かつ丼のかつや:アークランドサービスHDの、巧みなテイクアウト戦略

2021年10月20日 16:10

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(画像: かつやの発表資料より)

(画像: かつやの発表資料より)[写真拡大]

 緊急事態宣言が解除された。「規制緩和策」に関しては自治体別の施策はあるが・・・。そんな中で私はこのところ、この間の厳しい環境の中で「踏ん張ってきた」外食業界に関心を強めている。9月17日の企業・産業欄に『ゼンショーHDから覗く、大手飲食業の見極め』を記したのも、その一環だ。

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 こんな企業に出会った。アークランドサービスホールディングス(東証1部)。カツ丼の「かつや」など複数ブランドの飲食チェーンを、直営・FCで展開している。

 前12月期は「15.9%増収、1.2%営業増益」。「2021年12月期はかつや・からやす・からあげ緑等、28の新規出店を予定している」とした。そのうえで今期も「13.9%の増収(440億円)、4.6%の営業増益(47億5000万円)、6円増配の30円配」計画。

 中間期の実績は「期初中間期予想売上高:214億円に対し211億6500万円、営業利益:21億5000万円に対し22億8200万円」と、上半期を順調に通過した。かつ「雇用調整助成金や営業時間短縮協力金収入」を理由に、通期の経常利益を56億円から62億円に上方修正した。

 助成金・協力金云々は、コロナ禍の影響を受けている証し。が、収益は順調。1-6月期の既存店売上高は前年同期比「直営店:103.1%、FC店:100.5%」。国内の店舗は5店純増(425店舗)。何故なのか。決算関連資料を読み漁った。

 「コロナ禍の影響」はどの資料にも、記されている。だが例えば中間期短信には<こうした状況の中、当社グループはどのような環境の変化があろうとも、対応できる様にポートフォリオをみつめ、効果的な対策を迅速に講じることが出来るように、顧客のニーズの一歩先を考えて新規顧客の開拓・各業態の事業規模拡大・テイクアウト需要の取り組みなど積極的な販売促進になどに取り組んできた>とし、主軸のかつやについてこう記している。「テイクアウト専用のフェアメニュー(特別メニュー)などを6回、2回のお得メニューキャンペーンを実施。SNSでのPR活用。テイクアウト需要がとりこめた結果」としている。

 極論するとテイクアウトニーズの取り組みだけで、果たしてこうも堅調な収益を実現できるものか。アークランドサービスHDに「より具体的に、咀嚼して説明して欲しい」と問い合わせた。返ってきた答えはこうだった。「かつやで言うと、従来の売上高に占めるテイクアウトの比率は35%水準。これが50%超に上昇した。もともと駅前など繁華街の立地店は約1割、対して9割方がロードサイト店。つまり住宅立地型が主軸。ここに着目した。例えば新聞の折り込みチラシで『テイクアウトOK』を訴えた。正直、広報担当が口にするべきではないが『効果は想定以上だった』」。

 株価はどんな反応を見せているのか。本稿作成時の時価は2300円台。IFIS目標平均株価(2500円)は若干ながらも上値余地を示唆。また株式分割等を勘案した、修正値ベースでみた9年半余の株価パフォーマンスは13倍強。収益動向の頑張りを反映している。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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