相場展望8月25日号 バイデン氏を待ち受ける『チャイナ&ウクライナ疑惑』 米8月経済指標は足踏み示し、市場は膠着・個別物色(1/2)

2020年8月25日 08:04

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■I.米国株式市場

●1.米株式市況の推移

 1)8/20、NYダウ+46ドル高、ナスダック総合は史上最高値更新。
  ・新規失業保険申請件数の予想以上の増加、8月製造業景況指数が予想を下回った。
  ・米景気懸念から朝は売り優勢だったが、アップル・マイクロソフト・インテルの3社でダウを+110ドル押し上げたため、引け値は+46ドル高。

【前回は】相場展望8月19日号 バフェット氏の『航空・銀行株売り×産金株買い』を考察  『景気後退の長期化』と『悪性インフレ』への対応か

 2)8/21、NYダウ+190ドル高の27,930ドル。アップル高による貢献分が+165ドル。
  ・米8月製造業PMIは53.6と予想(52.0)を上回った。7月の50.9も上回った。
  ・米8月サービス業PMIも54.8で、予想(51.0)と7月の50.0も上回った。

 3)8/24、NYダウ+378ドル高28,308ドル、2/21以来の高値、ナスダックとSP500最高値
  ・米食品医薬品局(FDA)がコロナ治療法(血漿投与)を特別認可したのを受け、経済正常化に向かうという期待から買い優勢となった。
  ・来夏までに一部国際線の運航開始発表でデルタなど空運株、ボーイングが上昇。
  ・アップルが503ドルと連日上昇、長期金利上昇で銀行株高。

 4)8月の経済指標は足踏みを示すものが出てきており、今後の株式市場は材料不足もあって膠着感が強まるとの声もある。
  ・7月以降の感染拡大により、多くの州が経済の一部再開休止や営業制限を求めた影響で経済活動が鈍っているとの見方がある。
  ・追加の経済対策も共和・民主党間で具体的な進展が見られない。
  ・特別認可のコロナ治療法も血漿投与できる「人数に限りあり」。
  ・国際線運航開始も「一部来夏に向って」であり、長期金利上昇も「僅か」、に注意。

●2.バイデン氏を待ち受ける『チャイナ&ウクライナ疑惑』が拡大する可能性

 1)チャイナ疑惑
  1. バイデン氏が大統領になれば、中国の国益にかなうことは間違いない。
   (1)対中国制裁関税を撤廃する意向を表明。
   (2)バイデン政権が誕生すれば、中国に対して融和政策を取ることを示唆。
    ・オハイオ州の集会(2020年5月1日)で「中国は悪い人々でない、脅威でない」と中国共産党政権を擁護する発言をした。(米保守系NYポストは、バイデン氏の主張に真っ向からの反論を掲載)(民主党のバーニー・サンダース氏もバイデン氏の対中姿勢を「間違っている」と批判した)
    ・共和・民主党を越えて中国に厳しい対応を示している中で、このバイデン氏の中国寄りの発言は異彩を放っていた。

  2. バイデン氏の息子ハンター・バイデン氏も、恩恵を受けるだろう。(NEWSポストセブン)
   (1)ジョー・バイデン氏は現職の副大統領時代(在任期間2009年~2017年)の2013年12月に中国を公式訪問した。その米政府専用機に次男ハンター氏も同乗した。ハンター氏は中国で投資会社を設立しようとして中国を訪れた。
   (2)2人が中国滞在10日間内の12月中に中国政府から営業許可が下り、中国国営で中国政府系・中国銀行の子会社と、米投資会社ローズモント・セネカ社との間で米中合弁投資ファンド・渤海華美(BHR社)を新設し、ハンター氏も取締役に就任した。
    ・投資先は中国企業 
     中国・北京曠視科技(Megvii):中国公安採用の顔認証プラットフォームなど。
    ・中国におけるハンター氏の特別な地位
     ハンター氏は中国政府系銀行と上海自由貿易地域で取引ができる。これは米金融大手(ブラックロック、ゴールドマンS等)でも成し得ない取引といわれる。
   (3)加えて、ハンター氏が代表のヘッジファンドのローズモント・セネカ・パートナーズ社に中国の銀行から10億ドルの出資金が振り込まれ、その後に15億ドル(約1,650億円)に増額された。
   (4)この時バイデン副大統領(在任期間2009年~2017年)は、中国が東シナ海上空に防空識別圏を設けるとの発表に対し『絶対に認められない』と語ったが、習主席との会談では『深い懸念』を伝えるにとどまり、日本などの期待を裏切った。
   (5)ハンター氏は、過去10年間、中国国有企業の支援を受けた中国企業の投資会社BHRの取締役を務めてきた。
   (6)ハンター氏は、2017年10月にBHRの株式の10%を42万ドルで購入したという(NYタイムズの報道)
   (7)ハンター氏は2019年10月末にBHRを退職し、「父親のジョー・バイデンが大統領に就任した場合、その在任期間中に外資系企業の勤務や取締役就任を控える」と表明した。

  3. ただ、トランプ氏もロシアからの融資などで『ロシア・ゲート事件』と騒がれた結果、公約したロシアとの融和政策への転換を果たせなかった。最近もG7を拡大してロシア等を含めたG11やG12に改組する提案をしたが、G7各国から賛同を得られていない。同様に、バイデン政権になってからも『バイデン親子のチャイナ疑惑』と攻撃され、思惑通り中国融和政策が進まない可能性がある。まして、バイデン氏が所属する民主党は、共和党以上に中国嫌悪感が強いといわれ、なおさらバイデン氏には崖が高い。

 2)ウクライナ疑惑
  1. ウクライナの天然ガス会社ブリスマ社の疑惑
   (1)ブリスマ社は、なんらかの疑惑を抱えウクライナ検察当局の捜査対象に2016年まで、なっていた。
   (2)バイデン氏の次男ハンター・バイデンは、2014年~2019年まで、ブリスマ社の取締役を務めていた。ハンター氏はブリスマ社の取締役として月5万ドル(約550万円、年6,600万円)の報酬を得ていたという。なお、ハンター氏はガスに関わる資格も経験もないのに取締役になった。
   (3)バイデン氏は副大統領を務めていた2016年3月、ウクライナを訪問した際に同国の検事総長を罷免するように要求し、応じられなければ10億ドルの借款保証を取り下げると強く求めた。すると、まもなくウクライナ議会は検事総長を罷免した。結果、ブリスマ社は検察当局からの捜査・訴追を免れたといわれる。

  2. トランプ大統領は2019年7月25日、ウクライナへの軍事支援(3.9億ドル)を進めるタイミングでウクライナの大統領に電話し、バイデン親子のウクライナでの活動で捜査要請をしたという。民主党支持者の告発で会談内容が明らかになり、大統領の職権乱用として大統領弾劾裁判が行われた。2020年2月5日、上院の弾劾裁判で無罪評決となった。

  3. 中国やウクライナでのハンター氏の活動は、父親バイデン副大統領の任期と重なる。
   (1)中国やウクライナにしてみれば、米国の副大統領の息子と近い関係を築こうとするのは、不思議ではない。
   (2)利益相反があったと見られて仕方がない行為だ。
   (3)トランプ氏が軍事支援の実施と引き換えにウクライナに対する政治圧力を加えようとした疑惑と、バイデン親子の疑惑とを同列視するのは難しいだろう。

  4. バイデン氏の(1)『チャイナ&ウクライナ疑惑』と(2)『増税』が、今後の大統領選挙と株式市場にどのように影響するか、注目が集まりそう。

●3.バフェット氏の航空・銀行株売却損を、救ったアップルの株価上昇

 1)年初来の株価急落に伴う巨額損失を8月中旬までにほぼ埋めた模様。
  ・航空株やゴールドマンサックスなどの銀行株で、売却損を膨らませた。
  ・しかし、アップル株が上昇し4月以降の4カ月半で、評価が約503億ドル(約5兆3,600億円)も膨らんだ。

●4.米国の先週・失業保険申請件数が110.6万件と市場予想92.3万件を上回った

●5.米フィラデルフィア連銀発表の8月製造業景況指数は17.2と、予想20.0を下回った

 1)前月比▲6.9低下。

続いて、「中国株式市場」「日本株式市場」の分析、「注目銘柄」へ

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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