ゴーン元会長事件は立件され罪となるのか 結論が出るまでアライアンスは動けない

2018年12月1日 19:41

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 ゴーン元会長の解任を審議する日産の取締役会は、11月22日の午後4時半に開催された。取締役会には逮捕された2名を除く7名が参加し、日産の本社会議室に5名とルノー出身取締役2名は現地時間22日午前8時半のパリ・ルノー本社からテレビ会議システムで参加した。日産の取締役会が夕方に設定されたのはパリ在住の取締役の事情を勘案したものであろう。終了時間は日本時間で午後8時という遅い時間帯だったが、パリでは正午のランチタイムである。

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 外野席の立場では、経過する時間の長さに”紛糾”も懸念したが、焦らずに段階を踏んで議事を進めた結果、ルノー出身者も含めた全員が2名の解任議案に賛成したという。ゴーン元会長とケリー容疑者に関わる詳細な説明資料を見て、流石にルノー出身取締役も解任に異議を唱えることができなかった。恐らく、この時点で共有された情報は、ルノー出身者からルノー本社へ提供され、非公式にはフランス政府も知ることになっただろう。ルノーは既に暫定のトップとしてティエリー・ボロレ氏を選任し、ゴーンCEOの解任は見送っている。

 11月29日にはアライアンス統括会社「ルノー日産B・V」の本社があるオランダのアムステルダムに、ルノー暫定トップのティエリー・ボロレ最高執行責任者(COO)が構え、日産の西川広人社長と三菱自動車の益子修会長がテレビ会議で参加した3社トップによる会合が行われた。

日産の会長を解任されたゴーン元会長の後任問題で、明白な思惑の違いが表面化しているため、今回の会議は3社の顔合わせと、アライアンスの取り組みを再確認するという儀式で終わった。3名の合議で決めるということは、肝心なことは何も決められないということに等しい。ゴーン元会長に対する捜査状況の進捗を睨みながら、微妙な駆け引きが続くことだろう。

 ゴーン元会長の電撃逮捕以降、漏れ出て来る情報はさみだれ式でまとまりがなく、裏付けのおぼつかない状態で撒き散らされている。今後の進展はまだまだ流動的であるが、伝わってくる容疑者の認否状況では鮮明な対決姿勢が感じられる。何より大事なことは、将来へ先送りしたと伝えられる役員報酬が、有価証券報告書への記載を義務付けられるような性格のものであったのか、という根本的な疑問があぶり出されてきたことだ。

 在任中に莫大な資産を形成したゴーン元会長には弁護士費用など全く不安がない。自分の名誉と今後の立ち位置を確保するために、全力で立ち向かってくるだろう。裁判の経過が報道されること自体が日産にとってはネガティブな情報である。100年に1度と言われる自動車業界の大変革の最中に、足枷をはめられて身動き不自由な日産自動車と三菱自動車にどんな展望が開かれるのか、道標すらない峻嶮たる山並みを眺める思いだろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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