SamsungとCanvas、BACCH 3D搭載の一体型OLED「The HiFi S99H」を発表

2026年9月4日、IFA Berlin 2026に出展したSamsungとCanvas HiFiの展示。(TechTimes)[写真拡大]
Samsung ElectronicsとデンマークのCanvas HiFiは、OLEDテレビとHi-Fiオーディオを家具調のデザインで一体化した「The HiFi S99H」をIFA 2026で披露した。Princeton Universityからライセンスを受けたクロストークキャンセル技術「BACCH 3D」を採用し、近接配置した2基のスピーカーから広がりと奥行きのある音像を作り出す。
標準のCANVASオーディオを組み合わせたモデルは、2026年10月から一部のCanvas Galleryショールームで販売される予定だ。欧州価格は7999ユーロからで、米国では7999ドルからと案内されている。7999ドルは1ドル=156円で換算すると約125万円となる。日本での発売時期や価格は明らかになっていない。
■近接スピーカーのクロストークを抑えるBACCH 3D
The HiFi S99Hは、Samsungの2026年フラッグシップOLEDテレビとCanvasのステレオシステムを一つの筐体にまとめた製品だ。55、65、77、83インチの4サイズを用意し、画面下のオーディオ部から側面、上部まで連続する木製ルーバーで囲んでいる。テレビと外付けオーディオを単に上下に並べるのではなく、室内に置く一つの家具として構成した点が特徴となる。
音響処理には、Princeton UniversityのEdgar Choueiri教授が開発したBACCHフィルターを使う。BACCHは「Band-Assembled Crosstalk Cancellation Hierarchy」の略称で、2基のスピーカーを使った立体音響再生を目的とするクロストークキャンセル技術である。
通常のステレオ再生では、左スピーカーの音は左耳だけでなく右耳にも届き、右スピーカーの音も両方の耳に届く。このクロストークによって、音の方向を判断する手掛かりとなる左右の耳への到達時間差や音圧差が変化する。
BACCHは、各スピーカーから反対側チャンネルのクロストークを相殺する信号を出すことで、左右の耳に届く信号の分離を改善する。2基のスピーカーが近接する一体型オーディオでも、通常のステレオシステムに近い音場の広がりや奥行きを引き出すという発想だ。
Princeton Universityの3D3A Laboratoryは、従来のクロストークキャンセルで問題になっていた音色の変化を抑えながら、クロストークを低減するようBACCHフィルターを設計したとしている。CANVASでは、Analog Devices製クアッドコアDSPによるリニアフェーズFIR処理と組み合わせている。
■音像の効果はリスナーの位置で変化
クロストークキャンセルによる音像は、リスナーとスピーカーの位置関係に左右される。Princeton Universityの技術資料でも、高精度なバイノーラル情報を再現するには、リスナーの頭部をスイートスポットと呼ばれる範囲に置く必要があると説明されている。
The HiFi S99Hには、カメラで頭部位置を検出してスイートスポットを追従させる機能は案内されていない。このため、BACCH 3Dの効果は中央の適切な位置で聴くリスナーに最も明瞭に現れ、位置が外れるにつれて立体的な音像が弱まる。
これは音声そのものが中央の1人にしか聞こえないという意味ではない。複数人でも通常のステレオ音声を聴けるが、クロストークキャンセルによる音場の広がりや定位を最も得やすいのは、想定されたリスニング位置となる。
■フラッグシップOLEDと250Wのステレオシステムを統合
The HiFi S99HのOLEDテレビ部分は、3840×2160ピクセルの4Kパネル、NQ4 AI Gen3 Processor、OLED HDR Pro、Glare Free、4K AI Upscaling Proなどを備える。最大165Hzの可変リフレッシュレートにも対応し、映画やテレビ番組だけでなくPCゲームでの利用も想定する。
Samsungの2026年OLEDテレビは地域によって製品名が異なり、米国ではフラッグシップモデルが「S95H」として展開されている。The HiFi S99Hは、CanvasがSamsungとの共同製品に用いている名称である。
標準CANVASオーディオは、165mmのSB Acoustics製ペーパーコーンウーファー2基、29mmのシルクドームツイーター2基、パッシブラジエーター2基を搭載する。アンプは4チャンネルのClass D構成で、実出力は合計250Wとされる。
デジタル/アナログ変換にはBurr-Brown製DACを採用し、最大24ビット/192kHzに対応する。Analog Devices製クアッドコアDSPが、リニアフェーズFIRクロスオーバー、室内音響補正、BACCH 3Dの信号処理を担う。
65、77、83インチでは、より大型の「CANVAS L」も選択できる。CanvasはCANVAS Lについて従来型システムの1500W級に相当する音響性能を掲げているが、これは実際のアンプ出力を示す数値ではない。発表時点では、The HiFi S99H向けCANVAS Lの詳細仕様は公表されておらず、発売は2026年末にかけて予定されている。55インチモデルは標準CANVASのみとなる。
■Dolby Atmosとは異なるステレオ中心の構成
標準CANVASは2チャンネルのステレオシステムで、Dolby Atmosのオブジェクトベース音声を個別のサラウンドチャンネルとしてデコードする構成ではない。テレビとはHDMI eARCで接続するが、基本的な再生はPCMステレオとなる。
多数のスピーカーで前後や高さ方向のチャンネルを構成するDolby Atmos対応システムに対し、BACCH 3Dは2基のスピーカーから左右の耳に届く信号を制御し、既存のステレオ音源が持つ空間情報を引き出す。両者は立体感のある再生を目指しながら、異なる情報処理構造を採用している。
CanvasはIFA 2026に合わせ、BACCH 3Dのフロントユニットにサラウンド用スピーカーを追加する拡張システムも公開した。Almando InMedioプロセッサーとSystem Audio Silverbackアクティブスピーカーを組み合わせ、サラウンド、リア、ハイトチャンネルを加える構成だ。対応機器は2026年後半から順次提供される予定で、価格は発表されていない。
■室内音響補正とストリーミングに対応
室内音響補正はCANVASアプリから利用できる。iPhoneの内蔵マイクのほか、iPhoneとAndroidの両方で利用できる別売りのZen Micにも対応する。
Android版アプリについては、2025年に掲載された複数の製品レビューで、Wi-Fi設定のクラッシュや室内音響補正が正常に動作しない問題が報告されていた。一方、Canvasは現在、iOSとAndroidの両方を室内音響補正の対応環境として案内しており、Androidアプリも2026年8月に更新されている。購入時には、使用する端末でセットアップと補正機能が利用できるか確認する必要がある。
接続端子はHDMI eARC、TOSLINK光デジタル入力、アナログ入力を備える。Apple AirPlay 2、Google Cast、Roon、TIDAL、Spotify Connect、DLNAにも対応し、テレビを使用しないときは単体のネットワークオーディオシステムとして音楽を再生できる。
壁掛け金具または固定式フロアスタンドが付属する。アルミニウムまたはブラック仕上げの回転式フロアスタンドは別売りとなる。
■Bang & Olufsenとのデザインを巡る対立
CanvasとSamsungが2025年に発表した「The HiFi Frame」を巡っては、Bang & Olufsenが自社の一体型テレビ「Beovision Contour」とデザインが類似していると主張している。
Bang & Olufsen側はCanvasに対し、製品の市場撤回、在庫の廃棄、金銭的補償を求め、2025年10月1日までに応じない場合は法的措置を取ると通知した。Canvasは要求を拒否し、自社のデザインは独自に開発したものだと反論している。
Canvas側が意見を求めた工業デザイナーのTimothy Jacob Jensenは、両製品には比率、素材、造形、全体的な表現に相違があり、Bang & Olufsenの主張は支持できないとの見解を示した。この見解はCanvas側が依頼した評価であり、裁判所の判断ではない。
2025年12月には、Bang & OlufsenがCanvasの親会社に対して木製ルーバーのデザインを巡る新たな法的手続きを進めたことも報じられた。The HiFi S99Hの発表時点で、The HiFi FrameやThe HiFi S99Hの販売を差し止める確定的な司法判断は確認されていない。
■2026年10月から一部地域で販売
標準CANVASを搭載するThe HiFi S99Hは、2026年10月から一部のCanvas Galleryショールームで販売される予定だ。欧州での価格は7999ユーロから、米国では7999ドルからとされ、画面サイズやオーディオ構成によって価格が変わる。
標準モデルの55、65、77、83インチを先行して展開し、CANVAS Lを組み合わせた65、77、83インチモデルは2026年末にかけて追加する計画である。日本での販売、価格、サポート体制については発表されていない。
元記事: Samsung HiFi S99H Brings Princeton 3D Audio to OLED: Works Best for One Listener
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
スポンサードリンク
