当たり前になっているせいで現実が見えなくなる話

2018年9月10日 19:06

小

中

大

印刷

 最近、私より10歳以上年上の、ある大手企業OBのベテランコンサルタントの方から聞いたお話です。

 そのコンサルタントが以前在籍していた大手企業の人で、60歳で定年を迎えた知人から、再雇用になって給料が激減してしまったとのことで、「20万ちょっとくらいの給料ではやっていられない」「自分が請け負えるような何かいい仕事がないか」という話をされたそうです。

 それに対して、ベテランコンサルタントの方は、「独立して自分の力で20万を稼ぐのがどんなに大変なことか」「自信があるなら会社を辞めて自分で仕事をすればいいし、自信がないなら今のままでいるしかない」と返したということでした。

 このベテランコンサルタントが言うことには、私も全く同感です。自分の力で顧客を探し、営業や提案をし、いろいろ交渉してやっと契約がもらえます。自力でお金を稼ぐのは、わずかな額であっても決して簡単なことではありません。
 ただし、それは会社から離れて、会社のブランドや商品、その他の後ろ盾が無い中で仕事をした経験があるから言えることです。そうでなければ、20万円と言われれば新入社員に初任給くらいのとらえ方でしょうし、それは「自分と同レベルの話ではない」「自分はもっともらって当然の能力と経験がある」と思うでしょう。なぜそう思うかと言えば、「今までずっとそうだったから」「周りの人もみんなそうだから」です。

 定年になったこの人が、独立したOBに相談するということは、仕事に関して何らかの世話をしてもらえることを期待したと思いますが、相手がそこまですることのメリットまでは、考えていなかったはずです。これが社内であれば、同じ組織の仲間同士として、お互いが協力するのが当たり前ですから、周りは常に損得なしで協力してくれます。そして、いつの間にか、「周りが世話を焼いてくれるのが当たり前」となってしまいます。

 また、自分の経験、実績がどこかで活かせるはずだという、それなりの自信もあってのことでしょうが、その経験や実績の中には、「会社のおかげ」や「その会社であればこそ」のことが含まれています。
 目に見えない「他の誰かのおかげ」が必ずありますが、そういう環境の中で、「本当の自分の力」を客観視するのはなかなか難しいことです。

 このように、自分にとって当たり前になってしまっていることのせいで、本当の現実が見えづらくなっていることがあります。多くのサポートが得られる環境で仕事ができるのを、私はうらやましく思いますが、そのサポートは純粋な自分の力に含まれません。どんなサポートを受けているのかに意識を持っておかないと、自分の現状や実力を見誤ります。

 これは、どんな形で仕事をしている人であっても、「20万そこらの給料ではやっていられない」という思いは妥当なのか、それとも現実が見えていないのか、当たり前になっていて気づいていないことがないのかどうかは、よく考えてみる必要があります。

 ※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら

著者プロフィール

小笠原 隆夫

小笠原 隆夫(おがさわら・たかお) ユニティ・サポート代表

ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社 取締役

IT企業にて開発SE・リーダー職を務めた後、同社内で新卒及び中途の採用活動、数次にわたる人事制度構築と運用、各種社内研修の企画と実施、その他人事関連業務全般、人事マネージャー職に従事する。2度のM&Aを経験し、人事部門責任者として人事関連制度や組織関連の統合実務と折衝を担当。2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表。

以降、人事コンサルタントとして、中堅・中小企業(数十名~1000名規模程度まで)を中心に、豊富な人事実務経験、管理者経験を元に、組織特性を見据えた人事制度策定、採用活動支援、人材開発施策、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務の支援など、人事や組織の課題解決・改善に向けたコンサルティングを様々な企業に対して実施中。パートナー、サポーターとして、クライアントと協働することを信条とする。

会社URL http://www.unity-support.com/index.html

記事の先頭に戻る

「仕事術」の写真ニュース

経営・ビジネスの最新ニュース

RSS

もっと見る

主要ニュース

RSS

もっと見る

広告

SNSツール

RSS

facebook

zaikeishimbun

いいね!

twitter

@zaikei_mgt

フォロー

google+

Hatena

広告

ピックアップ 注目ニュース