アリババで下がり、ドイツテレコムで上がり、DiDiでまた下がる 息もつかせぬソフトバンクG・コースター!

2021年9月24日 08:06

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 20日、ニューヨーク証券取引所でDiDi Global(中国の配車サービスの滴滴出行(DiDi Chuxing)の運営元)の株価が6.6%もの急落を見せた。

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 ロイター通信がが関係者の話として、「同社のジーン・リウ(柳青)社長が一部の関係者に退任する意向を伝え」、「中国政府が滴滴出行の経営権を手にして、新経営陣を任命する」と報じたことで、市場が動揺した。

 但し、DiDi Globalは翌21日、ロイターの報道が真実でないとして、「捏造による有害な噂の配信を厳重に抗議する」という趣旨の声明を発表している。

 6月30日、ニューヨーク証券取引所でIPO(新規株式公開)したDiDiは、終値14.14ドルで時価総額7兆円超を記録したことを思えば、20日の7.75ドルという終値はいかにも寂しい。DiDiのIPO直後となる7月4日、中国当局がサイバーセキュリティ審査を実施し、アプリの新規ダウンロードを禁止したことや、アプリストアからのアプリ削除要求を声明文で発表したことから、大波乱の幕が開いた。

 中国当局がDiDiに対して厳しい姿勢を示している理由は色々分析されているが、配車アプリが1カ月間に600~800億件のビックデータを扱い、「誰が、どこから、どこまで」利用したかという機微情報が米国に漏れることを恐れたとする説も有力だ。米国の手にビックデータが渡って、中国国内の動静が包み隠さず把握されることを、国家安全保障上のリスクと捉えたとしてもおかしくない。

 トランプ前大統領が、中国のIT企業BytedanceのアプリTikTokに対して、ユーザーの位置情報や端末情報などのデータが集積されて、安全保障上のリスクになるとして禁止令を出したことの裏返しだ。DiDiもBytedanceも中国のIT企業だが、自国内でアプリが使用されることに、緊張関係にある両国が揃って過敏な反応を示したと言える。

 中国の新興企業にとってニューヨーク証券取引所でIPO(新規株式公開)をすることは、高い評価を得て潤沢な資金を調達する、一種のアメリカンドリームだ。米国の投資銀行にとっても高額の手数料収入が見込める美味しい商売だ。今年は前半で30社を超えるIPOが行われ、1兆3000億円もの資金が市場を通して集められた。もちろん、米国でも中国でも国家の意志は、企業の夢を遥かに超越するから、想定される最悪のケースはDiDiの上場廃止だ。

 中国当局は、世界最大のモバイル決済アプリで、10億人のユーザーを抱える「アリペイ(支付宝)」を分割する準備を進めていると伝えられる。もし当局の思惑通りに計画が実施されると、アリババ傘下のアントは、政府関与の信用スコアリング会社から指示を受ける下請けのような存在になりかねない。全体の39%もの収益を叩き出していた小口金融は、見る影もなくなる危機にある。

 ソフトバンクグループ(SBG)は注目を集めるDiDiでもアリババでも大株主だから、両社の動向が伝えられる度にSBGの株価も連動するかのごとき動きを見せる。8月23日に6086円だった終値は、ドイツテレコムとの契約が話題になった9月8日には7265円まで駆け上がり、9月22日は6449円に逆戻りした。良いニュースも悪いニュースもとにかく株価に反映させるかのような値動きは、個人投資家を翻弄させるばかりだろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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