FJネクスト Research Memo(5):好調な外部環境を追い風として業績は順調に拡大

2018年7月12日 15:35

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記事提供元:フィスコ


*15:35JST FJネクスト Research Memo(5):好調な外部環境を追い風として業績は順調に拡大
■FJネクスト<8935>の業績動向等

1. 過去の業績推移
過去の業績を振り返ると、首都圏における資産運用型マンションに対する賃貸需要、並びに購入需要の拡大に支えられて、業績は総じて順調に推移してきた。2009年3月期にリーマン・ショックに伴う景気後退の影響で業績のボトムを迎えたものの、同社は、仕入高を追わずに採算性に合った仕入れを継続していくという方針のもと、堅実な物件開発を進めたことで、大きな痛手を被った不動産業界においては比較的軽微な落ち込みで乗り切り、その後は景気回復とともに順調に業績を拡大してきた。2015年3月期は竣工時期の関係等により一旦踊り場を迎えたが、2016年3月期以降は大幅な増収増益を続けており、売上高は3年連続で過去最高を更新している。社歴を重ねながらも、同社がまだまだ成長過程にあることを示している。

財務面では、業績の拡大に伴って有利子負債残高も増えてきたが、内部留保の積み増し等により自己資本比率も高い水準を維持しており、財務基盤の安定性に懸念はない。

なお、同社がリーマン・ショックに伴う厳しい業界環境を比較的スムーズに乗り切れたのは、厳選された好立地を含め、収益還元法による採算性を重視した「ガーラ」ブランドの資産価値の高さ、並びに同社の財務基盤の安定性によるものと言える。

2. 2018年3月期決算の概要
2018年3月期の業績は、売上高が前期比9.1%増の67,008百万円、営業利益が同9.7%減の7,238百万円、経常利益が同10.8%減の7,226百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同14.3%減の4,689百万円と増収ながら減益となった。ただ、期初予想に対しては、売上高、利益ともに超過しており、好業績が続いていると評価して良いだろう。特に、売上高は3期連続で過去最高を更新した。

好調な外部環境を追い風として、マンション販売戸数の増加や販売価格の上昇により、「不動産開発事業」が大きく拡大した。特に、マンション販売戸数は2,203戸(前期比+187戸、計画比+132戸)※と大きく増加したが、中古マンション販売による上乗せ分が計画を上回った要因と考えられる。また、その他の事業についても、「不動産管理事業」が管理戸数の増加(前期比+250戸)により着実な伸びを実現したほか、「旅館事業」についても堅調に推移した。一方、「建設事業」が前期比で落ち込んだのは、前期にマンション卸販売を計上した反動減によるものであり、想定内とみられる。

※マンション販売戸数2,203戸のうち、ワンルームが1,985戸(前期比+112戸)、ファミリー向けマンションが218戸(前期比+75戸)となっている。


一方、利益面で減益となったのは、土地仕入価格や建築費の高止まり、広告宣伝費※の増加のほか、相対的に利益率の低い中古マンション販売の構成比が高まったことにより営業利益率が10.8%(前期は13.1%)に低下したことが理由である。もっとも、コスト要因はすべて想定の範囲内であり、売上高の上振れにより計画を上回る利益水準を確保することができた。

※今期に販売予定のファミリー向けマンションに係る広告宣伝費(先行費用)を含む


また、今後の業績の伸びに影響する棚卸資産(パイプライン)の状況についても、販売用不動産(完成マンション)及び仕掛販売用不動産ともに大きく積み上がっている(棚卸資産全体では前期末比17.7%増の42,485百万円)。特に、販売用不動産が前期末比26.1%増の19,687百万円と大きく拡大したのは、期末に新築物件が竣工した影響(一時的な要因)に加えて、戦略的に保有している中古マンション※によるところが大きい。また、仕掛販売用不動産についても採算性を重視した用地仕入れを継続しながら、同11.4%増の22,798百万円と順調に積み上げることができた。なお、中古マンションについては、今後、新築物件の完成スケジュールとの調整を図りながら順次販売していく予定である。また、保有期間中は賃貸収入を得られ、ストックビジネスとしての側面もある。弊社においても、中古マンションへの取り組みは新築物件だけに依存しない収益機会の確保という点に注目している。さらに、購入者にとっても、中古市場の活性化(流動性の厚み)はいざというときのために大きなメリットがあるものと評価できる。

※販売用不動産1,045戸のうち中古マンションは720戸を占めている。


財務面では、棚卸資産の増加により総資産が63,432百万円(前期末比8.2%増)に増加した一方、自己資本も内部留保により39,343百万円(同9.9%増)に積み増したことから、自己資本比率は62.0%(前期末は61.1%)と高い水準を維持している。また、有利子負債は棚卸資産の積み上げに伴って15,536百万円(前期末比14.6%増)に拡大したものの、流動比率は648.0%(前期末は560.3%)と高い水準にあり、財務の安全性に懸念はない。一方、資本効率を示すROE も12.5%(前期は16.3%)と2ケタの水準を維持しており、バランスの優れた財務内容と言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)《MH》

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