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2018年度の研究開発費、国内の自動車7社が過去最高になる見込みとのニュース。その規模は合計で約3兆円になっており、8年前の1.5倍にまで膨らんでいるという。その背景には自動車産業の大きな変革期が関係しており、自動車がインターネットにつながるコネクテッドカー(IoT)の技術、また、AI(人工知能)やミリ波レーダーなどを駆使した自動運転などにおける技術などで、研究開発費が増加の一途をたどっているというものである。
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しかし一方で、企業全体で見ると、世界的に日本の研究開発費は伸び悩んでおり、またしても(EVのように)日本は遅れているのではないかと言われている。たしかに、2017年までの10年間の伸び率を見ると、アジアは4.1倍、米国は86%増。日本は12%増にとどまっている。2007年の研究開発費の上位には1位にGM、3位にトヨタであったが、2017年にはかろうじてトヨタが10位に入り、5位にはフォルクスワーゲンとなっている。だいたい産業構造が変化したために、上位にはIT産業の割合が多くなっている。
しかし、ここで研究開発費とは何なのか?冷静に考えてみる必要がある。単純に「研究開発費が多いから成長企業である」ということにならないかもしれないからである。
一般的に、「研究開発費は売上げの10%」というのが指標ということらしいのだが、これは一概には言えない。業種・業態によってその割合が違ってくるはずである。IT産業では、人件費全体が研究開発費になる企業もあろう。また、連結で見るのか、単体で見るのかによっても違ってくる。さらに、例えば、製造業においての生産技術者を研究開発費に計上するのかどうかも、その企業のビジネスモデルによって変わってくるのだ。ちなみに、国際会計基準(IFRS)では、研究開発費を研究費と開発費に分けて考えおり、研究費は費用、開発費は資産として計上する。なので、会計基準が変わってしまうと、企業の評価も変化してしまう可能性がある。
また、投資家が一番気にするのが研究開発費に対するリターン(回収)率の話だろうが、これも単純に数字で表せるものではない。時代と共に変化する市場、経営者の先見の明、ブランド力などに関わってくることで、これを数字に表すのは容易ではないのがわかる。
例えば、マツダのロータリーエンジン。この研究開発費だけ見れば、ロータリーエンジン車販売に関わる営業利益との対比でほとんどリターンしていないと計算されるだろう。しかし、失敗に終わったと見えるこの画期的なロータリーエンジンが、マツダのブランド力を上げ、現在まで、マツダをあらゆる意味で存続させている基礎になっていることがわかる。例えば、初代ロードスターが国内で約2万5,000台、全世界で約7万5,000台と驚異的な販売台数を記録したのも、もちろん基本的に商品力があったのは当然だが、あのロータリーエンジンを開発した企業だからというブランド力と、バブル景気という市場動向が後押ししたからでもあるのだ。このように、現在かけている研究開発費がどこまで波及するかは、未知な部分がある。
研究開発費をまるでかけないどこかの業界は論外で、将来にわたって企業が存続するためには不可欠なものである。研究開発費の効果は短期間ではわからないものだ。長期事業計画をしっかりと立案することが第一である。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)
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