS、アプリ、同期機能、外部サービスが別途通信する場合があるため、機密情報を扱う際にはシステム全体の設定とデータフローを確認する必要がある。
■Dyson CameraJet、日本では7万9800円
Dysonは、カメラとフロッサーを組み合わせた電動歯ブラシ「Dyson CameraJet」を発表した。日本では「Dyson CameraJet フロッサー付き電動歯ブラシ」の名称で税込7万9800円と案内され、9月11日以降の順次発送が予定されている。
ブラシヘッド付近に10万ピクセルのマクロカメラを搭載し、毎秒28枚の画像を解析する。DysonがGap Optical Targetingと呼ぶ機械学習システムが歯間を検出すると、12.5mlのタンクから円すい状のジェット水流を0.1秒以内に噴射する。ブラッシングと歯間洗浄を同時に進める仕組みで、MyDysonアプリでは口腔内の映像や磨いた範囲を確認できる。
機械学習システムには、開発中に収集した47万枚以上の歯の画像が使われた。製品全体は約1600万行のコードで制御され、開発には6年を要したという。シンガポール国立大学歯学部との共同研究では、性能評価に使う人工歯垢も開発した。
Dysonは、主要な音波式電動歯ブラシとの比較で最大69%多くの歯垢を除去したとしている。この数値は同社の試験条件に基づくもので、すべての利用者や使用環境で同じ結果を保証するものではない。同社によると、カメラの画像は本体にもクラウドにも保存または共有されず、Dysonや第三者はアクセスできない設計である。
■LGはチャット型AIで家電とサービスを連携
LG Electronicsは、接続された家電やサービスを連携させるAI Home構想を展示した。ブースの入口には、LG CLOiDが指揮者を務める16メートル×4メートルのキネティックLED展示「LG AI Orchestra」を設置し、家電、テレビ、空調、ロボットを一つのエコシステムとして見せた。
中心となる「ThinQ Claw」は、ThinQ ONと連携するテキストチャット型のAIエージェントである。利用者の予定、日常の習慣、家庭内の環境、家電の利用状況などを踏まえ、関連する機器やサービスの操作を提案する。
LGが示した利用例には、来客に合わせた調理家電の準備、帰宅前の室温や空気質の確認、利用者の好みに基づく家電操作などがある。単発の命令を実行する従来型の音声アシスタントから、複数の情報を組み合わせて家庭内の機器を調整する仕組みへの移行を目指している。
ThinQ ClawはIFAで公開された段階では概念実証中で、韓国では年内の正式提供に向けたクローズドベータテストが計画されている。日本を含む各地域での提供時期、対応機器、料金などは、地域ごとの正式発表を待つ必要がある。
■Miele G8 Diamond、カメラで食器を認識
ドイツの家電メーカーMieleは、新世代食器洗い機の最上位モデル「G8 Diamond」を公開した。内蔵カメラと画像認識を利用するAutoVisionによって、庫内の充填率や食器の種類を判別し、洗浄工程や追加機能を調整する。
例えば、鍋を認識した場合は洗浄強度を高め、ボトルには内部洗浄に適した設定を選ぶ。プラスチック製品を検出した場合は、温風乾燥システムExcellentDryによって乾燥工程を調整する。洗剤は既存のAutoDosとPowerDiskによって自動投入される。
アプリでは、一定の充填率に達してから運転することや、指定した時刻以降に開始することなどの条件を設定できる。電気料金と連動した運転については、利用地域の料金制度や対応サービスに左右される。
G8 Diamondは2027年4月にドイツ、オーストリア、スイスで発売される予定で、価格は発表されていない。日本での発売時期や価格も明らかになっていない。食器や素材の認識精度を含む実使用時の性能は、発売後の検証を待つことになる。
■Samsungは会場外へ、Xiaomiは初出展
Samsung Electronicsは、Messe Berlinのメイン展示フロアに従来のような大規模ブースを設けず、ベルリン中心部のHumboldt Carréに展示を移した。同社は9月2日から、テレビ、家電、スマートフォン、ウェアラブル機器を組み合わせたAIエコシステムを紹介した。
SamsungがIFAに初参加した1991年以来、パンデミックの影響を受けた年を除けば、メイン会場に大規模な一般向け展示を設けない初めての開催となった。一方で、Messe Berlin内のIFA Creator Hubではメインスポンサーを務め、IFAへの参加自体を取りやめたわけではない。
中国のXiaomiはIFAに初出展し、3300平方メートルを超える展示区画に、スマートフォン、家電、スマートホーム製品、ロボット、電気自動車など380を超える製品や技術を集めた。
IFA会場では、折りたたみスマートフォン「Xiaomi 18 Fold」を正式発表前にガラスケース内で公開した。その後、Xiaomiは9月7日に中国で正式発表し、自社開発SoC「XRING O3」、5.38インチの外側画面、7.58インチの内側画面、6000mAhのバッテリーを搭載すると明らかにした。中国では9月10日に1万999元から販売を開始する予定だが、日本での発売は確認されていない。
XiaomiはSU7 UltraとSU7 Maxも展示し、2027年の欧州市場参入を目指す方針を示した。スマートホームブランドのMijiaについても、欧州での展開を拡大する計画を打ち出している。
■中国企業932社、出展規模と製品リスクは分けて考える
IFA 2026では、中国本土から932社が出展したと報じられている。前年の700社超から増加し、過去最多となった。中国企業は家電やテレビだけでなく、半導体、スマートフォン、電気自動車、ロボットへと展示分野を広げている。
一方、932社という数字は出展企業の国別構成であり、販売されるAI家電の半数が中国企業の管理下にあることや、会場の製品の半数が中国製であることを意味しない。企業ごとの展示規模、製品数、市場シェア、クラウドサービスの運営主体はそれぞれ異なるため、出展社数から個々の製品のデータ管理体制を推定することはできない。
中国の国家情報法第7条は、組織と国民に対し、法に従って国家情報活動を支持、援助、協力するよう求めている。この規定は海外で安全保障上の懸念として取り上げられてきたが、具体的な適用範囲や、海外子会社、国外サーバー上のデータに対してどのように執行されるかについては法的な議論がある。中国企業の製品を使えば、中国政府が保存場所にかかわらずすべてのデータへ自動的にアクセスできると断定することはできない。
また、EU市場で接続製品や関連サービスを提供する事業者には、企業の本国だけでなく、GDPRやEUデータ法など欧州側の規則も適用される。EUデータ法は、EU市場に投入される接続製品について、利用によって生成されるデータへのアクセスや第三者との共有に関する権利を利用者に認めている。
製品選びでは、企業の国籍だけで一律に判断するのではなく、製品別のプライバシー通知、データ管理者、保存地域、国外移転の条件、政府機関からの要請への対応方針、セキュリティ更新期間、第三者認証や監査の有無を確認することが重要になる。
■ヒューマノイドロボットがランウェイに登場
9月5日にはCreator Stageで「Robots on the Runway」が開かれ、複数企業のヒューマノイドロボットが歩行、ダンス、アクロバットなどを披露した。Unitree、AgiBot、DEEP Robotics、EngineAI、Dobot Robot、Astrall Dynamics、AiMOGAなどが参加した。
展示はヒューマノイドロボットの運動性能を視覚的に伝える催しであると同時に、中国メーカーがこの分野で量産と海外展開を急いでいる状況を示した。動作デモの完成度だけで、工場や店舗、家庭での安全性、耐久性、保守性を評価することはできないが、ロボットが研究展示から商用製品へ移行しつつあることを印象づけた。
杭州を拠点とするUnitreeは、8月に上海証券取引所の科創板への新規株式公開価格を1株150.8元に設定した。公開価格に基づく評価額は約610億元で、DeepSeekも戦略投資家に名を連ねた。
ドイツのNEURA Roboticsは、6月に最大14億ドルのシリーズC資金調達を発表した。出資者にはTether、Qualcomm Technologies、Amazon、NVIDIA、Bosch、Schaeffler、欧州投資銀行などが含まれる。同社はIFAで、AI、センサー、エッジコンピューティング、ロボットを連携させる「Physical AI」の構想を説明した。
■購入時は機能とデータフローを同時に確認
IFA 2026が示したのは、AIがディスプレイ上の生成機能にとどまらず、カメラやセンサーから入力を受け、家電や機器を実際に動かす段階へ進んでいることだ。歯間を認識して水流を噴射する歯ブラシ、庫内を撮影して洗浄工程を選ぶ食器洗い機、家庭の予定や環境に合わせて家電を連携させるエージェントは、その具体例である。
こうした製品では、便利さとデータ処理が表裏一体になる。購入前には、その機能が端末内で完結するのか、クラウド接続を必要とするのか、オフライン時にも基本機能を利用できるのかを確認したい。自動化の範囲、誤認識時に利用者が介入できるか、サービス終了後も製品を使い続けられるかも重要な判断材料になる。
IFA 2026では中国企業の出展拡大が目立ったが、データ管理の問題は中国製品だけに限られない。接続された家電や車両、ロボットでは、メーカーを問わず継続的なデータ収集が発生し得る。性能、価格、利便性に加え、データの流れ、適用される規則、メーカーの説明責任まで含めて比較することが、AI家電時代の製品選びに求められる。
元記事: IFA 2026’s Record Chinese Share Puts Half Your AI Appliances Under Beijing’s Intelligence Law
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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