相場展望 9月3日号 米国株:FRB議長は、トランプ氏の怒り恐れず利上げできるか? 日本株:日経平均は「柔らかい地盤の上に建っている」

Photo by Nicholas Cappello on Unsplash[写真拡大]
■Ⅰ.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)8/31、NYダウ▲374ドル安、53,185ドル (日経新聞)
・8/31の米国株式市場でNYダウは▲0.69%安と続落した。
米国軍が8/30にイランを攻撃し、中東情勢を巡る緊張の高まりが投資家心理の重荷となった。
原油高に加え、米国金利の上昇も主力株への売りを促した。
・ロイター通信によると、米国軍はホルムズ海峡にあるイランのララク島のロケット発射装置2基を破壊した。
米国軍による攻撃は約1ヵ月ぶりという。
イランの革命防衛隊が報復としてヨルダンなどの米国軍基地を狙った攻撃をしたとも報じられた。
・米国とイランによる衝突が再び起こり、米国原油先物市場でWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の期近10月物は一時1バレル86ドル台と前週末終値を+4%あまり上回った。
原油高による経済や企業利益への悪影響が意識されやすかった。
・米国債券市場では長期金利が一時4.76%と、2025年1月以来の高水準を付け、株式の相対的な割高感が意識された。
原油高によるインフレ懸念に加え、ウォーシュ米国連邦準備理事会(FRB)議長の8/28の講演を背景に利上げ観測が高まった。
人工知能(AI)投資で企業債務が増えるなか、金利高で調達コストの拡大懸念にもつながった。
・「ウォーシュ議長はインフレへの懸念を強調し、市場は物価高が続く限り次の一手は利上げの可能性が高いと受け止めた」との声が週明けも聞かれた。
利上げが米国景気と企業収益の成長を抑制するとの観測が意識された。
・NYダウの構成銘柄では、アマゾンとアルファベットの下げが目立った。
シャーウィン・ウィリアムズやスリーエム(3M)、ナイキも売られた。
マイクロソフトとアップルも下落した。
一方、原油高を受けてシェブロンが高かった。
ウォルマートとエヌビディアも上昇した。
・NYダウは月間で+700ドル高と5ヵ月連続で上昇した。
・ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は前週末比▲0.11%安と続落した。
メタプラットフォームズが下落した。
・株価指数の下値は堅かった。
テスラのほか、マイクロン・テクノロジーやクアルコムなど半導体関連の一角が買われた。
サイバーセキュリティー関連株の上げも目立った。
クラウドストライクが8/31に年次イベントにあわせてアルファベット傘下のグーグルやエヌビディアなどとの連携を発表し、+5%あまり上昇した。
・ナスダックは月間では+3.9%高となり、3ヵ月ぶりに上昇した。
●2)9/01、NYダウ▲419ドル安、52,766ドル (日経新聞)
・9/1の米国株式市場でNYダウは前日比▲0.78%安と、3日続落して終えた。
米国軍がイラン革命防衛隊の拠点を空爆したと同日発表し、米国原油先物が大幅高となった。
エネルギー高によるインフレ懸念で世界的に金利の上昇(債券価格の下落)が進み、投資家心理が悪化した。
・米国中央軍は9/1、SNSでイランへの空爆を開始したと明らかにした。
ホルムズ海峡を通航する商船や中東地域に展開する米国兵に攻撃を試みたことに対する措置という。
トランプ米国大統領は同日、自身のSNSで「イランが報復すれば、彼らはさらに過酷で大規模な攻撃を受けることになる」と警告した。
・中東情勢を巡っては、サウジアラビア産原油を積んだ大型石油タンカー2隻がホルムズ海峡の航行中に正体不明に飛翔体による攻撃を受けたと伝わった。
エネルギー輸送が停滞するとの警戒感から、9/1の米国原油先物市場でWTI (ウエスト・テキサス・インターミディエート)の期近10月物は1バレル=90ドル台と、中心限月として7月下旬以来の高値を付けた。
・インフレ懸念が強まり、米国長期金利が4.80%と2025年1月以来の高さを付けたほか、日本・欧州でも債券売りが加速している。
米国連邦準備理事会(FRB)のバー理事は9/1の講演で、インフレ率が十分に鈍化しなければ「断固として利上げに動くべきだ」と語った。
米国早期利上げ観測が根強いことも米国金利の上昇を促し、株式相場を下押しした。
・市場では「投資家は米国長期金利が心理的節目の5%を試す展開になるのではないかと懸念している」との声があった。
・米国サプライマネジメント協会(ISM)が9/1発表した8月の製造業景況感指数は前月比▲1.0ポイント低い54.6だった。
ダウ・ジョーンズ通信がまとめた市場予想55.3を下回ったが、米国景気が拡大局面にあるとの見方を変えるほどの材料ではないとして、相場への影響は限られた。
・NYダウの構成銘柄では、シャーウィン・ウィリアムズやホーム・デポ、キャタピラーが下落した。
アマゾンやゴールドマン・サックス、エヌビディアも売られた。
一方、アップルとシェブロンは上昇した。
ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)やアムジェンなどディフェンシブ株にも買いが入った。
・ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は前日比▲1.02%安と、3日続落した。
テスラやアーム、アプライドマテリアルズが下落した。
情報セキュリティソフトのパロアウト・ネットワークスやサイバーセキュリティーのクラウドストライクへの売りが目立った。
●3)9/02、NYダウ+295ドル高、53,061ドル (日経新聞)
・9/2の米国株式市場でNYダウは前日比+0.55%高と、4営業日ぶりに反発した。
主力株の一角に短期的な戻りを見込んだ買いが入った。
人工知能(AI)新興企業の買収観測などを手掛かりにエヌビディアが上昇した。
・NYダウは前日までの3営業日で▲800ドルあまり下げていた。
「前日にかけて相場が3日続落した後で打診買いが入った」との指摘があった。
・NYダウの構成銘柄では、エヌビディアが+3.2%高と上昇が目立った。
AIモデルや開発用データを共有するプラットフォームを運営するハギングフェイスの買収交渉で最終段階にあるとブルームバーグ通信が9/1に報じた。
オープン型AIモデルの開発者などに顧客基盤が広がる可能性が意識された。
・NYダウの構成銘柄ではないが、パソコンやサーバーのデル・テクノロジーズが急伸した。
9/1に発表した四半期決算が市場予想を上回り、通期の収益見通しを大幅に引上げた。
AI関連需要が強いとの見方からAIインフラ銘柄の一角にも買いが波及した。
・米国金利引上げが強まらなかったことが、投資家心理を支えたとの声もあった。
ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が9/2の米国CNBCのインタビューで米国金融政策やインフレ基調について「様子を見る必要がある」と話した。
朝方発表の8月のADP全米雇用リポートは非農業部門の雇用者数(政府部門を除く)の前月比の増加幅が市場予想を下回った。
・その他のNYダウ構成銘柄では、アメリカン・エキスプレス(アメックス)やウォルト・ディズニー、ビザといった消費関連銘柄のほか、キャタピラーやボーイングなどの景気敏感株が買われた。
アルファベットも上げた。
9/2に傘下のグーグルがAIの新モデルを発表したほか、米国連邦裁判所が米国司法省の求めるグーグルの広告事業分割の訴えを退けたことが分かった。
・NYダウは一時+460ドル高となった後、上げ幅を縮小した。
9/2の米国原油先物市場でWTI(ウエスト。テキサス・インターミディエート)の期近10月物が前日比+0.9%高い1バレル=91ドル台で終え、原油高によるインフレ圧力が引き続き警戒された。
・9/2の米国債券市場では長期金利が一時4.81%と、2023年11月以来の水準に上昇(債券価格は下落)する場面があった。
金利の上昇で相対的に株式の割高感が強まることや、家計や企業の資金調達コスト拡大への懸念が強かった。
・NYダウ構成銘柄では、ハネウェル・テクノロジーズやマイクロソフト、スリーエム(3M)などが売られた。
・ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は前日比+0.45%高と、4営業日ぶりに反発した。
メタプラットフォームズや半導体メモリーのマイクロン・テクノロジーが高い。
・一方、9/1に決算を発表したサイバーセキュリティーのパロアルト・ネットワークスやデータベースのモンゴDB、通信機器のクレド・テクノロジーに売りが膨らんだ。
●2.米国株 : ウォーシュFRB議長は、トランプ氏の怒り恐れずに利上げできるか? 正念場
1)ウォーシュFRB議長は、トランプ氏の怒り恐れずに利上げできるか? 正念場
⑴トランプ米国大統領は、米国の中央銀行である連邦準備理事会(FRB)議長パウエル氏に対し「金利引下げ」要求を暴力的手法でに幾度となく迫ってきた。
パウエル氏は、政治からFRBの独立性を死守した。
⑵トランプ氏は、今年5月のFRB議長交代を前に、次期候補者と面談を重ねた。
彼の選定は「金利引下げ」受入れを基準として、面接した。
結果、ウォーシュ氏が選定された。
⑶トランプ氏のイラン攻撃を機に、原油高を引き起こし、米国内のガソリン価格が急伸した。
それが、米国民の家計を直撃し、不満が高まっている。
米国民のトランプ支持率は1期から2期を通じて最低を記録した。
そして、米国の消費者支出物価指数は前年同月比+3.7%高と加速し、インフレ懸念が増した。
なお、FRBのインフレ目標は+2%である。
⑷トランプ氏は中間選挙を意識したのか、ウォーシュFRB議長に数度、電話した。
しかし、ウォーシュ氏はその内容について開示していない。
なお、前任のパウエル氏は年2度ほどトランプ氏から電話を受ける度に公開してきた。
⑸ウォーシュFRB議長はジャクソンホール会議で講演した。
タカ派的ともとれる内容であったが、講演で語った内容は平均的な認識でしかなかった。
はたして、ウォーシュ議長は「トランプ氏の怒り恐れずに利上げできるか?」 正念場にある。
FRBにとっても、政治勢力からの独立性・中立性を護れるか、試されている。
●2)米国の長期金利上昇
⑴米国の財政赤字は8月時点で6,400兆円を超えた。
・トランプ政策で、軍事費・関税払戻など歳出は増える勢いが増している。
財政赤字拡大の勢いが増すなかで、米国金利の低下余地は限られる。
⑵米国インフレ率はトランプ政策で加速する状況にある。
・米国連邦準備理事会(FRB)ウォーシュ議長はトランプ氏の意向である金利引下げを実施できない状況に追い込まれてきた。
・トランプ氏のイラン攻撃で、原油が急騰し、コスト上昇による値上げとガソリン代の急伸もあり、家計を直撃している。
かつ、トランプ氏は3~4週間で済むと言っていた、イランとの戦闘終結がみえない泥沼化している。
米国はイランに勝てないとみる向きもある。
米国は当初、イランから核排除と言っていたが、今や核が消えている。
・しかも、労働市場は堅調に推移しているため、金利引下げの理由がない。
・地区連銀総裁から「金利引上げ支持」派が増えてきており、ウォーシュFRB議長は、金利据え置きが精一杯であろう。
・流れは「金利引上げ」であり、焦点はその回数である。
⑶米国長期金利は上昇から回避できない。
●3.ベッセント米国財務長官、中国がG20の共同声明を阻んだと指摘 (ブルームバーグ)
1)中国の巨額の貿易赤字を巡る対立が理由。
2)議長声明は、「過大かつ恒常的な対外黒字を抱える国はゆがみを是正を」。
■Ⅱ.中国株式市場
1.上海総合指数の推移
1)8/31、上海総合+34高、3,986 (亜州リサーチ)
・週明け8/31の中国本土マーケットで上海総合指数は、投資家心理がやや上向く流れとなり、前営業日比+0.86%高と反発した。
・先週末までに公表された主要企業の決算が概ね良好だったほか、中国政府の政策に対する期待感も支えとなっている。
中国の政策を巡っては、全国人民代表大会(全人代)常務委員会の第24回会議が8/28に閉幕し、国内経済の成長が鈍化していることを認めたうえで、2026~2030年にかけた内需拡大戦略の実施計画を本格的にスタートさせる方針が確認された。
・また、格付け大手S&Pは8/28、中国は今後1~2年間、+4%以上の成長を続ける可能性が高いとして、中国のソブリン信用格付けを「A+(Aプラス)」に据え置いた。
経済成長を維持するため、中国政府は大規模な財政支援を行うとの見方も示した。
・米国利上げ観測と中東不安で売りが先行したが、株価指数は後場からプラスに転じ、徐々に上げ幅を広げた。
・一方、寄り付き直後に公表された中国の8月製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.8と、市場予想49.5と前月実績49.2を上回った。
ただ、景況判断の節目となる50を2ヵ月連続で下回っている。
非製造業PMIは49.0と、予想49.4を下回り、前月実績49.0と同水準にとどまった。
・業種別では、
中国5大銀行が相場を牽引した。
・各行が先週までに公表した中間決算は、それぞれ前年同期比+3~+5%の増益を確保したうえで、配当の増額方針も示している。
配当妙味が意識された。
石炭・石油もしっかり。
保険・証券、ハイテク、軍需産業、インフラ建設、自動車、通信なども買われた。
半面、
医薬は安い。
不動産、消費、素材、公益、空運も売られた。
●2)9/01、上海総合▲6安、3,979 (亜州リサーチ)
・9/1の中国本土マーケットで上海総合指数は、投資家の慎重スタンスが強まる流れとなり、前日比▲0.16%安と反落した。
・中東情勢の不透明感が重しだ。
米国・イランの攻撃応酬が1ヵ月ぶりに再開し、原油や米国長期金利が上昇している。
・ただ、株価指数の下値は限定的だ。
中国の政策に対する期待感などが支えとなっている。
・先週8/28に閉幕した全国人民代表大会(全人代)常務委員会の第24回会議では、国内経済の成長が鈍化していることを認めたうえで、2026~2030年にかけた内需拡大戦略の実施計画を本格的にスタートさせる方針が確認された。
・株価指数はプラス圏で推移する場面もあった。
・業種別では、
ハイテクの下げが目立った。
エネルギーも冴えない。
素材、電気設備なども売られた。
半面、
農業関連は急伸した。
・政策支援の動きが期待できる。
全人代常務委員会の第24回会議では、食料の安定供給に向けた農家支援も重点項目として挙げられた。
金融、消費、公益、自動車、不動産、運輸なども買われた。
●3)9/02、上海総合▲38安、3,941 (亜州リサーチ)
・9/2の中国本土マーケットで上海総合指数は、投資家の慎重スタンスが強まる流れとなって、前日比▲0.97%安と続落した。
・中東情勢の緊迫化が懸念されている。
米国・イランの攻撃応酬で原油相場が急伸し、米国長期金利も急騰した。
9/1のNY商品取引所では、WTI原油先物が前日比+5.2%高の90.22米国ドル/バレルと大幅続伸した。
90米国ドル台に乗せるのは、今年5月中旬以来だ。
原油高によるインフレ圧力や、世界的な利上げ観測を受け、米国債券市場では長期金利の指標となる米国10年債利回りの上昇が加速し(債券価格は5日続落)、2025年1月以来、およそ1年8ヵ月ぶりの高水準で終えた。
中国経済に対する悪影響も不安視された。
・もっとも、株価指数は下値を叩くような売りはみられない。
中国の政策に対する期待感が支えとなっている。
先週8/28に閉幕した全国人民代表大会(全人代)常務委員会の第24回会議では、国内経済の成長が鈍化していることを認めたうえで、2026~2030年にかけて内需拡大戦略の実施計画を本格的にスタートさせる方針が確認された。
・業種別では、
非鉄・産金の下げが目立つ。
ハイテクも冴えない。
自動車、紙・パルプ、医薬、運輸、証券、不動産、消費なども売られた。
半面、
宇宙・軍需産業は物色された。
・全人代常務委員会の第24回会議では、改正「国防動員法」を可決した。
(10/1施行)
軍需産業の安定成長も期待された。
銀行、公益も買われた。
■Ⅲ.日本株式市場
1.日経平均の推移
1)8/31、日経平均▲93円安、66,311円 (日経新聞)
・8/31の東京株式市場で日経平均は前週末比▲0.14%安と反落して終えた。
9月の米国利上げ観測を背景にした前週末の米国長期金利上昇と米国半導体株安を受けて、東京市場でも売りが先行し、朝方には▲1,500円超下げた。
ただ、その後は相場の底堅さを意識した買いを支えに大引けにかけて下げ幅を縮小し、この日の高値で終えた。
・前週末に開かれたカンザスシティー連銀主催の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)での講演で米国連邦準備理事会(FRB)のウォ-シュ議長はインフレへの懸念を示した。
9月の米国利上げ観測が再び広がり、米国長期金利上昇と株式市場での半導体株安を促した。
その流れで東京市場でもアドバンテストや東京エレクトロンなどに売りが先行して朝方には下げ幅が▲1,500円を超えた。
・売り一巡後は相場の底堅さを意識した株価指数先物買いにつれて、日経平均は下げ幅を縮小した。
キオクシアやソフトバンクG(SBG)など人工知能(AI)・半導体株で買いが優勢になる銘柄も増えるなかで、東証株価指数(TOPIX)は上昇に転じた。
自動車や銀行株も堅調だった。
・9月入りするのを前に金融政策にらみで日本・米国の長期金利は上昇した。
国内債券市場で長期金利は約30年ぶりの高水準を付けて3%の大台も視野に入れている。
株式市場では様子見ムードも広がりやすいなか、短期筋の先物売買が相場を主導した。
・東証株価指数(TOPIX)は前週末比+0.23%高と8日続伸した。
JPXプライム150指数は+0.11%高と続伸して終えた。
・東証プライムの売買代金は概算で9兆3,583億円、売買株数は26億7,487万株。
東証プライムの値下がり銘柄数は634、値上がりは881、横ばいは41だった。
・個別銘柄では、レーザーテック、豊田通商、TDK、中外製薬が下落した。
一方、ファーストリテイ、フジクラ、リクルート、ソニーが上昇した。
●2)9/01、日経平均▲96円安、66,215円 (日経新聞)
・9/1の東京株式市場で日経平均は前日比▲0.15%安と、小幅に続落して終えた。
原油高を背景にした前日の米国株安や、日本・米国の長期金利の上昇が重荷となり、朝方の日経平均は▲700円あまり下げる場面があった。
・8/31の米国株式市場でNYダウは続落した。
米国軍による1ヵ月ぶりのイラン攻撃で、エネルギー輸送停滞の長期化やインフレが強まるとの懸念から同日のニューヨーク原油先物市場と米国長期金利が上昇した。
国内の長期金利も約30年ぶりに一時3%台を付け、相対的な割高感が意識されやすい人工知能(AI)・半導体関連銘柄への売りを促した。
・日経平均は急速に下げ渋った後、上げに転じる場面もあった。
9/1の韓国株式相場が上昇に転じると、歩調をあわせて海外投機筋による日経平均先物への買いが断続的に入った。
日経平均はチャート上で25日移動平均6万5,700円近辺が下値支持として意識され、好業績を背景にした日本株の先高期待も押し目買いを誘った。
金利上昇でAI・半導体関連株から銀行などバリュー(割安)株へと資金を移す動きがみられるとの声もあり、活発な循環物色の動きも日経平均を支えた。
・東証株価指数(TOPIX)は+0.62%高と、9日続伸した。
9日続伸は、2025年4/22から5/13の13日続伸以来およそ1年4ヵ月ぶりの連騰記録。
当時は、米国・中国両政府が相互に課していた追加関税の引き下げで合意し、米国・中国対立を巡る警戒感が和らいだ局面だった。
トヨタや三菱商事などが買われ、TOPIXは8/14に付けた最高値4,197に接近した。
JPXプライム150指数は+0.38%高と、3日続伸し1,743で終えた。
・東証プライムの売買代金は概算で7兆5,016億円、売買株数は22億7,826万株。
東証プライムの値下がり銘柄数は662、値上がりは845、横ばいは49だった。
・個別銘柄では、東京エレクトロンやアドバンテスト、ディスコ、レーザーテクなどAI・半導体関連の下げが目立った。
一方、豊田通商やKDDIが買われ、三井物産や住友商事も上げた。
●3)9/02、日経平均▲1,889円安、64,325円 (ロイター)
・9/2の東京株式市場で日経平均は前営業日比▲2.85%安と、3日続落した。
原油価格の上昇や世界的な金利上昇を嫌気し、幅広い銘柄で売りが優勢となった。
プライム市場の9割超の銘柄が下落する全面安の症状だった。
TOPIXの連騰は9日間で途切れた。
・「長期金利が3%を超え、風景が変わってきた。
投資家はやや構えているようだ」との声があった。
日経平均は前営業日比▲1.54%安でスタートした後も下げを拡大し、午後には一時▲3.0%・▲1,999円安の6万4,215円に下落した。
・金利上昇を受け、割高感が意識されやすいAI(人工知能)・半導体関連株の下落が、日経平均の下げを主導した。
もっとも、東証プライム市場では9割強の銘柄が売られ、東証33業種のすべてが下落するなど全面的に弱かった。
原油高が陸運などの内需セクターや素材で嫌気されたほか、金利上昇の景気への悪影響が意識され、銀行株も売られた。
一方、ディフェンシブの一角には物色も見られた。
・米国とイランの戦闘再開を嫌気して原油価格が上昇し、米国標準油種のWTI先物は90ドル台で推移した。
原油高によるインフレ懸念で金利に上昇圧力がかかって、米国金利は4.8%台で高止まりし、日本国内の長期金利は連日で30年ぶりの高水準を更新した。
「鍵を握るのは原油価格だとみる。
WTI先物は過去1ヵ月ほど70~90ドルのレンジで推移していたが、
『ボックス圏から明確に上抜けないか注意が必要』」という指摘があった。
・取引時間中に日銀の高田創・審議委員のタカ派寄りの発言が伝わったが、株価への直接的なインパクトは限られた。
・TOPIXは▲2.4%安の4,081で取引終了した。
東証プライム市場指数は前営業日比▲2.4%安の2,104だった。
東証プライム市場の売買代金は概算で8兆0,344億円だった。
東証33業種ではすべて値下がりし、値下がり率上位には非鉄金属やサービス、ガラス・土石製品などが並んだ。
・個別銘柄では、リクルートやソフトバンクG、トヨタ自動車が大幅安だった。
一方、ディフェンシブ株の一角として第一三共が堅調だった。
決算が好感された伊藤園は年初来高値を更新した。
新興株式市場は、東証グロース市場250指数が3日続落し、▲2.83%安の777だった。
・東証プライム市場の騰落数は、値上がり銘柄が100(6%)、値下がりが1,436(92%)、変わらずは19(1%)だった。
●2.日本株 : 日経平均は「柔らかい地盤の上に建っている」
1)日経平均の日中の動き
⑴8/31の日経平均の動き
前日終値 (66,405円)
始値 ▲737 米国利上げ観測強まり、大幅下落
安値 ▲1,573 日本長期金利3%を視野、短期筋の売り
高値 ▲93 短期筋の先物買いで下げ幅縮小
終値 ▲93 本日の高値引け
(66,311円)
⑵9/1の日経平均の動き
前日終値 (66,405円)
始値 ▲426 米国株安で主力株に売りが優勢
安値 ▲735 日本金利高でAI・半導体株に利益確定売り
高値 +214 韓国株高に歩調合せ、海外投機筋が先物買い
終値 ▲96 引けにかけ 売り直しが出た
(66,215円)
⑶9/2の日経平均の動き
前日終値 (66,215円)
始値 ▲1,020 原油価格と金利上昇を嫌気し、売り優勢
高値 ▲1,020 始値が当日の高値となり、地合いの弱さ示す
安値 ▲1,999 幅広く売られ、東証33業種の全てが下落
終値 ▲1,889 引けにかけ、 若干だが戻した
(64,325円)
⑷日経平均は、もみ合い状態 ⇒ 9/2に下へ抜けた
➀8/31・9/1は朝方の大幅下落から、大きく反発
・8/31、 安値▲1,573円安 ⇒ 終値▲93円安、+1,480円の反発
・9/01、 安値▲735円安 ⇒ 終値▲96円安、+ 639円の反発
・反発の要因は、韓国株高を契機に、海外短期投機筋の先物買いが断続的に入ったことにある。
②9/2は朝一番から全面安の展開となり、大幅安で終わる
・9/02、 安値▲1,999円安 ⇒ 終値▲1,889円安、+110円の小反発
・前2日の反発と違って、海外短期筋の買い支えはなかった模様。
③日経平均はチャートをみると中期的に下落を指向
・8/17の69,220円を高値にして下落、8/25の65,856円を底にしてからもみ合っていた。
・しかし、9/2の▲1,889円安と大幅に下落した。
下約要因は、AI・半導体関連株安 ⇒ 全面株安 と反落の対象が全33業種に広がったことにある。
東証プライムで92%にあたる1,436銘柄が値下がりとなった。
・このことから、日経平均は次の底値模索を始めたとみる。
要因としては、
➀イラン情勢を巡る戦闘による原油高
②世界的な金利高、日銀の金利引上げ
③次の決算発表時期まで、好材料が期待できない時期を迎える
以上の観点からも、日経平均はイバラの期間を迎えたと思われる。
●2)日経平均を動かす、寄与上位5銘柄の状況
⑴8/31、日経平均▲93円安に占める寄与上位5銘柄は▲440円安、占有率4.73倍
銘柄 寄与額 下落率 株価下落幅
アドバンテスト ▲381円安 ▲4.48%安 ▲1,580円安
TDK ▲ 17 ▲1.09 ▲ 34
村田製作所 ▲ 17 ▲2.78 ▲ 206
レーザーテック ▲ 13 ▲2.89 ▲ 1,000
中外製薬 ▲ 12 ▲1.71 ▲ 120
合計 ▲440円安
・プラス寄与上位5銘柄のうち、AI・半導体関連は、キオクシア+49円、フジクラ+33円、ソフトバンクG+31円、東京エレクトロン+21円の合計+134円。
⑵9/1、日経平均▲96円安に占める寄与上位5銘柄は▲431円安、占有率4.48倍
銘柄 寄与額 下落率 株価下落幅
東京エレクトロン ▲147円安 ▲2.59%安 ▲1,460円安
ファーストリテイ ▲ 96 ▲1.64 ▲1,190
アドバンテスト ▲ 75 ▲0.92 ▲ 310
リクルート ▲ 72 ▲3.95 ▲ 720
フジクラ ▲ 41 ▲3.74 ▲ 206
合計 ▲431円安
・プラス寄与上位5銘柄のうち、AI・半導体関連は、ソフトバンクG+50円、キオクシア+24円の2銘柄で合計+74円。
・マイナス寄与上位5銘柄のうち、AI・半導体関連は4銘柄で合計▲428円。
・マイナス・プラス寄与上位5銘柄のうち、AI・半導体関連は合計で▲285円。
⑶9/2、日経平均▲1,889円安に占める寄与上位5銘柄は▲876円安、占有率46.37%
銘柄 寄与額 下落率 株価下落幅
ソフトバンクG ▲272円安 ▲6.42%安 ▲ 338円安
アドバンテスト ▲203 ▲2.52 ▲ 840
東京エレクトロン ▲188 ▲3.40 ▲ 1,870
リクルート ▲115 ▲6.52 ▲ 1,140
TDK ▲ 98 ▲6.33 ▲ 195
合計 ▲876円安
・マイナス寄与上位6~10のAI・半導体関連銘柄では、ファナック▲44円、フジクラ▲42円、京セラ▲34円、村田製作所▲30円と4銘柄が入った。
その合計は▲150円。
・マイナス寄与上位10銘柄のうち、AI・半導体関連株は8銘柄・▲911円安で、日経平均占有率は48.22%。
・本日9/2の日経平均は▲1,889円と大幅下落したが、AI・半導体関連株が大半を占めるというわけではなかった。
東証プライムの1,556銘柄のうち92%が下落しており、全面安といった方が適切だろう。
●3)日経平均は「柔らかい地盤の上に建っている」
⑴日経平均を支える地盤は、「海外短期筋による株価先物買い」
・このところ、海外投機筋は一貫して日経平均を買い支えしている。
⑵日経平均の足を引っ張り始めたのは、「AI・半導体関連株の売り」
・AI・半導体関連株は、金利上昇で割高感が意識され売られる展開。
日経平均上昇の牽引役 ⇒ 様子見 ⇒ 足を引っ張り始めている。
⑶懸念材料
➀中東情勢の不透明感の長期化
・イランは、米国中間選挙を前にしてトランプ氏を揺さぶって、交渉優位に立つ戦術を取っている。
・このため、11月の中間選挙までは現在の状況に変化はないだろう。
②米国・日本の長期金利上昇
・日本も9/1に長期金利が一時3%台に乗せ、30年ぶりの水準となった。
⑶海外短期筋の動向によっては、日経平均は再び売られる展開が予想される
・9/2がそうであったように。
⑷まして、金利上昇は、ハイテク株は高株価のため相対的に割高感が意識され売られやすい。
なかでも、AI・半導体関連銘柄は高値で乱舞してきたため、利益確定の売りが殺到する可能性がある。
⑸株式市場は「風雲」の到来を告げているかもしれない
●3.長期金利一時3%、30年ぶり高水準、財政懸念で国債に売り (毎日新聞)
1)日銀の9月利上げ観測も根強く、国債売りが続いている。
■Ⅳ.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・3038 神戸物産 円高メリット期待
・4523 エーザイ 業績好調
・9843 ニトリ 円高メリット期待
スポンサードリンク
中島義之氏のコラム一覧
- 相場展望 10月8日号 米国株:人工頭脳(AI)・半導体株は「バブルの崩壊」が近づいている? 日本株:日経平均を牽引してきたAI・半導体関連株バブルは破裂するか?

- 相場展望 10月5日号 米国株:米国株は最高値から下落途上、中間選挙で逆風が吹くトランプ政権 日本株:半導体株高で日経平均上昇⇒やがて海外短期筋の利益確定売りか?

- 相場展望 10月1日号 米国株:米国株は軟調・・長期金利が上昇・景気の悲観強まる・新規材料なし 日本株:日経平均はNYダウに比べて独歩高、日本株全体から見ても突出

- 相場展望 9月28日号 米国株:イラン核問題棚上げ・ホルムズ海峡開放の受諾は、米国の負け 日本株:中間配当権利取り9/28が最終日、以降の日経平均は軟調?

- 相場展望 9月24日号 米国株:FRBは、中間選挙11/3の直前に、10/28追加利上げを決定? 日本株:中間配当権利巡る相場で買い優勢は、海外短期筋の草刈り場

- 中島義之氏のコラムをもっと読む
