5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (18)

2019年10月15日 17:18

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 副業で大学受験小論文の講師をしています。この時期はAO入試、指定校推薦、公募推薦の対応に追われます。小論文だけでなく、出願大学の志望理由書の書き方指導もしていますが、見ていて気になるのは、この「志望理由書」です。

【前回は】5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (17)

 受験生たちの多くは、志望理由書が「人生の企画書」であること、つまり「人生を築く第一歩目のプレゼンテーション」であることに気づいていません。ビジョンのない抽象論で空欄を埋める人がほとんどです。

 原因の1つに、何が何でも「どこでもイイから現役で入学したい!」といった「大学入学そのものの目的化」があります。もう1つは、志望大学や学部の表層的イメージに支配され、その先にある自身の就労イメージができていないためです。

 本来なら逆算して計画する「大学生活でやるべきこと」や「就職までの中長期戦略」など具体的ビジョンを書かなくてはなりません。

■(20)「あなたを買いたい!」と思ってもらえるかどうか。


 私は受験生には常々現実を伝えています。「大学経営はビジネスであり、大学は一方的にキミの夢を叶えてくれるところではない。1つのツールでしかない」と。また、「大学側は有力な企業に良質な学生を送り込むことで、企業や親、つまり社会の信頼・信用を獲得して成長していく。学生はその実弾でしかない」と。

 だからこそ、「私は大学にとって、そして大学は私にとって、利用価値があるのだろうか?」という分析思考を持って受験生には挑んでもらいたいと考えています。

 書く時の注意点は、採点官や教授に「この子、欲しいな…」と強い動機づけができているか?です。商品広告のように「この受験生を買いたい!」と思える納得感(お得感)のある材料と論理性が志望理由書にあるか?これを意識して書いてほしいのです。

 なぜ、将来、○○職に就きたいのか?
 そのために、なぜ、□□学部なのか?
 なぜ、他大ではなく、△△大学なのか?
 ○○職に就くために、どのような戦略で大学生活を送るつもりなのか?

 これらをベースにして、書類を作成していけば十分。

 人生は自分自身がコアになって作り上げていくべきもの。主体性と自走性、同時に危機管理力を持ち合わせていなければ、自分が思う人生を描くことは難しいでしょう。人生の中長期戦略は高3の新学期までには固めておいてほしい。高3の3年後には就活が始まります。社会人までの猶予はたったの3年間しかないのです。

著者プロフィール

小林 孝悦

小林 孝悦 コピーライター/クリエイティブディレクター

東京生まれ。東京コピーライターズクラブ会員。2017年、博報堂を退社し、(株)コピーのコバヤシを設立。東京コピーライターズクラブ新人賞、広告電通賞、日経広告賞、コードアワード、日本新聞協会賞、カンヌライオンズ、D&AD、ロンドン国際広告祭、New York Festivals、The One Show、アドフェストなど多数受賞。日本大学藝術学部映画学科卒業。好きな映画は、ガス・ヴァン・サント監督の「Elephant」。
http://www.copykoba.tokyo/

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