相場展望10月8日号 向こう見ずな米大統領に振り回される相場 米国、『中国製造2025』と『ファーウェイ』の締付け強化

2020年10月8日 08:24

小

中

大

印刷

■I.米国株式市場

●1.米株式市況の推移

 1)10/5、NYダウは+465ドル高の28,148ドル
  ・トランプ氏の早期退院とのツイッターで米政治混乱への過度な警戒感が和らいだ。
  ・NYダウ構成の全30銘柄が上昇した。
  ・ハイテク株に買い優勢で、アップル+3%高、マイクロソフト+2%高だった。

【前回は】相場展望10月5日号 (1) トランプ氏感染 (2) 議会停滞で遠のく米経済追加対策 (3) 米雇用改善の勢いが鈍り、景気の2番底が懸念

 2)10/6、NYダウは▲375ドル安の27,772ドル
  ・トランプ氏の大統領選後まで、新型コロナ追加経済対策の議会協議の先送りを受け大幅下落、ハイテク株に売り。
  ・追加経済対策成立後退で、インターネット通販のアマゾンやスマートフォンのアップルなど主力ハイテク株に売りが出た。
  ・11/3に迫った米大統領選での民主党の勝利、米議会による規制強化が重荷となる。

 3)10/7、NYダウ+530ドル高の28,303ドル
  ・トランプ大統領のツイッターを受け、航空業界や中小企業への公的な支援に乗り出すとの期待からNYダウは前日から一転して、530ドル高と大幅な値上がりとなった。共和党・民主党も協議に応じる姿勢を示した。

●2.向こう見ずな米大統領に振り回される相場に懸念、支持率低下すると過激な行動もあり得る(トレダーズ・ウェブより抜粋

 1)トランプ大統領、入院からまる3日で退院、不安も
  ・退院前日に病院の周りを回ったこと、退院後にホワイトハウスのバルコニーでマスクを外したことなどで、ウイルス感染しているにもかかわらず他者を顧みない大統領の行動を非難する声が高まっている。
  ・トランプ氏が再選するために、より過激な一手を打ってくる可能性がある。

 2)世論調査は、まだ誰に大統領選挙を投票するか決めていない有権者が8~9%いるようだ。

 3)トランプ氏は幅広く支持を得ることが可能な、
  (1)中国への圧力を加える
  (2)イランなどの米国が攻撃しやすい国への挑発
   など、支持率拡大のための次の一手次第で、市場は大きく動く可能性がある。

●3.トランプ氏は第2回大統領候補者討論会10/15に意欲、バイデン氏は牽制発言

●4.パウエル米FRB議長の10/6講演内容(日本経済新聞より抜粋

 1)「金融政策と財政政策がそろって機能し続ければ、経済の回復はさらに強く、早くなる」と述べた。

 2)一方、経済対策の協議の進展がなければ、「景気持ち直しの勢いは弱くなり、家計やビジネスに不必要な困難を作り出す」とも警告した。

●5.米民主党下院が主導の反トラスト小委員会で、GAFAの分割を提言、実現性は不透明

●6.米10年長期国債利回り0.784%と上昇、米経済対策の協議で(10/7)

●7.米8月JOLT求人件数は 4カ月ぶりに減少、労働市場に陰り(ロイター通信より抜粋

 1)米労働省が発表した8月JOLT求人件数は649万人と、7月669万人から小幅減少。

 2)新型コロナの感染が一部で拡大し終息が見られず、需要の回復が停滞している。労働市場回復への自信が維持出来ない場合、今後の消費動向にも影響を与えかねない。経済成長を抑制する可能性も懸念される。

 3)雇用や景気回復を支援するために、金融・財政刺激策の維持が非常に重要となる。

●8.米サプライマネジメント協会(ISM)が10/5発表の非製造業景況感指数は57.8と改善

 1)前月比+0.9ポイント上昇し、市場予想57.0をも上回った。

 2)景気の好不調の分かれ目となる50.0を4カ月連続で上回り、米景気の底堅さが意識された。

●9.米8月貿易赤字▲671億ドルと14年ぶり最大

 1)赤字幅は、7月▲634億ドルから予想以上に拡大し、2006年8月以降の14年ぶり最大となった。

 2)赤字の予想以上の拡大は、7~9月期国内総生産(GDP)の成長率にマイナスに働く。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数 

 1)国慶節で休場。

●2.中国・半導体受託製造のSMICに対し米国政府の制裁が発効し、『中国製造2025』が危うい

 1)中国の半導体製造装置メーカーの現状
  ・中国の最先端半導体装置メーカーの製造能力は、上海微電子で90ナノメートル(nm)までである。 
  ・従って、90nm以下で12インチウエハー工場向けの製造設備は、米国などの企業の半導体製造装置が必要となる。
  ・台湾の調査会社・集邦科技(トレンドフォース)によると、「中国は半導体設備の自給出来る可能性は向こう10年間、極めて低い」とする報告を発表した。

 2)中国半導体生産の筆頭である中芯国際集成電路製造(SMIC)の現況
  ・SMICにとって最先端に当たる14nm半導体生産は2019年10~12月期に始めたばかりであり、総生産量に占める14nmはわずか1.4%程度に過ぎない。その製造装置は米国のアプライド・マテリアルズやラムリサーチ、KLAからの輸入に頼っている。
  ・SMICは、米国政府の制裁が発効したことを10/4に認めた。これにより、SMICは米国の半導体製造装置を購入出来なくなり、
   (1)主力半導体生産の28nm以上の生産能力拡大
   (2)新規先端半導体14nm以下の製造プロセスの生産計画
   ともに支障が出る見通し。

 3)中国政府の計画『中国製造2025』は実現不能に
  ・中国政府は、半導体生産能力を向上し、2025年に半導体自給率を30%⇒70%にする計画を建て実行してきたが、米国制裁で実現不能になった。
  ・世界の半導体生産の筆頭は台湾TSMCであり、中国はSMICを先頭にして急迫してきた。しかし、今回の米国の制裁でその計画に狂いが生じ、後退を余儀なくされる模様。

 4)世界の半導体関連企業は、中国ファーウェイへの半導体輸出の停止で約1兆円の打撃
  ・世界最先端の半導体受託生産会社である台湾積体電路製造(TSMC)は、華ため技術(ファーウェイ)に先端半導体等を輸出してきたが、9/15から出荷を停止した。
  ・日本のキオクシアやソニー等も9/15からファーウェイ向け半導体の輸出を停止した。米商務省に輸出許可申請するとしているが、その見通しは不明。
  ・韓国のサムスン電子、SKハイニックスも9/15、ファーウェイ向け出荷を停止した。

 5)世界最先端の半導体生産会社の開発状況は回路線幅が2~5nmレベルにある(日経新聞より抜粋
  ・中国は先端半導体の開発と生産で追撃していたが、制裁で大きく後れを取る要因を抱えた。中国SMICの先端品は14nmで、台湾TSMCとは大きな技術格差がある。
  ・台湾TSMCは、2nmの超高性能半導体を製造するために、台湾で工場用地取得を進めている。その投資額は2兆円程度で、2024年前後に量産するものと見られる。
  ・TSMCでは現在実用化している最先端品は5nm。3nmについても現在、台湾南部の台南市で工場建設が進められ、2022年下期に量産を予定。
  ・韓国サムスン電子の先端品は5nm。
  ・米インテルは、7nmの量産に手間取り、投入時期が2022~2023年まで遅れることが明らかになった。

 6)米国政府の制裁により、米中間の(1)スマートフォン(2)兵器等の半導体を使った製品に技術格差が拡大
  ・注目は、米制裁が中国ファーウェイとSMIC以外の企業に広がるかどうか、である。米国は2社の制裁を強化したが、上記2社以外の中国企業を経由した迂回輸入の窓はまだ開いているからだ。

 7)3nmの用語、用途、顧客
  ・用語: 半導体製造では微細な回路を描くが、細いほど半導体の性能と電力消費効率が優れる。
       ナノ(nm)は、10億分の1メートル。
       3nmは、髪の毛の太さの3万分の1の細さのこと。
  ・用途: 3nm半導体の用途は、(1)AI(人工知能) (2)5G (3)自動運転車 (4)クラウドコンピューティングなどに適用される。
  ・顧客: アップル、グーグル、エヌビディア、サムスン電子、ファーウェイ等多数

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)10/5、日経平均は+282円高の23,312円
  ・トランプ大統領が5日にも退院すると伝わり、市場に安心感が広がり、短期勢を中心に買い優勢となった。
  ・米大統領選をめぐり、市場では先行きの不透明感は高まっており、様子見の声が高まっている。

 2)10/6、日経平均は+121円高の23,433円
  ・米株連動ながら一部外人の買い戻しで閑散取引。

 3)10/7、日経平均は▲10円安の23,422円
  ・朝方はNYダウ下落を受けて下落して始まったが、トランプ大統領が航空業界や中小・零細企業向け支援策をツイートし、米景気への懸念が薄れ日経平均は下げ幅を縮小した。

●2.GoTo利用、延べ1,689万人、旅行割引支援額は735億円

 1)観光庁は10/6、「GoToトラベル」で9/15までに宿泊した人は1,689万人と発表。

●3.ダイキン工業、空気清浄機の生産の一部を、中国から日本国内生産へ移管

●4.中国による日本の国債購入が4~7月に約1.4兆円(前年同期比3.6倍)と急増

 1)米国債利回りは約0.7%程度だが、日本10年国債利回りはゼロ金利だがドルを円転換して購入すると約1.2%となり、米国債の利回りを上回ることになるため。

●5.企業動向

 1)エアアジアJ: 12/5で全路線廃止し、日本から撤退。
 2)JAL    : 11月の国際線82%減便。
 3)HIS    : 増資で226億円調達、旅行需要低迷のため財務基盤を強化。
 4)富士通・ファナック・NTTコム : クラウド新会社で製造業のデジタル化を支援。
 5)ファミマ : 3~8月期最終損益は▲107億円の赤字、事業利益は回復傾向。
 6)イオン  : 中間決算▲575億円の赤字、新型コロナで休業・時短などが影響。
 7)ANA   : 年収3割減を労働組合に提案。新型コロナで航空需要が激減。

■IV.注目銘柄(株式投資は自己責任でお願いします)

 ・4063 信越化学      好調な米住宅向け塩ビ製品、半導体用シリコンウエハーに期待。
 ・4369 トリケミカル研究所 半導体用高純度化学化合物に期待。
 ・6289 技研製作所     油圧式杭圧入機、前期比利益は減益ながら今期計画比順調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

記事の先頭に戻る

関連キーワード日経平均NYダウアメリカ中国自動運転富士通台湾中小企業半導体貿易赤字ダイキン工業ファナック技研製作所

関連記事

広告

写真で見るニュース

  • ボルボ「S60」(画像: ボルボ・カー・ジャパン発表資料より)
  • ミニムーン20CD3 (c)  International Gemini Observatory / NOIRLab / NSF / AURA / G. Fedorets
  • SUBARU Labが入るH¹O渋谷三丁目の共用ラウンジのイメージ(画像: SUBARU発表資料より)
  • N-BOX、N-BOXカスタム:発表資料より
  • 新型N-ONE RS(画像: 本田技研工業の発表資料より)
  • モーガン・エアロ 1922年式 (c) sawahajime
  • 星間物質で満たされたオリオン座の大星雲M42の内部 (c) NASA
 

広告

ピックアップ 注目ニュース