筑波大学名誉教授 遠藤誉氏インタビュー vol.1 「中国製造2025」でアメリカを超える大国へ【フィスコ 株・企業報】

2019年4月19日 16:44

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記事提供元:フィスコ


*16:44JST 筑波大学名誉教授 遠藤誉氏インタビュー vol.1 「中国製造2025」でアメリカを超える大国へ【フィスコ 株・企業報】
◇以下は、FISCO監修の投資情報誌『FISCO 株・企業報 Vol.7 −米中冷戦の行方と日本の未来』(3月29日発売)の特集「米中対立の根幹は『中国製造2025』にあり ~遠藤誉氏に聞く~」の一部である。全2回に分けて配信する。


2018年以降、米中貿易戦争が顕在化している。アメリカは中国へ制裁関税を課し、これに対して中国も報復関税を発動。アメリカは、中国の国家戦略「中国製造2025」により中国に追い抜かれることを恐れている。「中国製造2025」とは何か、アメリカを脅かす中国の行く末はどうなるのか。中国研究の第一人者である遠藤誉氏にお話を伺った。

■アメリカのなりふり構わぬ行動は何か

最近、米中の貿易戦争という形で報道をよく耳にされるかと思う。その意味するところを極めて表面的に述べると、アメリカの対中貿易赤字が巨額であることで、アメリカが中国に対してペナルティ(関税)を課すということになる。

ただ、その裏には中国に覇権を握らせないというアメリカの様々な思いがあり、それがペナルティ(関税)として一部表面化しているに過ぎない。軍事も含めて多様な分野で活用される次世代移動通信技術「5G」分野においても、アメリカは西側諸国(同盟国)に対して安全保障上の観点から華為技術(ファーウェイ)製品を使用しないように求めるなど、次世代技術での優位性確保に懸命だ。アメリカのなりふり構わぬ行動は何なのだろうか。

中国が急速な経済成長を遂げた2000年後半以降、当初は平和的な台頭を遂げてきた。その頃より経済規模で日本はもちろん、アメリカを上回る予想こそあったものの、国際的なルールに従う意向を示すなど、その行動が警戒されることは少なかった。

明確な変化が起きたのは、リーマン・ショック後ということになる。経済、軍事とも世界で圧倒的ナンバーワンであるアメリカの覇権に陰りが見えたという事象が、中国の行動に変化を起こしたのかもしれない。アメリカの経済成長が止まり(むしろマイナスになり)、中国が経済規模でアメリカを抜く時期が早まったという見方に加え、4兆元におよぶ財政出動を行い、世界経済を救ったという自負も、それを後押ししたものと思われる。金満(札束)外交、九段線の策定による強硬な領土の主張なども、この頃から始まることになる。

結果、周辺国が中国に対して警戒を強めて結束し、アメリカはトランプ大統領の登場もあいまって中国に対する強硬姿勢を強めている。覇権が脅かされるレッドラインを越えたという認識をアメリカが持っているとすれば、トランプ大統領のしかける貿易戦争はアメリカがしかける施策の一側面に過ぎない。中国はアメリカの虎の尾を踏んだ状況にある。

■「中国製造2025」でアメリカを超える大国へ

今回、取材をさせて頂いた遠藤誉氏は12月22日に発売された新著『「中国製造2025」の衝撃習近平はいま何を目論んでいるのか』(PHP研究所)において、米中対立の根幹は「中国製造(メイド・イン・チャイナ)2025」にあると説いている。

これは2025年までに中国がハイテク製品のキー・パーツである半導体の70%を中国製にして自給自足し、宇宙開発においても中国がアメリカを超えようという壮大な計画だ。そのために人類の誰にも解読できない「量子暗号」を搭載した人工衛星の打ち上げにも中国は成功している。中国を除く西側諸国が運営している国際宇宙ステーションは2024年に寿命が尽きるが、それに代わって中国独自の宇宙ステーションを2022年までに完成させ、宇宙制覇をも狙っている。

遠藤氏によれば、中国は2015年5月に「中国製造2025」を発表前まで、中国のハイテク製品対米輸出の約90%が輸入したキー・パーツの組み立て製品に過ぎない状況にあったという。それに対して、中国の世論が大きく反応したのが2012年9月、日本が尖閣諸島を国有化した際である。

激しい反日デモ、日本製品不買運動において、メイド・イン・チャイナのスマートフォンの半導体キー・パーツが日本製であることが大いに注目された。日本製品を不買とするのであれば、そのスマートフォンは捨てなくてはいけない。そのような矛盾、不満を、半導体を生産する技術すら持っていない状況を放置している中国政府に向けた。

このため、2013年には中国アカデミーの1つである中国工程院に命じて「製造強国戦略研究」に着手させ、2015年の「中国製造2025」発表に至ったという。

「人材の獲得」面も見逃せないと遠藤氏は強調している。帰国留学人員の数は、改革開放以来の累計が2017年度統計で313.2万人であるのに対し、2012年11月(第18回党大会)以降に帰国した留学人員の数が231.3万人に達する。習近平政権になってから帰国した留学人員の数が、過去40年間のうちの74%を占めており、いかに習近平がコア技術を緊急に高めようとしているか、その緊迫性がうかがえると遠藤氏は指摘している。

足もとでは、ファブレス半導体企業の世界トップランキングで中国企業が存在感を増している。2009年の調査(半導体調査会社ICInsights)では世界トップ50に1社だけだった中国が、2016年になると11社、2017年にトップ10で2社、2018年でファーウェイ傘下の半導体メーカーのハイシリコン(海思)がappleについで世界2位に躍り出た。「中国製造2025」の企画スタート、始動からわずかな時期で、ここまで到達している状況から、遠藤氏は「中国製造2025」を達成できる可能性について「相当に高い」と述べている。

※配信時期の都合により、本誌掲載記事から内容を一部変更しております。

(つづく~「筑波大学名誉教授 遠藤誉氏インタビュー vol.2 米中対立の根幹は『中国製造2025』にあり【フィスコ 株・企業報】」~)

【遠藤誉Profile】
筑波大学名誉教授、理学博士。1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『「中国製造2025」の衝撃習近平はいま何を目論んでいるのか』、『チャイナセブン〈紅い皇帝〉習近平』、『毛沢東日本軍と共謀した男』など多数。《HH》

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