5分で分かるドコモTOBと大戸屋TOB 後編

2020年10月25日 19:50

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 株主は株価が上がれば経営に大いに賛同し、下がるのであれば経営に物言いをするのが基本だ。つまり、手持ちの株価を1.5倍でコロワイドに売るか、それとも大戸屋ホールディングスの経営に任せて株価が1.5倍になるのを待つか、という選択肢を迫られたことになる。コロナウイルス禍の影響を多大に受けていた大戸屋ホールディングスを目の当たりにすれば、前者を選びたくなるのもやぶさかではないだろう。

【前回は】5分で分かるドコモTOBと大戸屋TOB 前編

 最終的には、応募期限としていた9月8日までに200万株を集め、TOBの下限である151万株を上回ることになる。これでコロワイドの持ち株比率は46.7%までに高まったが、取得費用は約61億円に上ったことからもわかるように、コロワイドにそれだけ体力があったことも勝因の1つといえよう。

 もちろん、大戸屋ホールディングスも敵対的TOBに抵抗しなかったわけではない。大戸屋ホールディングスの将来性を見込んだ、友好的な第三者であるホワイトナイトを探したが、見つけることができなかったのだ。このように、かの倍返しドラマのストーリーのような、激しい攻防が行われた結果、コロワイドの敵対的TOBは成立したのである。

 さて話は変わり、TOBの成立時点で、NTTドコモや大戸屋ホールディングスの株主となっていた場合には、保有している株式をどうしたらよいのだろうか。大戸屋ホールディングスについては、株主優待として食事券が手に入ることもあり、個人投資家の間で人気の銘柄でもあったのだ。

 この場合に株主が取りうる手段は、(1)TOBに応じる、(2)通常通り売る、(3)保有し続ける、の3つだ。TOBに応じる場合には、公開買付の代理人となっている証券会社に口座を開設し、株式を移管する手続きが必要となる。

 この手間を省きたい場合には、市場で売却することも可能だ。プレミアムの上乗せが受けられるTOBではなく、通常の売却を選ぶことで損をすると思われるかもしれないが、TOBによりプレミアムが乗せられた価格が市場に提示されると、市場価格もそれに合わせるよう値上がりするのが通例だからだ。

 もし、TOBの価格が低いと感じるようであれば、そのまま株式を保有することも可能だ。ただし、NTTドコモのように上場廃止が予定されている場合には、個人投資家が保有する株式を強制的に買い取る「スクイーズアウト」を経ることになるだろう。

 最後にNTTドコモのTOBによる株式市場への影響について触れておく。今回のTOBにおける買収総額は4兆円を超え、国内企業へのTOBでは過去最大だ。TOBによって売却を経た個人投資家の投資マネーが新たな投資先へと向かい、結果として、日本市場全体の株価押上げにつながる可能性があることは意識しておきたいところだ。TOBの応募期限は11月16日に迫っている。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る

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