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相場展望11月16日号 株式市場は来年1月大統領就任式までは高い? 今の市場は『金融バブル』で過大評価、お忘れなく
■I.米国株式市場
●1.米株式市況の推移
1)11/11、NYダウ▲23ドル安の29,397ドル
・景気敏感株は短期な過熱警戒で売りに押され、ナスダックは見直し買いで反発。
・米ニューヨーク州は新型コロナ再拡大を受け11/13から午後10時閉店の営業規制。
【前回は】相場展望11月11日号 ワクチン開発・普及が、株・債券などの急落を招く恐れ 株式市場は、(1)米・新大統領(2)ワクチン開発で急騰
2)11/12、NYダウ▲317ドル安の29,080ドル
・景気敏感株の上昇に息切れ感、ワクチン期待と感染増の景気懸念と綱引き。(日経新聞)
・感染者数14万人を超えた感染拡大で景気回復の遅れに懸念。(日本テレビ)
3)11/13、NYダウ+399ドル高の29,479ドル
・新型コロナ感染増で規制強化され、経済成長が抑制される状況の中、ワクチン普及による業績回復への期待が上回り、全面高となった。
●2.株式市場は、実体経済と比べて、大幅に過大評価されている
1)現在は、(1)新型コロナの再拡大により感染者急増中で、経済は低迷しつつありかたや、(2)株式市場は大幅に過大評価されている。
2)株高の要因は、世界各国の中央銀行による超金融緩和策による「金融バブル」にある。
3)これは株式市場にとって、極めて危険な組み合わせになっているとの認識が必要。
●3.トランプ大統領の訴訟内容では結果が覆ることはない
1)訴訟は軽微な違反の可能性について主張しているだけで、重箱の隅をつついている状況。
2)訴訟が選挙人選定の結果を覆すのには至らない模様。
●4.米追加経済対策の成立は、民主党ペロシ下院議長の強硬姿勢が原因で大きく遅れ、景気後退か
1)追加経済対策は米大統領選前に、民主党の2.2兆ドルに、共和党が譲歩し1.8兆ドルまで大幅に歩み寄ったが、民主党ペロシ下院議長の党利党略による拒絶で合意に至らなかった。
2)選挙後、共和党は原案の0.5兆ドル規模案に戻り、返って与野党の溝が深まった。これを受けて、米CNBCが11/12、「数カ月以内の成立は難しい」と報道した。
3)このため、景気刺激策法案が通らないと大きな影響が出ることになる。
(1)個人所得減少への対応ができず、米GDPのウェートが大きい消費部門が減速し、景気後退という事態を迎える可能性が高まる。なお、現行の暫定予算案の期限は12/11。
(2)失業給付割増しは12/31に期限が来るので、年始早々から1,300万人に影響を及ぼす。
(3)レイオフ(一時解雇)が年末に向けて増えると想定でき、第4四半期の経済成長率予想3.8%は楽観的過ぎる数値といえよう。
(4)中小企業への支援もなくなるため、倒産も増えると思われる。
4)WSJの報道によると、家賃支払い猶予措置が失効すれば、3,000~4,000万人が賃貸住居からの立ち退きに直面する恐れがあるという。それが、米景気に負の連鎖をさらに引き起こす懸念がある。
●5.バイデン氏、ハイテク大手には厳しい顔、反トラスト法を重視の公算(ブルームバーグ)
1)バイデン氏は11/10、政権移行への準備として、司法省担当にグーグルを反トラスト法(独禁法)違反で提訴するよう司法省に求めてきた非営利団体パブリック・ナレッジの上級顧問を務めるジーン・キメルマン氏を起用した。
●6.バイデン氏、オバマケア拡充をすぐに着手と表明(時事通信より抜粋)
1)バイデン氏は11/10、新型コロナ対策に次ぐ優先課題として、前オバマ政権が国民皆保険を目指して導入した医療保険制度改革法「オバマケア」の拡充に取組む方針を表明した。来年1月の大統領就任後すぐに、議会と協議を始める。
2)オバマケア廃止を図った共和党トランプ政権を批判した。
●7.米連邦議会選挙は、民主党が過半数維持、上院は共和党が半数の議席を確保(毎日新聞)
1)下院は民主党苦戦で改選前下回る218議席、共和党挽回し201議席、残り16議席。
2)上院は民主党と共和党が同数の48議席を既に確保し、半数の50議席に目途。接戦のノースカロライナ州は民主党11/10敗北宣言、アラスカ州で共和党が大差でリード。ジョージア州の2議席は規定により来年1/5に決選投票。
3)上院の規定では、議席数が50対50の場合は、副大統領(ハリス民主党)が投票し決着。50議席ずつの場合、僅差で民主党がトリプルウィンになる。(バロンズ)
その場合、バイデン氏の経済政策が民主党の票で可決され、税率も引き上げられるだろう。なお、BCAリサーチでは、50対50となる確率を25%としている。
4)下院は、共和党が10議席程度増す模様で、2022年の選挙で挽回に手が届きやすくなった。民主党は議席数を減少させたため、党内の取りまとめが難しくなった。
●8.ファイザー、モデルナCEOらも、ワクチン期待で製薬株急伸し保有株売却(ブルームバーグ)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)11/11、上海総合指数▲17安、3,342
・中国政府によるネット企業の監督強化を強める動きを受け、ITやメディア関連に売りが広がる中、ワクチンの普及への期待が下支え。(フィスコ)
2)11/12、上海総合指数▲3安、3,338
・商品相場の上昇で資源株が高く、小売売上高の伸びで家電銘柄が値上がりしたが、中国政府による信用引き締め懸念が広がり、金融株が下落。(ブルームバーグ)
3)11/13、上海総合指数▲28安、3,310
・人民元建て新規融資が前月から大幅縮小し予想を下回るなど、中国経済指標下振れを嫌気し、買い手控えとなった。(亜州リサーチ)
●2.中国の10月新車販売7カ月連続の増加、背景に経済対策(ロイター)
1)トヨタ+33.3%増、ホンダ+22.3%増、日産+5.0%増、マツダ▲1.0%減。(日本経済新聞)
●3.アリババ、中国「独身の日」の取扱額7兆9,000億円と過去最高(FNN)
●4.トランプ大統領、華為など中国企業31社への投資禁止(NNN)
1)この大統領令は、中国の人民解放軍と近いと認定している航空、宇宙、造船、建設など中国企業31社でファーウェイも含まれる。
2)来年1月11日から対象企業の株式の売買禁止。
●5.華為(ファーウェイ)が苦境のため、格安スマホ事業を1.6兆円で売却(Forbes)
●6.中国の社債市場に国有企業債のデフォルト相次ぎ、信用不安が増す(ロイター)
1)国有石炭会社の永城煤電控股集団は、債券発行後1カ月で元本と利息が支払い不能と発表。
2)精華大学出資の半導体メーカー精華紫光集団の株価と債券価格が急落。
3)独自動車大手BMWの合弁相手の親会社、華晨汽車集団の社債がデフォルト。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)11/11、日経平均+444円高の25,349円
・米株式の上昇の流れを受け、自動車や非鉄金属など景気敏感株が買われた。
・日銀の地域金融機関の経営基盤強化特別制度導入の発表を好感。(時事)
2)11/12、日経平均+171円高の25,520円
・先物の特別清算指数(SQ)算出前の最終日とあって、海外短期筋の買い戻しによる先物主導で日経平均上昇に寄与する値嵩株(任天堂、ファーストリ、ファナック、エムスリー、ソフトバンクG)が急伸、日経平均は8日間連続の続伸となった。
・このため、日経平均だけが高く、TOPIXは下落、値下がり銘柄数が1,365に対し、値上がり銘柄734という歪な現象を生んだ。
3)11/13、日経平均は▲135円安の25,385円
・(1)高値警戒 (2)コロナ感染再拡大による景気後退懸念が出て、売られた。
・下げ幅は一時300円を超えたが、好業績株(ファーストリテイ、東京エレク等)が物色され相場を支えた。
●2.今の相場は『バブル』だが、当面は続く
1)(1)米大統領選の不透明感が後退 (2)新型コロナのワクチンへの期待が広がり (3)長期金利上昇の中、世界的な金融緩和による金融バブルの色彩が一段と強まっている点に留意したい。
NYダウ 11/2~13で、+2,978ドル(+11%)と大幅上昇。
日経平均 11/2~12で、+2,543円(+11%)と急伸。
2)金利上昇による流れを受けて、(1)ハイテク株の割高感への警戒 (2)大規模経済回復対策で景気敏感株とバリュー株の安値見直しへと物色の流れが大きく転換する兆しに留意したい。ただし、FRBの金融政策は当面、金利上昇には抑制的に動くと思われるので、ハイテク株優位が続き、景気敏感株への転換は大規模投資決定後になるとみる。
3)過去の金融バブルはGDP・株式・土地も超バブルだったが、今回のバブルはコロナで、GDPがマイナス圏で推移しているにもかかわらず、各国中央銀行の金融緩和政策と財政拡大政策による過剰マネーが「株価」のみの膨張(バブル)をもたらしているに過ぎない。
4)今回、日本株を買っているのは短期筋のヘッジファンドが主流で、長期投資家が買っているとは見えない。
先物買い残枚数が急増: 10/30 199,917枚 ⇒ 11/12 259,191枚(+59,274枚)
日経平均 : 10/30 22,977円 ⇒ 11/12 25,520円 (+2,543円)
5)直近の日経平均は歪な動き:
11/10 11/11 11/12 11/13
日経平均 +65円高 +444 +171 ▲135円安
値上がり銘柄数 1,377 1,614 734 341
値下がり銘柄数 788 493 1,365 1,789
6)日経平均の予想EPSは1,072円(11/13現在)で、企業業績の改善進まないとみる。
●3.日本株は米株連動で、2021年1月の米大統領就任式までの「ハネムーン期間」は高いとみる
1)来年1月中旬までは、(1)ハイテク株と(2)中国関連の好決算銘柄、を選好したい。
2)来年1月末頃からは、「米ねじれ議会」という現実に向かうため下落局面を想定。
●4.バイデン氏の勝利確実で「バイデン銘柄」の環境関連株に注目(静岡毎日テレビ)
1)クリーンエネルギー、電気自動車(EV)など環境関連銘柄に注目。
2)EV車になれば、部品点数の減少、軽量化、小型化と相当な影響が出る。
●5.新型コロナ感染者11/13、全国で過去最多を更新、「第3波」が鮮明(毎日新聞)
●6.日本の粗鋼生産10~12月は前期比+15%増の2,181万トンと回復へ(鉄鋼新聞)
●7.Go Toイート早くも終了へ、ポイント予算616億円の底をつく (朝日新聞・テレビ朝日)
1)国交相「Go Toトラベルは延長したい」と、2月以降の延長の考え表明。(TBS)
●8.企業動向
1)ホンダ 世界初の自動運転「レベル3」機能搭載車を今年度中に販売。(NHK)
2)ツインバード マイナス80度対応可能でワクチン輸送・保管に使う保冷庫の期待。(日経)
3)近畿日本ツー 従業員3分の1削減、店舗3分の2閉鎖。(読売新聞)
4)航空大手賞与 JAL0.5カ月と8割減、ANAはゼロで組合と交渉。(共同)
5)ニトリ 島忠の子会社化で合意し、来週にも公開買付けへ。(日本テレビ)
6)すかいらーく 200店舗閉鎖へ
7)大同特殊鋼 EV主機モーター用新磁石を来年に量産体制確立。(鉄鋼新聞)
●9.企業業績
1)上場企業の上半期純利益は改善傾向も▲40%減の見込み(朝日新聞から抜粋)
・東証1部の3月決算企業1,331社(金融除く)の内、11/10までに決算発表した1,031社(対象の77%)をSMBC日興証券が集計した。
・早期回復が目立つのは自動車業界で、中国と米国の需要が戻り始めたトヨタなど大手3社が上方修正した。自動車部品も同様の動き。
・テレワーク関連の東京エレクトロン、ゲームのソニー、加工食品の味の素が上方修正。
2)三越伊勢丹 2021年3月通期、最終赤字▲450億円に。(時事)
3)三菱地所 第2四半期の営業利益+6.3%増の980億円、資産売却益含む。(フィスコ)
4)日産自動車 上期の純損失▲3,299億円、コロナで販売台数落ち込む。(東京商工)
通期予想を▲6,150億円の赤字と、上方修正した。
5)私鉄大手 上期は14社が全て赤字。鉄道・ホテル・レジャー事業が深刻。(共同)
6)レオパレス 上期決算で最終赤字▲175億円。
■IV.注目銘柄(株式投資は自己責任でお願いします)
・5201 AGC EUV露光用のマスクブランクスが好調。
・9022 JR東海 黒字化期待。
・9740 セントラル警備 業績堅調。
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