『クルマは造り方を売っている (1)』日産、赤字転落を受けて改革成功の見込みは?

2020年6月1日 06:36

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 5月28日、日産自動車の2019年度決算発表が行われた。4月28日公表の内容との差は、理解に苦しむところだが、営業利益が通期で405億円の赤字となったことは、現在の日産の状況では順当と言った数字だ。減損損失5,220億円を特別損失に計上したのは誠に残念であるが、やむを得ない決定だ。

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 現在の危機は、トヨタ・TNGA(Toyota New Global Architecture)のようなシステムをルノー・日産・三菱3社アライアンスは持たないため、短期的には「リストラと借金」でしか対応できないことを示している。

 構造改革費用6030億円計上の動きを理解することで、日産が置かれている現実を見つめなおす必要がある。構造改革を行うわけだが、それはインドネシアとスペインの生産拠点の閉鎖、韓国やロシアからの撤退を指しているのであろう。

 構造改革費用と呼ぶには単なる撤退であり、その名に抵抗がある経費だが、こうした生産拠点を閉鎖しなければならない状態は、これまでの経営方針に原因があるということだ。そして、今回のパンデミックによる損害に対応するには、正常な手立てでは手遅れである。

 すなわち、日産が何をしようとしているのか、「何を反省し、何を目指しているのか?」、それを見なければこの先を判断できない。それを見るには、2019年11月28日に発表された、次世代の自動車生産技術コンセプト「ニッサン インテリジェント ファクトリー」を手掛かりとするしかない。

 大筋は、クルマの「電動化」「知能化」に合わせて生産工程も進化させるとのことだが、これは表向きの宣言で、遅ればせながら世界の潮流に追いつこうとするものと見える。つまり、ようやく『クルマは造り方を売っている』という本来のビジネスモデルを中軸に置いたと見るべきであろう。しかし、以前はこうした動きを「現場の仕事」と見ていたようで情けない。

 電子制御に関わる部品組み立てが増えるとのことだが、この10年では既に飛躍的に増えており、コストに占める電子制御関係の経費は大幅に増加した。技術開発においても主たる地位を得ていると言われているが、これは勘違いだ。

 クルマは人や物を載せて走るもので、メカニズムが存在しなければ製造とは言えない。トヨタは既に、2008年9月のリーマンショック以来TNGAを掲げて、全力で取り組んでいる内容だ。マツダの「スカイアクティブ・テクノロジー」もトヨタに先行して行われてきたことだ。

 つまり、『クルマは造り方を売っている』のだ。これは第4次産業革命に繋がる、大変大事な概念だ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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