資産運用の成功は少額積立の長期投資で ロジックでは投資行動をコントロールできず

2020年10月27日 17:18

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 日経新聞のコラムで、積立王子ことセゾン投信の中野会長による資産運用成功のコツが論じられている。『人はロジックに応じた行動ができない感情優先の生き物であるため、衝動的な投資行動による損失リスクを軽減するために積立タイプの長期投資が相応しい』との持論を展開していた。

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 先のリーマンショックや今回のコロナショックの大暴落で、慌てて損切をした投資家は大きな損失を被った。また、下落後に早めの一括投資で大きな利益を上げた投資家も多い。これが意味するところは、投資家の本質は目先の相場変動に振り回され、ギャンブル性の高い投資手段に走ってしまう傾向が強いことだ。

 金融市場がはじまって以来、世界経済は相対的に右肩上がりの相場を継続していることは周知の事実。IMFの過去データから日興アセットマネジメントが作成した『世界の名目GDPと株価の推移のグラフ』を見ると、1988年より30年余りで世界のGDPも株価指数も、ともに右肩上がりを継続している。現時点ですでに4倍以上に上昇しているのだ。

 ならば、現物で購入した株をただ保有していれば含み益と配当金で十分に資産は拡大していくはず。つまり、投資の王道は長期投資で間違いがないが、人の感情・欲望はその程度の緩やかな資産拡大に満足できない。

 コロナショックで日経平均が30%も暴落し、その後4カ月で値を戻している事態を目撃してしまえば、投資家としてはただ黙って傍観するのは難しい。資金力の弱い個人投資家は、ここをチャンスと3倍のレバレッジを利かせた信用買いで一括投資に走る。

 確かにV字回復をしたのだから利益をあげた者も多いが、その間に大きく乱高下をしたため、証拠金が飛ぶ程の損益を抱えたケースも少なくない。つまり、今どきのトレーダーには『乗り遅れたら損だ』という欲望が引き起こす衝動的行動によって、無駄に資金を失ってしまうリスクがあるのだ。

 一方で投資王バフェット氏のように、リーマンショックでもコロナショックでも慌ててポジションをいじらずに、長期保有のスタンスで利益を拡大させている投資家も多い。

 そこで中野氏が提案しているのが、積立投資である。一生涯でコツコツと積立をするように投資資金を増額させていくことで、相場の変化に惑わされない投資スタイルがキープできるということだ。経済が右肩上がりに成長している間は、相場が下がったタイミングをむしろ好機と受け止め、そこを狙って少額の資金投資を積み上げていく。この手法であれば日々の変動に一喜一憂するストレスを回避し、実生活を楽しむ余裕がでてくるはずと中野氏は言う。

 なお、現在は資産運用をロボアドバイザーなどのAI管理で運用させるシステムが提供されている。株式銘柄を選んだり、デリバティブ商品を入れ替えるなど、ポートフォリオ上で判断の難しい部分はロボアドバイザーに任せてしまうのも得策だ。

 各ポジションは長期保有の設定にし、利率の悪い銘柄だけを入れ替える長期投資スタイルが好ましい。このように、積立ていく資金の資産運用をすべてAI管理でフルオートマネジメントしてもらえば、個人投資家は単に預貯金をする感覚で積立投資が実践できるだろう。しかも、運用利率は銀行の利息などよりもはるかに高い。

 とどのつまり、頻繁な売買で利益を稼ぐ投資は単なるギャンブルであり、計画的に資産を拡大させるための資産運用としては不適切な部分がある。そうではなく、個々の投資家の収入に合わせた定額積立の投資法をベースに、安定した利回りが期待できる投資ツールを利用することが有効策だ。一定ペースでコツコツ資金を積立ていく資産運用こそが、生涯をかけた財産造りの必勝法ではないだろうか。(記事:TO・記事一覧を見る

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