悪あがきなしの容姿さえサマになる! レジェンド、レッドフォードの俳優引退作

2019年7月12日 12:10

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記事提供元:ムビコレ

ロバート・レッドフォードの俳優引退作『さらば愛しきアウトロー』は実在の犯罪者、フォレスト・タッカーの物語だ。写真:『さらば愛しきアウトロー』 Photo by Eric Zachanowich. (C)2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved

ロバート・レッドフォードの俳優引退作『さらば愛しきアウトロー』は実在の犯罪者、フォレスト・タッカーの物語だ。写真:『さらば愛しきアウトロー』 Photo by Eric Zachanowich. (C)2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved[写真拡大]

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 ロバート・レッドフォードの俳優引退作『さらば愛しきアウトロー』は実在の犯罪者、フォレスト・タッカーの物語だ。16回の脱獄と数えきれないほどの銀行強盗を繰り返しながら、誰1人傷つけず、紳士的な印象だけを残して現場を去る。映画は1981年、老境にあってなお、同年輩の仲間2人と「黄昏ギャング」を名乗って銀行を襲撃し続けるタッカーの日常を追うところから始まる。

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 皺だらけだが整った顔立ちに微笑みを浮かべ、スーツ姿で「口座を開きたいんだが」と言いながら拳銃をちらつかせ、静かに金を奪って立ち去る。その場に居合わせた非番の刑事もまったく気づかないスムーズな犯行だ。犯人について証言する行員たちはみな口を揃えて「すごく紳士でした」と称賛する。子供づれで現場にいながら「黄昏ギャング」をみすみす逃してしまったテキサス州の刑事ジョン・ハントとタッカーの攻防が始まるが、ユーモラスで時に優雅さまでも漂う異色の追跡劇だ。

 出来過ぎのように格好いいアウトローを演じて様になるのがレッドフォードの真骨頂だ。実在の人物が主人公だというのに、どこを切ってもレッドフォード。それで何の問題もなしという、最早どんな大スターにもできない魔法を易々とかけてしまう。タッカーと実際に対面すると、誰もが魅了されてしまうという設定を、これほど衒いなく形にしてみせられるのは彼をおいていないだろう。

 実録タッチを敢えて選ばない本作は、最大のテーマが“レッドフォードという伝説を1本の映画に収める”という特殊な趣向で、最初から最後まで、細部に俳優としてのキャリアへの目配せがある。冒頭に「この物語もまたほとんど真実である」という字幕が出るが、これはレッドフォードの代表作『明日に向かって撃て!』(69)のオープニングに呼応する内容であり、劇中で使用するフォントも同じだ。ファンならば、そうしたオマージュ1つ1つを見つける楽しみがあり、そうでなくとも、往年の映画とスターが湛えていた特別な空気を追体験することができる。

 描かれるのは超常現象など介在しない世界だが、この世の外へ少しだけはみ出すような幻想的な描写がふいに現れ、それは息をのむほど美しい瞬間だ。ほとんどおとぎ話の域の幽玄を感じる。

 監督は『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』(17)のデヴィッド・ロウリー。1980年生まれの彼のレッドフォードに対する敬意があふれまくり、主演俳優はそれを悠然と受けて演じている。ジョン・ハントを演じるケイシー・アフレックは『A GHOST STORY〜』に続いての出演。使命の中にかすかな憧憬がある刑事像を興味深く表現する。犯罪者とは知らずにタッカーと知り合い、ロマンティックな関係になっていくジュエルを演じるシシー・スペイセクの巧さ、「黄昏ギャング」仲間のダニー・グローヴァーとトム・ウェイツの枯れたチャームも味わい深い。

 すべて静かに進み、派手な演出などひとつもないのに、晴れやか。本作をもって引退するロバート・レッドフォードは今年83歳になる。時の流れへの悪あがきなしの容姿は一見確かに老人だが、その印象はなぜか若い。“若々しい”ではなく“若い”。名残惜しく、このうえない幕引きだ。(文:冨永由紀/映画ライター)

 『さらば愛しきアウトロー』は7月12日より全国公開。

 冨永由紀(とみなが・ゆき)
幼少期を東京とパリで過ごし、日本の大学卒業後はパリに留学。毎日映画を見て過ごす。帰国後、映画雑誌編集部を経てフリーに。雑誌「婦人画報」「FLIX」、Web媒体などでレビュー、インタビューを執筆。好きな映画や俳優がしょっちゅう変わる浮気性。

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