相場展望8月3日号 米国の中国に対する『怒り』を具現化した『香港自治法』 ドル決済禁止付きで日本等の金融機関にも罰則適用(1/2)

2020年8月3日 07:56

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■I.米国株式市場

●1.米株式市場は、(1)米GDP成長率▲32.9% (2)失業保険申請件数の増加 (3)ドル安で、NYダウは下落

 1)米ダウは7/30、GDP成長率悪化とドル安を受けて、下げ幅▲500ドル超の下落で始まる。その後、失業保険補助策の延長期待で下げ幅縮小し、終値は▲225ドル安の26,313ドル。なお、ナスダックはアップル・アマゾン・グーグル・フェイスブックの決算を好感して続伸し、終値+44高の10,587。

【前回は】相場展望7月30日号 円高で一時104円台、株価は高値波乱の展開を予想 外国人売りで日経平均23,000円の壁が厚い

 2)米ダウは7/31、+114ドル高と反発し、終値26,428ドル。但し、アップルの貢献+273ドルを除くと、米ダウは実質マイナスだったことに注目。

●2.米国で成立した対中国金融制裁法である『香港自治法』は、中国への怒りを具現したもの

 1)香港自治法は7/14に、トランプ大統領が署名し、成立した。

 2)内容
  第1段階: 香港の自由や自治を侵害した人物や団体に対し、(1)米国入国ビザの
 発給停止 (2)米国内にある資産の凍結 という制裁を科す。
  第2段階: 上記の個人・法人と取引をする金融機関を、米ドル決済システムから締め出す。米国務省は、90日以内に制裁対象者リストを作成する。

 3)米財務省は、米国務省が制裁対象リオト作成後、30~60日内に制裁対象者と業務を行った金融機関を、制裁対象として決める。
  (a)米財務省の制裁内容
   (1)米金融機関からの融資・米国債の入札・外国為替取引・貿易決済の禁止
   (2)資産の移動禁止
   (3)商品・ソフトウェア・技術の輸出制限
   (4)幹部の国外追放

  (b)制裁が意味することの説明
   (1)特に、外国為替取引・貿易決済の禁止は、『米ドル決済を禁じる』ものであり、ドル金融システムからの追放を意味する。
   (2)ドル決済は、ニューヨーク連邦準備銀行など米国の金融機関を通過することから、米国政府の管轄権の下にあるため、どこの国の銀行であろうとも、米法律の適用を受ける。
   (3)つまり、ドル決済の禁止は、国際企業にとって「死刑宣告」を受けたに等しい。
   (4)この制裁対象は、米中だけでなく、日本を含めた世界中の金融機関となる。

  (c)今までドル制裁を発動した国
   北朝鮮、イラン、ベネズエラなど。

 4)米国の香港自治法も、中国の香港国家安全維持法も、違反すれば外国人であっても罰すると定めている。つまり、金融機関は、(1)香港や中国ビジネスから撤退するか、(2)ドル決済システムからの締め出しを覚悟して中国と取引するか、究極の選択を迫られることもあり得る。

 5)香港自治法は、米上下両院が全会一致で可決し、議会が主導して作った法である。つまり、バイデン政権が誕生しても、中国に対する金融制裁などの強硬策は変わらない。

 6)ドルを基軸とする米経済圏と、人民元の中国経済圏の闘いに突入し始めたともいえる。

●3.米商務省7/30発表、米4~6月期GDP成長率▲32.9%、統計史上最悪

 1)マイナス幅はリーマン・ショック直後の2008年10~12月期の▲8.4%を大幅に上回り、比較可能な1947年以降で最悪の落ち込みとなった。市場予想は▲34%だった。

 2)マイナス成長は今年1~3月期に続き、2期連続。

 3)7~9月期のGDPはプラス成長に転換するとの見方が多い。ただ、6月後半から南部の州などを中心にコロナ感染者が急増し、営業規制を再強化する動きが広がっており、先行き不透明感は強まっている。

 4)個人消費も前期比年率▲34.6%減少と、過去最大の減少率
  ・個人消費は、米経済の約3分の2を占める。
  ・特に、サービス分野は▲43.5%減少と、パンデミックが及ぼした打撃の深さを示した。

●4.米労働省が発表した新規失業保険申請件数は前週比+1.2万件増の143.4万件、2週連続増加

 1)失業保険継続受給者数は1701.8万人と、前回1615.1万人から予想以上に増加した。
 
 2)フロリダ、アリゾナ州などウイルス再燃で経済活動の再開を停止、または段階を数段階戻さらざるを得ず、小企業による雇用削減が再燃したことが影響している。

 3)結果を受けて、ドルは軟化。ドル円は104円台まで下落(ドル安・円高)した。7/31終値は105.88円と反発。
 
 4)米労働市場は1930年代の大恐慌以来の危機に直面し、第3四半期の強い回復に懐疑的見方。今後の経済は、(1)ウイルスの展開や(2)財政支援がカギを握る。

●5.トランプ氏、米大統領選挙(11/3)の延期をツイートで問い掛け

 1)「適切かつ確実、安全に投票できるようになるまで、選挙を延期してはどうだろうか」とツイートで問い掛けた。

 2)共和党・民主党の議員らが直ちに反対の声。
  ・マコネル共和党上院院内総務 「選挙日は確定しており、変更はあり得ない」と言明。
  ・ペロシ下院議長 「合衆国憲法では選挙日程を決める権限は議会にある」とツイート。

●6.トランプ氏は「バイトダンス(北京字節跳動)にティックトックの米国事業売却命令」検討

●7.企業決算動向

 1)ボーイング   3四半期連続の赤字。生産削減や納入遅延。従業員16万人の10%削減。
 2)P&G       4~6月期は洗剤等の買いだめで大幅増収、今後の成長は減速見込む。
 3)アマゾン    4~6月期売上高+40%増、純利益2倍の52.43億ドル(5,500億円)。

続いて、「中国株式市場」「日本株式市場」の分析へ

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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