日産・e-POWERなど発電専用エンジンのこれから(2) 「対抗ピストン・単気筒」エンジン

2018年9月10日 12:03

印刷

 日産・ノートやセレナに搭載されるようなレンジエクステンダー用エンジンとしては、運転者に違和感がないのなら、一定の回転数で効率を上げたいところなのだ。そこで現在、発電専用エンジンとしては騒音・振動を消す努力がなされている。車体の後部、バンパー付近にエンジンを積む試みや、マツダにおいては、お得意のロータリーエンジンで、小型軽量で高出力の発電専用ロータリーエンジンを開発している。

【前回は】日産・e-POWERなど発電専用エンジンのこれから(1) 騒音・振動・熱効率の戦い

 また、そのほかの新しい試みとして、熱効率60%に達するかと言われる「新圧縮爆発エンジン」など、冷却補器類も必要のない新エンジンが開発されている。また、別の分野の、都市ガスエンジンなどを応用することが考えられている。振動や騒音が低ければ、エンジンが回っていることに運転者、搭乗者が気付かず、EVと同じフィーリングとなるからだ。

 そこで注目され始めたエンジン形式は、常識を外さなければ受け入れがたいものだ。小型エンジンは排気量が少ないが、そのため気筒数が少なく振動が出やすい。V12気筒エンジンに乗っていたことがあるが、エンジンが回っているのかはタコメータをのぞき込まないとわからないくらい静かだ。しかし、発電用エンジンとしては単気筒または、2気筒ぐらいでまとめなければならない。すると思い浮かぶのは、スバルやポルシェのボクサーエンジンだ。対抗する気筒間で振動を抑えることが出来るはずだ。

 しかし驚いたことに、最近考えられているのは、「対抗ピストン・単気筒」とでも呼ぶべき仕組みのエンジンだ。ピストンはボクサーとは逆に向けられ、互いに同じ気筒内で向かい合って圧縮する。爆発する気筒は同じ気筒で、昔のバスタブ燃焼室よろしく、気筒と並行して4つのバルブが配され、吸気・排気を行う仕組みだ。これだと爆発は同じ気筒で同時になされ、反対側にピストンは動くため、振動・騒音が抑えられる仕組みだ。

 これは都市熱源として開発されてきたもので、爆発の熱でお湯を沸かし利用できるように考えられてきた。これだと「熱効率は93%」に達するそうだ。車のラジエターで排気している熱を利用できれば、熱源としてエンジンは最高の熱効率となる。その点、「新圧縮エンジン」では熱を発生しないので、熱効率を別次元に高められるかもしれない。

 これらの動きを見ていると、Co2排出削減の議論は、EV一辺倒から別次元に変わる可能性がかなり高い確率で考えられる。ドイツの自然エネルギー発電が実用にならないほど電気代金の高騰を招いている現在、発電を含めて、もう一度EV化の議論を考えてみる必要があるだろう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事