相場展望11月24日号 ワクチンで経済正常化期待と、感染再拡大の懸念が交錯する株式市場

2020年11月24日 08:49

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■I.米国株式市場

●1.米株式市況の推移

 1)11/19、NYダウ+44ドル高、29,483ドル
  ・失業保険申請者数が予想を上回ったため、一時▲200ドル超下落したが、米議会で追加経済対策の協議再開の見込みと伝わり、景気回復の期待から買い優勢。
  ・コロナワクチン普及で経済正常化が進むとの期待も強い。

【前回は】相場展望11月19日号 ジョージア州上院議席がバイデン政権の政策を決める 勝てば左派色で株価マイナス、負ければ株価プラス

 2)11/20、NYダウ▲219ドル安、29,263ドル
  ・コロナ再拡大で景気停滞に懸念から景気敏感株に売り。
  ・コロナ対応でFRBが未使用の資金を財務省が返還を求め、失業者支援に振り向けることに、FRBは反対したため、政策不透明感が強まり投資家心理が悪化。

 3)11/23、NYダウ+327ドル高、29,591ドル
  ・コロナワクチンの実用化材料が相次いでおり、経済活動の正常化期待で上昇。
  ・財務長官にイエレン前FRB議長との報道で、市場は好感。
  ・上昇率は、NYダウ+1.12%、ナスダック総合+0.22%、SP500+0.56%。

●2.短期的には調整局面だが、ワクチン情報で買い戻しもあり、交錯相場の展開へ

 1)米大統領選挙11/3と、ワクチンのニュース11/16で株式市場の上昇に拍車がかかった。ただ、株式市場としては大統領選挙のイベントは終了。

 2)11/17以降は、大幅上昇に対する反動と新型コロナ感染者数の増加で、株価下落につながった。

 3)11/23から、相場のリズム的にも、ファイザーのワクチン接種開始が12/11と報じられたこともあり、反発とみる。

 4)なお、2021年5月頃に全米でのワクチン予防接種率70%前後を目指しているが、国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は「来年5月までに達成できるとは思わない」と語っている。(ブルームバーグ)

 5)以上のように、株式市場は(1)ワクチンによる経済正常化と、(2)感染再拡大による懸念とが交錯を繰り返しているが、当面はこの関連が継続し、BOX圏の動きになると予想する。

 6)コロナ禍の特需を受けたハイテク株が高騰したが、ワクチンの出現で、ハイテク下落vs景気敏感株上昇という潮目の転換の兆しが窺える。

 7)ただし、ワクチンの(1)有効期間 (2)安全性 (3)生産問題 (4)物流・保管問題等があり、現段階では懸念解消となっていないことに注視したい。これら懸念がある限り、「感染再拡大による景気後退不安」が消えることはない。その場合、金利低下が続き、景気敏感株は売り戻し、ハイテク株有利な展開が続くことになる。

●3.米政府の財政支出拡大とFRBによる金融緩和追加策で、株価が上昇し、金利も上昇する

 1)株価は過去最高水準まで戻る可能性があり、そうすると10年物国債利回りが2%に近づくこともあり得る。

 2)そうなると、ハイテク株が多いナスダック総合指数は、金利上昇から割高感が意識され、悪影響を受ける可能性が高まりそうだ。逆に、今まで出遅れていた銘柄が勢いを盛り返すと予測できる。

●4.早急な景気刺激策の実施が必要(バロン)

 1)この春、トランプ政権と議会は総額2兆3,000億ドルのコロナウイルス支援・救済・経済・安全保障法(CARES)を可決した結果、4~6月期GDP成長率▲31.4%だったのを、7~9月期GDP成長率+33.1%と予想を上回る高い伸びにつながった。

 2)米国で感染再拡大が続く中で、大統領選挙後の政権・議会は空転を続けるばかりで、追加経済対策は外に追いやられている。

 3)JPモルガンの顧客向けレポートでは、同社のカード所有者の支出動向は、11/9までで前年比▲7.4%減となり、「著しく」落ち込んでいると述べている。落ち込みは新規感染者が特に拡大している州で大きいが、広範囲に支出は縮小しているという。

 4)米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長も、「今後、数カ月は厳しい状況が続く」と述べている。

●5.米11月製造業PMIは56.7と、2014年9月来で最高値、ドル高に急伸(フィスコ)

 1)良好な結果を受けてドル円は、前日103.70円⇒104.57円へとドル高・円安に急進した。

●6.米バイデン氏11/23、財務長官にイエレン前FRB議長を指名へ(フィスコ)

 1)金融業界規制強化の民主党左派系ではないため、市場は好感材料と受けとめると思われる。

●7.国際通貨基金(IMF)、コロナ禍からの景気回復の勢いが失速する恐れ(ブルームバーグ)

 1)感染再拡大に見舞われている国々の景気回復の勢いが鈍化しており、「リスクは極めて高い」と警告した。

●8.米国ではFRBの追加金融緩和が12月に行われるとの支援材料が控えており、今回の調整は上昇局面における踊場と捉えたい。(バロン)


●9.米財務省、FRB緊急融資プログラム一部延長せず、未使用資金の返却要請(ロイターより抜粋

 1)ムニューシン米財務長官は11/19、FRBの緊急融資制度の一部を、期限延長せず12/31で終了する考えを示した。

 2)3月の新型コロナ支援・救済・経済保障法に基づき、財務省に4,550億ドルが割り当てられ、FRBに緊急融資資金として回されていた。

 3)この発表を受け、米10年国債利回りは0.83%に低下した。

 4)パウエルFRB議長は11/20、未使用資金は財務省要請に基づき返還表明(ブルームバーグ)
  当初、FRB、米商工会議所は「緊急融資は使われていないが、安心感を与えるもの」と財務省を批判していた。(ロイター)

●10.台湾の鴻海精密工業は、米工場でグーグルから生産受託(ブルームバーグ)

 1)米ウィスコンシン州でグーグルのサーバー主要部品組立工場を来年1~3月に量産開始の見通し。

 2)鴻海の工場は中国の中部や南部に集中していたが、中国の製造拠点への依存を抑え、米国での生産拡大を模索している。

●11.EU関連

 1)コロナから受けた打撃から、経済立て直す「復興基金」の運用協議も合意できず(NHK)
  ・復興基金は90兆円規模で運用は来年1月予定だが、感染拡大する中、経済再建が遅れることが懸念される。

 2)独、11月サービス業の購買担当者景気指数(PMI)が46.2に低下、景況悪化(ロイター)
 
 3)ユーロ圏経済の11月は再度の制限措置で縮小、特にサービス業に打撃(ブルームバーグ)

●12.世界半導体10社、7~9月期純利益は5Gが押し上げて前年同期比+35%増

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)11/19、上海総合指数+15高、3,363
  ・国務院は11/18、自動車・家電などを対象とする消費拡大策を強化する方針を確認。
  ・内需拡大の期待感が強まる流れとなった。(亜州リサーチ)

 2)11/20、上海総合指数+14高、3,377
  ・消費拡大策に期待し、自動車が牽引し、続伸した。 (日本経済新聞)

 3)11/23、上海総合指数+36高、3,414
  ・国内の消費刺激策など経済対策の強化期待が支援材料で、買い先行となった。
  ・一方、欧米で新型コロナ感染急増が景気回復遅れと、上値を抑えている。(フィスコ)

●2.中国・広州で大規模モーターショー、各社が独自戦略アピール(NHK)

 1)トヨタ:ガソリン車のセダン型、後部座席広く乗り心地良い。
 2)日産:電気自動車のSUV(多目的スピード車)、電気充電ではなくバッテリーを交換。

●3.中国国有の自動車会社・華晨汽車がコロナ禍で破綻(共同)

 1)自社ブランド車がコロナ禍で低迷、独BMWとの合弁事業は順調だが、全体の経営悪化をカバーできなかった。
 2)BMWなどとの合弁事業には影響しないという。

●4.米トランプ政権は、中国軍との関係で中国航空機メーカーなど89社の取引制限も(ロイター)

 1)中国企業89社に対して、米国の製品や技術の取引制限措置を検討している。
 2)中国外務省は11/23、「そのような措置に反対する」と述べた。(ロイター、フィスコ)

●5.中国外務省は、米海軍少将の台湾訪問に関し、米台軍事提携に反対し対抗措置も(ロイター)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)11/19、日経平均▲93円安、25,634円
  ・新型コロナ感染が急拡大しており、景気下落リスクが意識され、売り優勢となった。

 2)11/20、日経平均▲106円安、25,527円
  ・日経平均26,000円回復の反動に外資系短期筋の買いが止まり、感染拡大で売り優勢。

●2.外国人投資家vs個人投資家の攻防が激しくなり、上昇相場一服を示唆か?

 1)11月第1~2週の需給推移(億円)
  ・外国人(短期筋)の買いに対し、売りで応じる個人投資家の勢いは上昇相場一服示唆か。
             外国人      個 人   
     第1週   +1兆0990億円買  ▲4,311億円売  
     第2週   +1兆0581億円買  ▲6,883億円売  
     合計   +2兆1,571億円買   ▲1兆1,192億円売   

 2)日経平均と外国人投資家先物手口    
  ・外国人(短期筋)の買いも、売増で日経平均上昇幅縮小、買いエネルギー効率悪化。
             日経平均   外国人先物   外国人先物買い当たり日経平均
     第1週11/02~06 +1,348円高  +29,136枚買い +46.27円/1,000枚当たり
     第2週11/09~13 +1,060円高  +30,307枚買い +34.98円/1,000枚当たり
     第3週11/16~20 + 142円高  +18,767枚買い + 7.57円/1,000枚当たり

 3)本日11/24も外国人の大幅な買い仕掛けがあると予想するが、個人の売り次第に注目。

●3.企業動向

 1)キリン    豪州の飲料事業を、現地の乳業大手に400億円規模で売却(読売新聞)

●4.企業業績

 1)JTB     2021年3月期決算見通しは経常赤字▲1,000億円。6,500人削減(NHK)

■IV.注目銘柄(株式投資は自己責任でお願いします)

 ・6902 デンソー   自動車販売回復、電気自動車増、自動運転の進展。
 ・6594 日本電産   自動車販売回復、電気自動車増。
 ・6141 DGM森精機 中国市場回復。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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