土星の南極域に巨大な「10角形」の大気波、アマチュア天文家が発見に貢献

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土星の南極域を取り巻く巨大な10角形の大気波「デカゴン」が、地上観測とハッブル宇宙望遠鏡の画像から確認された。土星の南半球で大規模かつ規則的な多角形のジェット気流パターンが確認されたのは初めてである。北極で40年以上観測されてきた6角形とは、形だけでなく移動や変化の仕方も異なっており、巨大惑星の大気に多角形の波が生じる仕組みを探る新たな手掛かりとなる。
■アマチュア天文家の観測が発見の端緒に
スペインのバスク大学のAgustín Sánchez-Lavegaらによる国際研究チームが、2026年9月2日付で学術誌「Science Advances」に研究成果を発表した。10角形は南緯約58~63度に広がり、強い東向きのジェット気流に伴って形成されている。
発見の端緒となったのは、世界各地の観測者が撮影した地上画像である。バスク大学が運営する惑星画像データベース「Planetary Virtual Observatory and Laboratory(PVOL)」に寄せられた2024年の画像から、Sánchez-Lavegaとアマチュア天文家のTrevor Barry、Jean-Paul Ogerが、土星の南極域に沿って波打つ淡い帯を見つけた。2025年の地上画像では、10角形を思わせる輪郭がさらに明瞭になった。
これを受けて研究チームがハッブル宇宙望遠鏡の観測記録を調べたところ、2023年の画像にも輪郭の弱い10角形が写っていた。2024年には辺と頂点が見やすくなり、2025年8~9月の画像では10個の頂点が明瞭に確認された。ただし、すべての頂点が同じ鮮明さで現れているわけではなく、場所によってコントラストに差がある。
ハッブルの画像は、外惑星の大気を毎年継続して観測する「Outer Planet Atmospheres Legacy(OPAL)」プログラムで撮影された。複数の波長帯を用いることで異なる高度の雲やエアロゾルを捉えられ、10角形に対応するパターンが少なくとも気圧10ミリバールから2バールに及ぶ広い高度範囲に現れていることが示された。
土星の南北には似たジェット気流系があるため、研究チームは1990年以来、北極の6角形に対応する構造を南半球で探してきた。2004~2017年に土星を周回した探査機カッシーニの画像からは、今回のような長期間続く10角形は確認されていない。
■ジェット気流に沿って動く10角形
土星は約10時間40分で1回転するほど自転が速く、その大気には東向きと西向きの強いジェット気流が緯度方向に並んでいる。こうした回転流体では、渦位を保とうとする性質などによって、流れが大規模に蛇行するロスビー波が生じる。
土星の北極付近にある6角形は、東向きのジェット気流に捕捉された大規模な波として説明されてきた。南半球の10角形にも、強いジェット気流に沿った波の蛇行という共通構造がある。
研究チームの測定によると、10角形の中心的なパターンは南緯約63度にあり、経度方向に測った隣接する頂点間の平均波長は1万6782kmだった。緯度方向には頂点と谷の間で約2645kmの振幅がある。
10角形は、土星の電波観測から定められた基準自転系に対して秒速約2.5mで東へ移動している。南緯60.5度を中心とするジェット気流の最大風速は秒速約116mであり、波のパターンは周囲のジェット気流よりも大幅に遅い。
さらに、10個の頂点は一定速度で移動するだけでなく、平均約32.5日の周期で経度方向に振動していた。振幅は平均4.6度、最大8.4度に達する。この複雑な動きは、土星の基準自転系に対してほぼ静止している北極の6角形では確認されていない特徴である。
■北極の6角形とは異なる変化
北極の6角形は、ボイジャー探査機が1980~1981年に撮影して以来、44年以上にわたって観測されてきた。南極域の10角形は、2023年から2025年にかけて辺や頂点が次第に明瞭になっており、現在も変化を続けている大気現象とみられる。
NASAゴダード宇宙飛行センターでOPALプログラムの主任研究員を務める共著者のAmy Simonは、「北極の6角形は、40年以上にわたって観測するたびに存在していた。今回の特徴は異なり、強まっているように見えるため、巨大な大気パターンが発達する様子を捉える貴重な機会になる」と説明している。
ただ、10角形が実際にいつ形成されたのかは分かっていない。土星の自転軸の傾きにより、南半球は2012年半ばから地球から観測しにくくなり、2023年になって再び見えるようになった。カッシーニの運用が2017年に終了して以降、土星を周回する探査機もないため、この観測空白期に形成が始まった可能性がある。
■近くの高気圧性の渦が関与した可能性
10角形のすぐ北側にあたる南緯約55度では、直径約4000kmの高気圧性の渦が2023年から2025年にかけて観測された。研究チームは、この渦に近い側で10角形の頂点が特に明瞭で、反対側では輪郭が不鮮明になる傾向を確認している。
浅水モデルを使ったシミュレーションでは、ジェット気流の頂点付近に周期的な擾乱が加わった場合や、近くにある高気圧性の渦の作用を受けた場合に、10個の頂点を持つ波が形成され得ることが示された。研究チームは、10角形がジェット気流の湾曲によって南北方向に閉じ込められ、高度方向にも一定の範囲に捕捉された大規模な蛇行波である可能性を挙げている。
一方、観測期間はまだ短く、高気圧性の渦が形成の引き金になったかどうかや、10角形が長期間維持されるかは判明していない。北極の6角形と同じように安定する場合もあれば、変化を続ける一過性の現象となる可能性もある。
■巨大惑星の大気を理解する手掛かりに
ロスビー波は地球の大気や海洋にも存在し、大規模な気流や海流の蛇行に関係している。陸地や海洋の影響を受ける地球に対し、土星は固体表面を持たず、高速で自転する巨大惑星である。環境の異なる惑星で同じ種類の流体力学的な波を比較することは、回転する大気でジェット気流や大規模波動が形成される仕組みを理解する手掛かりになる。
今回の発見は、土星の北極にある6角形が、同惑星でまったく孤立した現象ではないことを示した。一方で、南半球の10角形は辺の数、移動速度、頂点の振動、観測期間などが北極の6角形とは異なる。両者の比較により、ジェット気流の速度や湾曲、大気の鉛直構造、周辺の渦が多角形の波の形や安定性にどう影響するかを検討できる。
木星、天王星、海王星にも強いジェット気流が存在するが、同様の規則的な多角形の波は確認されていない。土星で異なる特徴を持つ多角形が南北に見つかったことは、外惑星の極域を継続的に観測する意義を改めて示している。
■ハッブルとウェッブ宇宙望遠鏡で追跡へ
研究成果は2026年9月7日、欧州惑星科学会議「EPSC 2026」でも発表される予定である。研究チームはハッブルによる継続観測に加え、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の赤外線観測や数値モデルを用いて、10角形の形成過程や鉛直構造、継続期間を調べる方針だ。
カリフォルニア大学バークレー校の共著者Michael Wongは、OPALによる発見の多くが単独の観測ではなく、長年蓄積されたデータに基づいていると説明する。今回も地上の観測者が捉えた変化と、ハッブルが毎年記録してきた画像を組み合わせることで、10角形が次第に明瞭になる過程をたどることができた。
南極域の10角形が北極の6角形のような長寿命の構造になるのか、今後弱まるのかはまだ分からない。変化の途上にある大気波を継続して観測できること自体が、多角形の形成条件と安定性を調べる貴重な機会となっている。
元記事: Saturn South Pole Decagon Confirmed: Gas Giants May Grow Polygons at Both Poles
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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