ソフトバンクGの投資先に相次ぐ、不都合なニュース! 群戦略に穴はないのか?

2021年7月11日 17:39

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 投資の鉄則はリスクの分散だ。特定の企業に偏らず、対象業種を分散した上で、カントリーリスクも頭に入れておくことが、古典的でありながら今でも王道の投資方法だ。いつ発生するかも知れないリスクに備えて、致命傷を負わずに済むようにするのは常識と言ってもいい。

【こちらも】ソフトバンクGを見詰める、投資家の冷めた視線

 その意味で、ソフトバンクグループ(SBG・ヴィジョンファンドを含む)の投資方法は特異だ。将来性が見込まれる新興業種で、先駆けている企業の首位から複数社に投資することにも躊躇しない、というよりは好んでそうしているように見える。孫正義会長兼社長が発明したという群戦略は、特定分野で事業を営む多様な企業群(複数社)が、自律的な経営を続けながら同志的にシナジーを創出することを指向するというから、非常に難解だ。

 3月に英金融会社グリーンシル・キャピタルが経営破綻し、6月には米建設会社カテラが破綻した。SBGはグリーンシル・キャピタルとカテラの双方に対して出資していた。グリーンシル・キャピタルはカテラに融資取引があった。

 グリーンシル・キャピタルはカテラ以外にも、SBGの出資先に対する融資を行っていると伝えられている。

 こうした関係も広い意味での群戦略と看做せば、SBGの出資先A社がB社と融資取引を行い、B社もSBGの出資を受けていた場合、B社が別のC社への支払いに優先して、A社に融資金の返済を行う判断にSBGの意向が関わっていたかどうかは非常にデリケートな問題になる。SBGが利益相反関係の中心にいることになるからだ。

 グリーンシル・キャピタルの債権を買取っていた金融大手のクレディ・スイスが、SBGに対する訴訟を検討していると伝えられている理由がここにある。

 6月18日、米ウォール・ストリート・ジャーナルは、クレディ・スイスがSBGとの取引を縮小した上で、SBGの孫会長個人との融資関係を解消したと伝えていることが、投資家の心理に一定の不安を醸成したことは間違いない。

 SBGは注目度が並みでないし金額がケタ違いだから、伝えられる情報に対する投資家の反応も大きい。自社株買いが奏功してで3月に1万700円近くまで上昇したSBGの株価は、現在7000円台に下落している。

 4日、中国の規制当局が配車最大手ディディ(滴滴出行)の「重大な違反」により、同社のアプリ配信を停止に追い込んだことも、少なからぬ要因になっているだろう。6月30日にディディがニューヨーク証券取引所に上場され、アリババに次ぐ44億ドルを調達したとして話題を集めてから、まだ1週間も経っていない。

 アリババもディディも事業拡大に成功したSBGの投資先だが、ネット企業であるという業種と、ともに中国企業であるというカントリーリスクが複合している。

 古典的な投資理論と群戦略というSBG独自の投資理論の優劣は、投資家の行動で決まる。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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