相場展望9月23日号 欧州発の世界株式大幅下落(9/21) 1.欧州でコロナ感染急拡大 2.大手金融機関の資金洗浄発覚 3.米国政治混乱で経済失速懸念(1/2)

2020年9月23日 09:17

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■I.米国株式市場

●1.米株式市況の推移

 1)9/16、NYダウは+36ドル高の28,032ドル

【前回は】相場展望9月16日号 『日経平均は、米株の下落に逆行して株高』の理由 ソフトバンクGは英アーム全株売却で株高

 2)9/17、NYダウは▲130ドル安の27,901ドル、ナスダック総合は▲140安の10,910
  ・米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が「量的緩和の強化を示唆せず」、市場の期待は後退した。ダウは寄付きで一時▲320ドル超安、引け値は▲130ドル安。
  ・アップルなどハイテク主力株が売り先行し、ワクチンの早期普及も期待が後退し、心理を冷やした。

 3)9/18、NYダウは一時▲400ドル下落、引け値は▲244ドル安の27,657ドル
  ・追加経済対策を巡って米政権と議会の協議が膠着し、成立時期が見通せない中、景気敏感株は売りが先行。
  ・追加経済対策が大幅遅延なら、年後半から来年初めにかけて、米経済が下押しするとの懸念が強い。
  ・ハイテク株は9月に入って調整基調が続き、売買が交錯している。

 4)9/21.NYダウは▲509ドル安の27,147ドル、1カ月半ぶり安値
  ・英国での新型コロナ感染急拡大、大手銀行の資金洗浄などの報道を受けて投資家心理が悪化し、一時▲900ドル超安となったが、引けにかけて下げ幅を縮小した。
  ・独DAX▲4.4%、仏CAC▲3.7%、英FTSE▲3.4%、米NYダウ▲1.8%安。

 5)9/22、NYダウは+140ドル高の27,288ドル
  ・売りが続いたハイテク株だがアマゾンの牽引で軒並み上がり、投資家心理が改善した。

●2.欧州発の世界株価下落(9/21)

 1)要因
  (1)欧州で新型コロナ感染拡大第2波と、都市封鎖再開で経済活動停止の恐れ

  (2)大手金融機関が、総額2兆ドルもの不正資金のマネーロンダリング(資金洗浄)を野放しに行っていたことが、フィンセン捜査資料で明らかになった。
   ・フィンセン(FinCEN)とは、米財務省金融犯罪取締ネットワーク。米ドル建ての不審な取引は、米国内外のものでもFinCENへの報告が義務付けられている。
   ・関与:英HSBC(香港上海銀行)、英バークレイズ、アラブ首長国中央銀行(UAE)、独ドイツ銀行、英スタンダード・チャーター銀行、米JPモルガン・チェースなど。
   ・英HSBCの株価は1995年以来となる水準まで下落している。

  (3)米国では連邦最高裁判所判事の欠員補充の混乱から、新型コロナ救済法案の遅延が懸念。

  (4)トランプ大統領は、中国TikTokの米国事業でオラクルなどとの合意に対して、原則同意した模様だが、このまま対中政策を緩めると考えるのは時期尚早。

  (5)米大統領選挙結果について双方が納得せず最高裁判決となる可能性への懸念。

●3.フィンセン文書で明らかになった内容(BBCの報道などから抜粋)

 ・1999年~2017年だけで、取引金額2兆ドル以上、2,657件の文書で成り立っている。
  1)英HSBC 
   ・米捜査当局から、詐欺に利用されていると指摘を受けた後も、世界中で数百万ドルもの不正資金の取引を看過していた。
   ・タリバン系の資金移動を許可。
   ・イラン制裁を回避した金融取引を提供。

  2)米JPモルガン ・オフショア企業の所有者を把握しないで、ロンドンの口座に10億ドル以上の送金を認めていた。
   ・後に、この企業の所有者が、米連邦捜査局(FBI)の「10大重要指名手配犯」の1人でロシア・マフィアのボスだと判明した。

  3)英バークレイズ・ロシアのプーチン大統領の側近の1人は、制裁によって西側の金融サービスの利用を禁じられたが、ロンドン支店の口座を使って回避させた。この口座の資金の一部は美術品の購買に使われた。

  4)米バンク オブ アメリカ
   ・スイスに逃亡した政治家の不正な取引を処理。

  5)米シティ
   ・スイスに逃亡した政治家の不正な取引を処理。

  6)UAE中央銀行
   ・イラン制裁を破った企業への警告を受け取ったにもかかわらず対策しなかった。

  7)ドイツ銀行
   ・組織犯罪やテロ組織、違法薬物の密売人などの資金洗浄の温床になっていた。
   ・不審取引総額2兆ドルのうち、ドイツ銀行が1.2兆ドルを占め、コンプライアンスへの疑念が強まった。

  8)英スタンダード チャータード
   ・10年以上にわたってテロ組織の資金源となっていたヨルダンのアラブ銀行への資金移動を認めていた。

  9)フィンセンの情報部は、英国とキプロスを「高リスク区域」に指定している。フィンセン文書に出てくる英企業は3,000社以上と、どの国よりも多いため。英政府は、詐欺や資金洗浄の取締のために、企業の登記方法の改革を明らかにした。

  10)日本の銀行
   ・日本の銀行取引でも不審取引57件が記録。

●4.ドル安・円高の予想

 1)想定は、
  (1)抵抗ラインは、105.00円。
  (2)下値目途は、節目の104.00円を下抜けすると103.09円。

●5.米住宅着工件数、8月は141.6万戸と前月(149.2万戸)比減少し、予想(148.8)を下回る

●6.米ハイテク株が米株式相場の高値を主導する局面は終わりに近づいているかもしれない(ブルームバーグの報道から抜粋

 1)ナスダック100指数は9/17、一時▲2.8%安と大きく下げた。9/18も▲1.1%安。ナスダック総合は9/21で4日間続落し、9/2に付けた過去最高値からの下落率が『調整局面入りを意味する10%』を再び超え▲10.6%安となった。なお、9/22は反発もあって最高値から▲9.1%安になっている。2020年の株価反発の原動力となった大型テクノロジー株の下落が重石となっている。

 2)その要因は、9/16~17開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、
  (1)インフレ率が一定期間で2%となるまで、金利を低水準に据え置とくコミットする、
  (2)一方、債券購入計画に新しい詳細を示さなかった、
 ことに一因がある。このため、FOMCで様子見していた投資家が動き出し、「夏場に急騰したハイテク株への利益確定売りが再開している」との声が聞かれた。

 3)量的緩和(QE)について、新たなコミットメントがなかったことで、ハイテク株の間に動揺が広がった。ハイテク銘柄は、新型コロナ感染拡大に伴う在宅の小口投資家による取引増加に加え、超低水準の金利の恩恵を大いに受けてきたという背景がある。

 4)ゼロ近辺の借入コストは、ハイテク株の非常に高いバリュエーションを正当化する要因の1つとなり、ナスダック100指数は3月安値から約+58%押し上げられたものの、期間が長めの米国債債券相場急落(金利上昇)がこうした株高を冷やす形となっている。

 5)米連邦準備制度理事会(FRB)の金融緩和の長期化が米株式市場の支えとなる一方、金利低下の余地は乏しい。将来の株式リターンが過去に比べて限りなく小さくなる「失われた10年」を予想する声が出てきた。

 6)FOMC後の下落が、
  (1)一時的な調整継続なのか?
  (2)FRBに頼り切った相場の変調なのか?
 今後の米国株の動向に注意。

●7.米カリフォルニア連邦地裁は9/20、WeChatのダウンロード禁止の大統領令を差し止めた

 1)WeChatは中国IT大手の騰訊控股(テンセント)の傘下で、米国でのユーザーは1,900万人。
 2)米政府は控訴すると見られる。

●8.中国の字節跳動(バイトバンス)の保有のTikTokは、米国での大統領令による禁止を回避?

 1)米オラクルとウォルマートと提携し、3社で米国に新会社設立で合意。
 2)中国紙では、字節跳動が新会社の株式の80%を所有し、米側は少数株主で中国が支配。米側の言い分は、親会社・字節跳動の株式40%が米投資会社所有で、持分を合計すると新会社の53%が米側にあると主張しているが、これは詭弁。
 3)中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報は、「米国の『強奪』に反対する」と表明。米事業の提携案に関し、中国政府が承認する可能性は低いとの見方を示した。

●9.米商務省発表の4~6月期貿易経常収支は▲1,705億ドルの赤字

 1)赤字幅は1~3月期の▲1,115億ドルから予想以上に拡大し、2008年7~9月期以来の最大赤字となった。

●10.企業動向

 1)ニコラ
  ・電気トラック製造で株価急騰したが、創業者の会長が辞任し経営に不透明感がでて、一時▲29.7%安の24.05ドルを付け、引け値は▲19.3%安。
  ・ニコラには技術などを誇張してきたという疑惑が浮上している。
 2)カビリアン
  ・欧州各国のコロナ感染急拡大で、クルーズ船運航を再開しにくいとの見方が広がり、9/21に▲7.2%安の60.7ドル。

続いて、「中国株式市場」、「日本株式市場」の分析、「注目銘柄」へ

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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