産総研ら、極端紫外線レーザー加工を実現 新たな基盤技術への大きな一歩

2018年10月25日 08:15

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極端紫外線フェムト秒レーザーによる合成石英の熱影響評価と加工概念図(写真:産総研の発表資料より)

極端紫外線フェムト秒レーザーによる合成石英の熱影響評価と加工概念図(写真:産総研の発表資料より)[写真拡大]

 東京大学、早稲田大学、産業技術総合研究所(産総研)は23日、極端紫外線フェムト秒レーザーで合成石英への極めて熱影響の少ないレーザー加工を実現したと発表した。

 ガラスに髪の毛の太さの1/10の穴(10マイクロメートル)を正確に開ける。それも、穴を開けるときの熱の影響による穴近傍の突起なども少ない。大学や研究機関の発表ではあるが、この分野の研究者や技術者は、大いに期待し、実用化に向けた研究を加速すると思われる。

 ガラスは、熱的安定性が高いだけでなく、電気絶縁性を持つ。CPUやメモリを積層実装する上で最も有効な次世代の実装方式だ。複数のLSIを同一基板上の近傍に実装する方法であり、垂直方向の貫通穴を配線としてLSI間を接続する。ガラスは、高性能化や高密度実装を求める機器の基板材料として適している一方、貫通穴の加工が難しいという大きな課題がある。ドリルやレーザーなどの加工方法が一般的だが、ガラス基板が割れたり、貫通穴形状が不均一になったりと実用化は困難とされてきた。

 日本板硝子は1月11日、微細貫通穴ガラス基板(TGV: Through Glass Via)の開発に成功したと発表。厚さ0.1~1ミリメートルの薄さのガラス基板に直径10~100マイクロメートルの貫通穴を超高密度で開ける。だが、本発表ではレーザーへの言及はなく、ガラス形成上のプロセスで達成したのであろう。この技術が安定化すれば、スマホ、ウェアラブルデバイス、ヒアラブルデバイスの小型化や高機能化を加速する。

 他方、今回の発表は極端紫外線レーザーを用いたガラス加工技術だ。少量多品種の加工を可能とする。成果の詳細は22日(米国東部時間)、米国物理学協会発行の学術誌TApplied Physics Lettersにオンライン掲載された。

●極端紫外線レーザーの特長
 レーザー波長は13.5ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)、パルス幅をフェムト秒(千兆分の1秒)まで高めた。過去の極端紫外線レーザーのパルス幅はナノ秒(10億分の1秒)であるから、100万分の1までパルス幅を狭めた。結果、有効吸収長は22から58ナノメートルと2.5倍の浸透を実現。

 この加工特性に加えて、形成されたクレーター表面に、加工によるクラックは観測されなかった。これは、熱影響がほとんどないことを意味する。

 合成石英を含むガラス材料へのフェムト秒レーザー加工。このメカニズム解明と応用が、日本の新たな産業基盤になることを大いに期待する。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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