トヨタ・ミライは真に未来なのか? 航続距離850kmなら純粋水素でも実用になる?

2020年11月6日 08:08

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東京モーターショー2019で発表された「MIRAI Concept」。(画像: トヨタ自動車の発表資料より)

東京モーターショー2019で発表された「MIRAI Concept」。(画像: トヨタ自動車の発表資料より)[写真拡大]

 トヨタが、12月にFCVの新型・MIRAI(ミライ)を発売する予定だ。FCV(燃料電池車)が普及しないのは、純粋水素スタンドが普及してこないからだ。1か所5億円すると言われる水素スタンド建設コストでは、水素スタンドの数が増えない。しかし、FCVの最高航続距離が850kmとなると、東京と大阪に1件ずつ水素スタンドがあれば事足りることになる。これなら実用車として考えることが出来るであろう。

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 「FCV」は、99.99%純度の水素を燃料として、酸素と化合させて電気を生み出すことになる。一方、「水素エンジン」は、この純粋水素と二酸化炭素(CO2)を化合させてメタンガスを生成して、「e-gas」として水素エンジンの燃料となる。ガソリンエンジンを少々調整すれば運転出来るようだ。マツダ・ロータリーエンジンなら、すぐにでも切り替えて利用できるという。

 メタン(e-gas)は水素の純度が低いため、ガソリンスタンドを小改造すれば取り扱うことが出来るようだ。これがメリットとして注目され始め、FCVよりも水素エンジンの方が普及が早いのではないかと見られている。しかし、トヨタ・新型ミライが最高巡行距離850kmを実現して、話が違ってくるかもしれない。利便性では劣るが、長距離の旅に出かける場合に「給油(給水素)」が1回で済むとなると、拠点に水素スタンドがあれば実用性が高くなるのではないかと考えられる。

 欧州では「エンジン」の生産を続け、自動車産業としての雇用を守るには「メタンガス利用が必要」との結論に達しているのではと強く推測できる。また、中国では自動車産業が育っていないので、FCVでもHVでもBEV(純電気自動車)でも構わないと言う産業政策としての立場がある。BEVには発電方法の問題があるため、普及させたとしてもCO2排出を止め、地球温暖化に貢献できないかもしれない。

 現実として地球温暖化阻止に努力しなければならない状態だが、BEVで効果を確信できるわけもなく、「e-gas」の利用は現実的解決法であると見える。問題は、「グリーン水素(再生可能エネルギー由来水素)」を誰が造るのか?である。グリーン水素生成は石油由来ではなく電気分解で水から作る必要があり、この設備投資を受け持つのはどこか?なのだ。巨額の費用がかかる設備投資であるので、世界で「e-gas」の生成が進めば、「e-gas」の利用に進むべきなのであろう。

 一方で、FCVに使われる99.99%の純度を誇る水素を作るなにものかが生まれたとしても、必要なステーションを作るのには時間を要する。また、その初期投資に大きな負担がかからない商法が工夫されるべきであろう。

 新型トヨタ・ミライは、より現実的に普及させるべき仕様を用意してきている。プラットフォームも変えてより量産に耐える用意と共に、FFからFRへと移行して「プレミアムブランド」としての体裁を整えている。実験車から実用車に向かって一歩前進したと言えるだろう。トヨタの本気度が窺える。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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