リンガーハットが「具材100%国産」に踏み切った理由

2018年12月24日 11:12

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 「長崎ちゃんぽん」や「皿うどん」で知られるリンガーハットが、過去最大の赤字となったのは2009年2月期のこと。最終損益で24億3400万円の損失に陥った。それまでにも2000年代前半から後半に3回の最終赤字に転落している。一口で言えば広がった外食産業の「価格低下競争」に巻き込まれた結果だった。

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 リンガーハットは1962年に長崎で「長崎ちゃんめん」の第1号店のオープンに端を発している。そして文字通り破竹の勢いで東上作戦を展開し2009年2月期末の店舗数は548に達していた(前期末:併営するトンカツ浜勝等も含め788店)。「低価格競争」は断るまでもなく、「商品の価格引き下げ」->「人件費削減」->「サービスの低下」->「顧客離れ」の負のスパイラルを巻き起こす。

 ではリンガーハットはこの負のスパイラルからどう脱し、今日の立ち位置を手にしたのか。店に行かれた人なら『商品の具材は全て国産』という内容のアピールを目にされたと思う。その入り口となったのは09年10月にスタートした「国産野菜100%プロジェクト」だった。08年の段階から15道県の約40産地の野菜農家と提携することで、プロジェクトの地盤作りが成されていた。

 何故「値引き合戦」から手をひき、「国産野菜100%」路線に転じたのか。同社を知るアナリストは「時代の流れを読んだ結果」とする。「健康志向の高まり」を読み、味方につけたのである。契約農家とは必要な野菜の種類・量を試算した上で「全量買い取り」「(契約農家を明示し)ここ以外からは買わない」を約束し、その代わりリンガーハットのスタッフが常に農家に出向き「化学肥料の極少化」をチャックし作付けを見守った。

 効果は、徐々に収益動向に反映され始めていった。「新路線」の成功を確認した同社は、13年の段階で麺・餃子に使う小麦粉の「全国産化」「保存料・合成着色料不使用」という施策を執った。前出のアナリストは「使用する野菜にしてもキクラゲの類いそして小麦粉も、契約先から事前に定めた量を全量買い取ることでコストの削減にも繋がり結果として競争力を高めていった」ともしている。

 勝ち残る企業にとって「時代の風を読む」ことが大事なことを、リンガーハットの歴史が教えてくれている。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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