1人の個人投資家から5000万円を調達したスタートアップ企業

2019年10月1日 18:26

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 興味深いスタートアップ企業の経営者と、9月20日に東京ビッグサイトで開かれたあるフェアで出会った。社名はラックベア。メリルリンチ証券、そして上場不動産会社を経て独立した熊本貴史なる人物が立ち上げた企業である。話を聞いていて興味深さを覚えた。その要因は、大きく2点に集約される。

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 一つは、そのビジネスモデル。(ビル・マンション等の)不動産オーナーと、修繕・リニューアル・メンテナンスなどを手掛ける極論すれば「実際に作業に当たる」町の大工さんなどを直接結ぶ、マッチングアプリ「タテカン」サービス事業である。

 不動産管理は主にこれまで管理会社が仕切るマターだった。だが熊本氏は不動産投資運用会社時代に「管理コストの高さに疑問を抱いた」という。それが「タテカン」事業に進出するそもそものトリガーになった。つまり「中抜き」をすることで、不動産オーナーはコスト削減を「大工さん」にも上乗せした賃金でビジネスチャンスの機会を広く提供できると考えたのである。

 一つは、初期投資費用の調達法。いかな超低金利時代とはいえ、新規の立ち上げ企業に既存の金融機関はそう容易に資金を提供してはくれない。仮にそのビジネスモデルに興味を覚えても「実績を拝見してから」となるのが、ある意味で当然。

 ごく自然な流れは、ベンチャーキャピタル(VC)との関りである。現に事業立ち上げのニュースリリースを発信すると「VCからの接触はあった」という。が、熊本氏はアプローチをしなかった。VCもビジネス。融資ないしは株式の所有となると「リターン」を求めるために、「アドバイス」という名目で経営に首を突っ込んでくることが容易に想像できたからだ。

 立ち上げから軌道化までは「経営権をこの手にしっかり握っておきたかった」(熊本氏)。で、どうしたのか。配信済みのリリースには、「個人投資家を対象に第三者割り当て増資を実施し、5000万円を調達した」とある。

 熊本氏に直接問うた。「何人くらいの個人投資家から増資資金を調達したのか」と。「一人の個人投資家」だという。正直、驚いた。「メリルリンチ証券時代に知己を得た、個人投資家。資金は提供するが経営はあんたに一存する、と言って頂いた。幸運でした」。

 そして熊本氏はこう続けた。「事業展開の第1段階にメドがついた後、次回からの資金調達ではVCさんともお話をさせて頂く。ただ同業になる不動産関連企業からの出資は慎重に検討する」。そこには「第1段階での成功に自信あり」という姿勢がはっきりと見て取れた。

 現に複数棟のビル・マンションを有するオーナーとの「引き合い」が順調な歩みを見せているという。管理業務作業者は業種別の団体等を入り口に「いまは牛歩の歩みではありますが発掘中」(熊本氏)。

 ベンチャー企業・スタートアップ企業にとり、最も肝心なのが初期段階での資金調達。これまで、「一人の個人投資家から5000万円」という話に接したことはない。当然、「その投資家はどこの誰か」を詰問したが、予想通り「そればかりは」とする返事しか耳にできなかった。

 知り合いのベンチャーキャピタリストに「知っているだろう。教えてよ」と執拗に迫ったが「正直、誰々かなという人物の予想はできるが断定はできない。ただ熊本貴史君が社長だから増資に応じた、という話は耳にしている」とした。

 ウォッチし続けたいスタートアップ企業が、1社増えた。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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