隕石から明らかになる超新星爆発の秘密

2018年9月6日 20:18

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超新星爆発により放出されたニュートリノから元素が生成される様子 (c) 量子科学技術研究開発機構

超新星爆発により放出されたニュートリノから元素が生成される様子 (c) 量子科学技術研究開発機構[写真拡大]

 超新星爆発の秘密を探るには、6種類存在するニュートリノの解明が重要だ。ところが6種類のニュートリノのうち反電子ニュートリノだけは、生成の寄与が大きい元素について明らかではなかった。量子科学技術研究開発機構(QST)は4日、超新星爆発によって放出されるニュートリノから、テクネチウム98が生成されること理論計算によって予測した。隕石から、テクネチウム98の量と超新星爆発が発生した年代が評価可能になるという。

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 ニュートリノは、電荷をもたない小さな素粒子だ。オーストリアの物理学者ヴォルフガング・パウリによって1930年代、中性の素粒子が存在するという仮説が立てられた。その後、アメリカの物理学者フレデリック・ライネスらの実験により、ニュートリノの存在が証明された。ニュートリノには、電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノとそれぞれの反ニュートリノの合計6種類が存在する。

 超新星爆発は、太陽の8倍以上の質量をもつ恒星が寿命を終えるとき、重力崩壊したあとに爆発する現象だ。非常に強い光を一時的に発生し、2006年に発見されたペルセウス座のSN 2006gyが代表的な超新星だ。

 超新星爆発の初期に、中心部にある原始中性子星から多数のニュートリノが放出され、その結果超新星爆発を引き起こす。そのとき、タンタル180などの元素(核種)がニュートリノから生成される。

 反電子ニュートリノ以外の5種類のニュートリノに関しては、生成される元素は判明していた。研究グループは、理論計算により反電子ニュートリノがテクネチウム98を生成する寄与が大きいと予測した。テクネチウム98は反電子ニュートリノによる生成の寄与が大きい唯一の核種であるという。

 テクネチウム98は、約420万年の半減期でルテニウム98にベータ崩壊する放射性同位体だ。太陽系の年齢の約46億年よりも短いために、太陽系が形成されたときに存在したテクネチウム98は現存しない。しかし、約46億年前に太陽系が形成された頃の物質を集めた「始原的隕石」内のルテニウム98の量を計測することで、太陽系形成時のテクネチウム98の量が判明する。また、超新星爆発から太陽系が形成されるまでの年代を知ることも可能だという。

 隕石研究からテクネチウム98の量を評価し、その量から超新星爆発によって放出された反電子ニュートリノの平均エネルギーを決定可能だ。これにより、6種類すべてのニュートリノのエネルギー量が判明し、その量から原始中性子星の形成や超新星爆発のメカニズムの理解に貢献するという。

 宇宙から降り注ぐニュートリノの観測には、カミオカンデのような観測装置が必要だ。現在稼働中のスーパーカミオカンデや、計画中のハイパーカミオカンデによって将来、超新星爆発から放出された反電子ニュートリノがより精密に計測されることが期待される。

 研究の詳細は、Physical Review Letters誌にて4日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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