東芝の永久磁石同期電動機を採用した車両 韓国・釜山で運行開始

2018年8月1日 22:02

印刷

永久磁石同期電動機(写真:東芝インフラシステムズの発表資料より)

永久磁石同期電動機(写真:東芝インフラシステムズの発表資料より)[写真拡大]

 東芝インフラシステムズは7月31日、同社の永久磁石同期電動機を採用した釜山交通公社の新型車両5編成(40両)の運行が開始されたと発表した。

【こちらも】東芝の二次電池「SCiB」、次期新幹線「N700S」の確認試験車両に採用

 「地道な成長を重ね、安定的に稼いでいく」1年前、東芝の綱川社長が目指した将来像だ。東芝インフラシステムズの鉄道車両分野での挑戦は続く。

 鉄道車両の国内需要は堅調であるが、今後の人口減少を鑑みると、需要の増加は見込めない。そこで、海外に活路を見出す構図がある。経産省によれば、海外の鉄道産業については、アジア、西欧、北米を中心に、2019-2021年平均で約24兆円規模の市場が存在し、2021年まで年率2.6%で成長する見通しだ。

 24兆円の地域別の内訳は、アジア太平洋の7.6兆円、西欧6.3兆円、北米・メキシコ4.3兆円と続く。他方、24兆円を業態別市場規模で分類すると、列車運行及び保守サービスの9.5兆円、車両の7.8兆円、施設の4.6兆円、列車制御の2.2兆円だ。

 世界の鉄道車両メーカー売上高では、2015年に中国北車と中国南車が合併して誕生した中国中車がトップで、独のボンバルディアやシーメンス、仏のアルストム、日本の日立や川崎重工と続く。2015年度の売上では、中国中車が3兆円、各欧州メーカーが1兆円弱、日立が0.4兆円弱だ。

 日立や川崎重工など日本のメーカーの優位性は、高い安全性と定時性、低いライフサイクルコストである一方、価格競争力と鉄道システム構築の複雑性に課題が残る。中国中車は、国内の巨大な高速鉄道市場と圧倒的な価格競争力を背景に、世界市場を牽引する。また、欧州総合メーカーは、鉄道システム全体の構築を1社で実施できる体制を持つ。

 今回の発表は、車両駆動分野での低騒音化と低保守化を実現した高効率電動機だ。鉄道車両用駆動システムに広く採用されてきた誘導電動機に代わる永久磁石同期電動機を2006年に実用化。誘導電動機に比べて30%以上の消費電力削減が見込まれる。

●永久磁石同期電動機の特長

 エネルギー損失が極めて少ない永久磁石同期電動機のメリットを拡大化する技術を確立し、97%の高効率を達成。従来の誘導電動機に比べて、39%の消費電力削減を達成。

 長期的に分解清掃を不要にした全閉構造を開発。シンプルかつ確実な定期メンテナンスが期待できる。加えて、同クラスの自己通風開放型誘導電動機に比べて、約12デシベルも騒音レベルを低減した。

●鉄道車両電動機(東芝、永久磁石同期電動機)のテクノロジー

 永久磁石同期電動機は、東京地下鉄(東京メトロ)の02系や1000系電車に採用されている。高効率により電力消費量削減やCO2排出量の削減が可能だ。永久磁石同期電動機が持つ低雑音性やメンテナンス性向上に加えて、従来の車両の台車設計をそのまま活用できるような工夫も重要だ。

 永久磁石同期電動機の駆動用インバーターには誘導電動機駆動用と同等サイズのユニットを開発。誘導電動機システムからのリニューアルにも対応。

 韓国で運行を開始するのは、韓国釜山市の南北を約40キロメートルにわたって縦断する地下鉄1号線の新型車両であり、同国として初めての永久磁石同期電動機搭載車両という。韓国では、今後も省エネ性の高い新型車両の導入が予定されており、海外の鉄道車両市場での地道な成長は続く。(記事:小池豊・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事