IFA 2026でパワードスーツが多様化、フルレッグ型やモジュール型など新製品

2026年9月4日、IFA Berlin 2026で展示された外骨格「Sumbu S3 Ultra」 (TechTimes)[写真拡大]
消費者向け外骨格(パワードスーツ)の設計が多様化している。IFA Berlin 2026では、股関節と膝関節を一体制御するフルレッグ型、必要な部位を選べるモジュール型、高齢者の日常歩行を想定した製品が披露された。
Sumbuが2026年1月のCESで発表したS3シリーズも含め、各社は支援する関節、着脱性、制御ソフトウェア、安全機構などで異なる方向性を打ち出している。一方、消費エネルギーや身体的負担の低減率などは測定条件が製品ごとに異なるため、数値だけで単純に比較することは難しい。
■Sumbuはデュアルベクター方式を採用
Sumbuは2026年1月3日、CES 2026で一般消費者向け外骨格「S3」「S3 Pro」「S3 Ultra」を発表した。価格はS3が1199米ドル、S3 Proが1499米ドル、S3 Ultraが1999米ドルで、同社は6月から販売を開始すると案内していた。
S3シリーズの特徴は、Sumbuが「デュアルベクター」と呼ぶ補助方向の切り替え機構にある。歩行や登坂などの状況に応じ、前方と後方への補助モードを切り替える構成で、階段、坂道、歩行、ランニング、登山、サイクリングなど複数の動作への対応をうたう。
駆動部には遊星歯車機構を採用したモーターを用いる。姿勢や歩行状態をセンサーで捉え、動作に応じて補助モードを切り替える制御機能も備える。Sumbuによると、S3シリーズは利用者の動きや地形を分析し、運動を支援する力の向きと大きさを調整する。
同社の創業者兼CEOであるMartin Hsuは発表時、「人間中心の設計アプローチにより、利用者のニーズに適応する消費者向け外骨格という選択肢を提供する。デュアルベクター駆動は、上り坂、階段、サイクリングなどに合わせてパワーモードを自動調整する」と説明している。
SumbuはS3シリーズを「世界初のデュアルベクター式消費者向け外骨格」と位置付ける。ただし、消費者が購入できる屋外活動向け外骨格という製品分野には、Sumbuの発表以前からHypershell Xシリーズなどが参入していた。
■4関節を一体制御するHypershell Halo
Hypershellは9月3日、両脚の股関節と膝関節に配置した計4つの電動関節を協調制御するフルレッグ外骨格「Hypershell Halo」を発表した。腰から大腿部、膝、下腿部まで連続する炭素繊維製の荷重支持構造を採用し、複数の駆動部を一つのシステムとして動かす。
4モーターの「HyperDrive Pro」は、両脚合計で最大1490Wのピーク出力をうたう。製品重量は2.6kgで、推進、荷重支持、下り坂での制御、着地時の衝撃緩和などを想定している。
動作制御には「HyperIntuition 2.0」を採用する。複数のニューラルネットワークを組み合わせ、利用者の動作、地形、荷重の変化を分析し、4つの関節に配分する補助力を調整する仕組みだ。人の動きと外骨格による補助を時間的に合わせる制御は、ウェアラブルロボットの使いやすさを左右する重要な要素になる。
HypershellのCEOであるKelvin Sunは、「既存の股関節用外骨格に電動膝関節を単に追加したのではない。4つの電動関節が利用者と一体になって動けるよう、下半身全体を軸にアーキテクチャ、電力システム、制御機能を再設計した」と説明している。
Haloの価格は2299米ドル、2199英ポンド、2299ユーロである。初期ロットとなる200台の「Origin Edition」の予約を受け付け、2026年11月に一般販売と配送を始める予定だ。
HypershellはHalo以前にも、股関節周辺を支援するXシリーズを販売してきた。従来製品が腰部を中心とする比較的コンパクトな構成だったのに対し、Haloは膝まで駆動範囲を広げた点が大きな違いとなる。
■交換式モジュールを採用するAscentiz
AscentizはIFA 2026で、共通の「Exo-Belt」に股関節用のHモジュールと膝関節用のKモジュールを取り付けるモジュール型外骨格を展示した。Exo-Beltにはバッテリー、制御装置、主要なアルゴリズムを収め、用途に応じてH、K、または両方を組み合わせる。
Hモジュールは歩行、登坂、ランニングなどで腰から脚を前方や上方へ動かす支援を担う。Kモジュールは階段や坂道の上り下りなど、膝にかかる荷重や衝撃が増える場面で補助力や制動力を加える設計である。
各モジュールは「AZ-Lock」と呼ばれるクイックリリース構造を介して着脱する。すべての駆動部を固定したフルレッグ型とは異なり、利用目的に合わせて支援する関節を選べることが特徴となる。
制御基盤となる「BodyOS」は、装着されたモジュールを認識し、複数関節の支援を協調させる。AscentizはBodyOSを開発者向けプラットフォームとして段階的に公開し、ソフトウェアに加えて、センサーや外部機器、新しいハードウェアモジュールを接続できる環境の構築を進めている。
IFAで示されたユーロ建て価格は、股関節用のH Proが1599ユーロ、H Ultraが2299ユーロ、膝関節用のK Proが2399ユーロ、K Ultraが2999ユーロである。HとKを組み合わせたPro Comboは3599ユーロ、Ultra Comboは3999ユーロとなる。
Hシリーズはすでに同社のオンラインストアで販売されている。一方、KシリーズとH+K構成については価格が示されているものの、最終的な発売日はIFA開幕時点で発表されていない。
■高齢者の歩行支援を想定したAlpWalk S1
AlpWalkの「S1」は、高齢者の日常的な移動支援を主な用途として掲げる股関節支援型外骨格である。買い物や散歩、階段の上り下りなどを想定し、性能競争よりも軽量性、歩行への追従、安全機構に重点を置く。
S1は関節角度を0.1度単位で制御する機能と、関節が所定の可動範囲を超えることを防ぐ多層の機械式ストッパーを備える。オプションとしてU字型の転倒保護エアバッグも用意する。
歩行状態を認識する「Gentle-Pace」アルゴリズムにより、平地、上り坂、下り坂、階段などに応じて補助を調整する。AlpWalkは99%の歩行状態認識率と、歩行時のエネルギー消費を最大35%低減できるとしているが、いずれも同社が示す測定結果である。
製品重量は2.4kg、最大出力は800Wで、交換可能な4600mAhバッテリーを搭載する。航続距離は最大20kmとされるが、実際の使用時間や距離は補助レベル、歩行速度、地形、気温などによって変わる。
IFA開幕直前のAlpWalk公式ストアでは、S1の価格は1099米ドルと表示され、配送予定は2カ月以内と案内されていた。したがって、価格未定の予約段階ではなく、オンラインで注文可能な製品として掲載されている。
■外骨格の設計が多様化
IFA 2026で示された製品は、同じ消費者向け外骨格でも、支援する身体部位や想定用途が大きく異なる。
Hypershell Haloは股関節と膝関節を一体で支援し、不整地、階段、登坂、下り坂など幅広い動作への対応を目指す。Ascentizは共通のベルトに必要な関節モジュールを取り付けることで、構成の変更や将来の拡張を重視する。AlpWalk S1は日常歩行を主眼に置き、軽量性や安全機構を前面に出している。
SumbuのS3シリーズは、前方と後方への補助方向を動作に応じて切り替える方式を採用する。膝までを直接駆動するHaloとは構造が異なり、腰部を中心とする比較的軽量な構成で、複数の移動場面に対応しようとしている。
この違いは、単なるモーター出力の大小ではなく、人のどの動作を、どの関節から、どのように支援するかという設計判断を反映している。利用者にとっては、自分が想定する地形や活動に必要な支援と、重量、装着性、価格のバランスが選択の基準になる。
■メーカー公表値は条件を確認する必要
各社は、身体的負担やエネルギー消費の低減率、歩行状態の認識率、応答時間などを公表している。ただし、測定対象者、歩行速度、路面、傾斜、補助モードなどの条件が異なれば、結果も変化する。
Hypershellは2025年12月、消費者向け外骨格の性能と安全性を比較するためのホワイトペーパーを公表した。酸素摂取量、心拍数、筋電図、トルク、バッテリー持続時間などについて、再現可能な測定方法を整備する必要があると提案している。
同ホワイトペーパーには、検査・認証企業SGSが確認したHypershell X Ultraの試験結果も含まれる。一方、この枠組みは業界共通の正式な規格ではなく、外骨格メーカーや標準化団体などに共通基準の策定を呼び掛ける提案という位置付けである。
このため、異なるメーカーが掲げる「20%負担軽減」「35%エネルギー低減」といった数値を、そのまま横並びにして優劣を判断することはできない。購入時には、試験条件、第三者による確認の有無、保証、返品条件、修理体制、ソフトウェア更新なども確認する必要がある。
■仕様より利用目的との適合が重要に
フルレッグ型は複数の関節を支援できる反面、構造が複雑になり、重量や価格も増えやすい。モジュール型は利用場面に応じて構成を変えられる一方、複数モジュールを組み合わせると価格が上昇する。
腰部を中心とする製品は比較的軽く収納しやすいが、膝を直接駆動する製品とは支援できる範囲が異なる。高齢者向けを掲げる製品についても、転倒防止やリハビリテーション上の効果を意味するとは限らず、メーカーが想定する用途と安全上の注意を確認することが欠かせない。
IFA 2026では、消費者向け外骨格が単一の形へ収束するのではなく、フルレッグ一体型、交換式モジュール型、軽量な股関節支援型などへ分かれつつあることが示された。
今後の競争では、ピーク出力や航続距離だけでなく、装着のしやすさ、動作への追従性、安全性、耐久性、修理体制、制御ソフトウェアの継続的な更新が重要になる。各方式がどの利用者と用途に定着するかは、製品の普及と実使用データの蓄積によって次第に明らかになるだろう。
元記事: Consumer Exoskeleton Race at IFA 2026: Three Rival Designs vs Sumbu’s Shipped Product
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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