PCNET Research Memo(3):中期経営計画の最重要施策でもある法人向けLCM事業が主力事業

2020年2月17日 15:23

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記事提供元:フィスコ


*15:23JST PCNET Research Memo(3):中期経営計画の最重要施策でもある法人向けLCM事業が主力事業
■事業概要

パシフィックネット<3021>は4つの事業で構成されている。1つ目が中期経営計画「SHIFT 2021」の最重要施策でもあるLCM事業である。法人向けにIT機器の調達、運用・管理から使用済み機器の回収・適正処分までのサービスを展開している。2020年5月期第2四半期には同事業は売上高全体の58.8%を占めている。2つ目がリマーケティング事業で、法人の使用済みIT機器を全国配置のテクニカルセンターで再生・製品化し、リユース品として企業等への販売等しており、売上高の31.9%を占めている。3つ目が無線ガイド機「イヤホンガイド(R)」の製造・販売・レンタル・保守を行うコミュニケーション・デバイス事業で、ケンネットが行っており、売上高の9.3%を占めている。その他、エムエーピーが行っていた(2019年12月1日に同社に吸収合併)M&A仲介、アドバイザリ、人材紹介事業がある。

1. LCM事業
LCM事業は、大きく2つのフェーズに分けられる。IT機器の導入・運用フェーズにおいては、IT機器レンタル・関連ITサービス(運用・管理、クラウド、通信、セキュリティ、ネットワークインフラ構築等)を提供している。また、使用済みIT機器の処分フェーズにおいては、回収・データ消去サービス(ITAD:情報機器資産の適正処分)を提供している。

IT機器の調達については、中長期レンタルに加えて、キッティング(事前設定)、運用・管理等の役務系ITサービス、通信、クラウドサービスを含めたITサービスの積極的な提案営業を実施するとともに、IT機器の「所有から利用へ」を推進する「サブスクリプション(月額利用料)」モデルにて展開している。同社では、このサブスクリプションモデルでのサービス提供に注力しており、2020年5月期第2四半期は、レンタルITサービスがLCM事業の売上構成比の72.6%を占めている。

LCM事業を把握するうえで必要となる、ビジネス向けPC市場やIT業界の状況を説明する。

(1) ビジネス向けPC市場
ビジネス向けPC出荷台数の今後の予想では、2020年1月のWindows 7のサポート終了に伴うWindows 10への切り替えにより出荷台数増加が見込まれるが、入れ替えが落ち着いた2021年5月期には同様に出荷台数は減少し、その後は600万台/年程度で落ち着くと予想されている。一方で、Windows 10への入れ替えに伴い「所有から利用」に切り替えて調達を行う企業が増加しており、これまで機器を購入していた企業が調達手段をレンタルに切り替えるという流れがますます強まっていくと予想される。

(2) 働き方改革IT市場
働き方改革のIT市場は2017年〜2022年の年間市場成長率は7.6%と非常に高く、特にITサービス/ビジネスサービスの分野で見ると、同成長率は22.1%と目覚ましいことが分かる。働き方改革(場所と時間を選ばない働き方)の進展に伴い、企業の「ノートパソコン+通信+コミュケーションツール」導入のニーズはますます高まりを見せると予想され、同社のビジネスチャンスはさらに拡大していくと考えられる。

(3) 企業のIT人材
企業のIT人材不足が顕著である。経済産業省の調査によると2015年時点で約17万人のIT人材が不足しており、2030年には約59万人程度まで不足が拡大する見込みである。同時に、IT市場は今後さらに拡大することから、不足はさらに深刻化すると予測される。この人材不足の状況のなか、企業内のIT管理・運用担当者は53%の企業で1名もしくは不在となっており、IT管理・運用業務のアウトソーシング需要がますます高まると想定される。

これらの外部環境を踏まえて、同社はLCM事業への注力を進めている。大きな戦略としては以下2点である。

a) サブスクリプションモデルの徹底推進
法人の情報システム部門の課題解決や業務負荷の軽減に対応するべく、IT機器の調達については、中長期レンタルに加えて、キッティング、運用・管理等の役務系ITサービス、通信、コミュニケーションツールのクラウドサービスを含めたトータルでの支援を「サブスクリプション(月額利用料)」モデルにて積極的に展開している。2018年11月には、その象徴ともいえる「モバイルノートPC+無制限SIM + Microsoft 365 + ITサービス」をワンパッケージ化しサブスクリプションモデルにて提供する「Marutto 365(R)」を提供開始している。

b) ITAD強化
ITADとは「IT Asset Disposition(情報機器資産の適正処分)」の略語である。事業戦略に通じる重要性の高い業務として欧米では広く認知され、経営上の重要事項と位置付けられており、日本においても企業の取り組むべきテーマとして認知が拡大している。同社はITADサービスでは日本トップシェアかつ唯一の上場企業でもあり、国内のITADを啓蒙・推進するリーディングカンパニーとしての立場を目指している。

2. リマーケティング事業
リマーケティング事業では、主に法人より回収した使用済みIT機器を、高価値品はテクニカルセンターで再生・製品化し、リユース品として法人等に販売している。また、再利用不可の機器については分解して素材化し、同社の監査基準を満たす国内のリサイクル業者へ処理を委託している。

3. コミュニケーション・デバイス事業
前期に買収・完全子会社化し2018年2月末から連結の範囲に含めている、「イヤホンガイド(R)」の製造・販売・レンタル・保守サービスを行っているケンネットが提供している。「イヤホンガイド(R)」は、送信機と複数の受信機からなる、手のひらサイズの無線ガイド機。観光地ガイドを中心に、国際会議での通訳や騒音の多い工場見学、大きな声を出せない美術館や博物館等で、詳細な案内や展示物などの説明のアナウンスを目的に利用されており、ケンネットが90%以上の国内シェアを有している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 内山崇行)《ST》

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