島津製作所、世界初のエンジン筒内高速モニタを開発 温度やCO2を自動計測

2018年5月22日 12:04

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エンジン筒内高速モニタ「DIOMELAS」(左)と小型プローブ先端の検出部(右)(写真:島津製作所の発表資料より)

エンジン筒内高速モニタ「DIOMELAS」(左)と小型プローブ先端の検出部(右)(写真:島津製作所の発表資料より)[写真拡大]

 島津製作所は21日、稼働しているエンジンのシリンダ内温度や二酸化炭素(CO2)濃度、水分濃度を同時に自動計測する、エンジン筒内高速モニタ「DIOMELAS」を発売すると発表した。

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 シミュレーションに基づく設計手法は、実際にモノを作る前に、その動作や性能を予測する。モデルベース開発と呼ばれ、自動車業界では一般的な手法だ。今回の発表は、このモデルベース開発でのエンジン筒内の温度やCO2濃度、水分濃度を自動測定し、燃費性能や排ガス性能を改善する。

 自動車業界では、EVシフトが進む一方、空気と燃料を燃焼させて動力を伝えるエンジンは今後もしばらく利用され続けることが予想される。エンジンの性能は、シリンダ内での燃焼効率や燃焼状態に左右される。そこで、モデルベース開発において、燃焼発生までの温度や、排ガスとしてシリンダ内に残留するCO2の濃度を直接モニタリングし、改善につなげるニーズは高い。エンジン試験に用いるエンジンベンチシステムと連動した自動計測のニーズだ。

 写真右側の小型プローブ先端の検出部を、エンジンのシリンダに10ミリメートル挿入し、検出部に照射したレーザ光の吸光度を測定。シリンダ内部の温度とCO2濃度、水分濃度を同時に自動計測するのが「DIOMELAS」だ。

●「DIOMELAS」の特長

 エンジンの動きを瞬時に計測。具体的には、2万分の1秒周期で、稼働しているエンジンのシリンダ内の温度とCO2濃度、水分濃度をそれぞれ計測可能だ。加速時や減速時など、燃費性能および排ガス性能に影響を与える過渡的な運転状態をシミュレートし、シリンダ内の燃焼状態の経時的変化を捉える。

 この高速モニタをエンジンベンチシステムと連動。エンジンベンチシステムからの制御信号により、計測開始・計測終了などの操作に人手を煩わせることなく、自動的にデータを取得。モデルベース設計のメリットを享受できる。

●エンジン筒内高速モニタ(島津製作所、「DIOMELAS」)のテクノロジー

 先ず、エンジンベンチシステムに対応した計測周期の実現と計測温度範囲であろう。計測周期は50マイクロ秒、2万分の1秒周期で、ガス温度、CO2濃度、水分濃度を計測する。計測温度範囲は、273~950ケルビン(0~677度)と超高温での計測を可能にする。

 次に、計測と演算の並行データ処理だ。2万分の1秒の計測周期で複数の吸光度と圧力の情報から温度・濃度を算出するため、扱う計測信号と演算量は膨大だ。計測と演算を順次に行っていては、高価な装置の稼働率は上がらない。湿度・濃度演算を高速に処理するのと並行して各種計測信号を取得することで、間断のない計測を可能にし、稼働率を上げる。

 価格は4,500万円で、3年間で国内15台の販売を目指す。EVではなく、ガソリン車への投資のため、控えめな目標なのであろうか。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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